【ガクサン 24話ネタバレ】24冊目|うるし、動画で学ぶ。山崎「うるしちゃんは…こっち側の人だよ」――勉強動画と参考書は共存できる?「見ただけで勉強した気になる」の落とし穴

ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

24冊目は「うるし、動画で学ぶ」。うるしの変化に気づいた福山に、山崎さんがついに本音をもらします。そして話題は、今どきの勉強動画へ。動画が増えると参考書は売れなくなるの?娘の動画勉強に悩む谷津さんも加わって――。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

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ガクサン 24冊目「うるし、動画で学ぶ」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

TOEICは会社のため、というのは建前で、本当はしをりさんと同じ世界を見たくて英語を勉強していた桃さん。福山は、社会人の勉強に「理想」はいらないと、すきま時間の使い方をアドバイスしました。しをりさんと桃さんは付き合っていたことも明らかになり、ふたりは無事に仲直り。

その席で、うるしは桃さんに共感し、同じ地平に立って同じものが見られたら、と本音をこぼします。週明け、福山は山崎さんに、茅野が最近妙な気がする、と言い出しました。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 23話ネタバレ】23冊目|うるしと社会人の学び方②。桃の涙のわけと、しをりさんとの関係――福山「『理想』は求めるだけ無駄です」、すきま時間の勉強法を解説

「茅野も参考書の沼にハマったんだな」

まずい、と内心あせる山崎さん。うるしが入社してまだ4〜5か月なのに、福山はよく見ている。毎日同じ部屋にいれば嫌でも見る、と福山。ついに、うるしが編集者になりたいことに気づいたのか――。

ところが福山が出した結論は、ニヤリと笑って、

「茅野も参考書の沼にハマったんだな」

以前は、福山さんがもったいない、私はわからないので、と言っていたうるしが、最近は、がんばります、参考書のことを理解したい、と言うようになった。最初はミーハーなにわかサブカルだと思っていたが、見どころがないわけではない、と。

そうくるか、と山崎さんはひとまずホッとします。

山崎さんの本音――「こっち側の人だよ」

でも山崎さんは、心の中で思います。福山にはそう見えるのか。こいつにはわからないだろうな。

うるしは、参考書が好きという以前に、参考書に熱意を注いでいる「人たち」が好きなのだと思う。それは、どこか仕事に夢中になりきれない自分が、ずっと持っているあこがれと同じ。17冊目で言いかけてやめたのは、このことでした。うるしの痛いところをえぐってしまいそうで。

山崎さんは、うるしが参考書に夢中だとしても、ご相談係にいるままではもったいなくないか、と福山に投げかけます。福山は、それとこれとは関係ない、好きなだけで十分だろう、と首をかしげるばかり。

そうだった、こいつはこういうやつだった――と山崎さん。夢中になれるのも才能なのに、それが当たり前だという顔をしている。隣にいて、しんどいときがある。それでも、山崎さんは言います。

「うるしちゃんは…こっち側の人だよ」

福山は気づけていない、全然。気づけるわけがないんだよ――。福山は、わけがわからないという顔をしていました。

朝の駅で、谷津さん親子

ある朝、うるしは駅のホームで谷津さんと葵さんを見かけます。葵さんがイヤホンでスマホの動画を見ていると、谷津さんがムッとして何か言い、葵さんはふくれっ面。なんだか大変そうだ……とうるし。

会社に着いたうるしは、前に勉強動画についての相談が来ていたことを思い出します。この動画で解説されている内容はどの参考書に載っていますか、ある先生の動画の解説は間違っていませんか――。福山は、そんなのうちで答えられるわけがない、参考書も関係ない、と頭を抱えていました。

勉強動画の世界をのぞいてみる

そもそも勉強の動画って?自分の学生時代にはほとんどなかったはず、とうるしは検索してみます。

定額制で講義が見放題の、オンライン塾のようなサービス。動画投稿サイトには、無料で、古典の助動詞の解説、現役大学生の暗記テク、そしてアイドルやキャラクターと一緒に勉強する「スタディ・ウィズ・ミー」の動画まで。至れり尽くせりじゃん!と音量を上げたとたん、「いっしょに30分がんばりましょう♪」の声が部屋に響き、福山に、業務中に何を、と見つかってしまいます(笑)。

ところが、勉強の動画だとわかると、福山はなぜか上機嫌。熱心じゃないか、やっぱりな、と。(うるしは、なんか妙に機嫌がいい……と不審顔)

動画から生まれた参考書

福山は、最近は参考書業界にも動画の影響が及んでいる、目のつけどころがいい、と言って、ある本を紹介します。

葉一さんの『はいちの楽しくなる数学』(文英堂)。動画投稿サイトで人気の葉一さんの授業動画と連動した参考書で、二次元コードを読み取ると、その単元の動画が見られます。

福山いわく、この本がおもしろいのは、著者の動画が先にあって、参考書があとからできたところ。参考書づくりの新しいスタイルだ、と。チャンネル登録者数の多さに驚くうるしに、それだけ今の中高生のあいだで動画を見るのがあたりまえになっているのだろう、と福山。

動画が増えると、参考書は売れなくなる?

うるしは素朴な疑問をぶつけます。こういう動画が増えると、参考書が売れなくなるのでは?

福山の答えは、意外とそうでもない。授業が売りの動画とは、あまり食い合っていない。むしろ授業を受ければ受けるほど演習問題が必要になって、問題集が売れる。動画の中で参考書を紹介してもらうことも多い。

ただし、ときには許可なく参考書の中身まで紹介されてしまうこともあり、宣伝にはなるけれど出版社としては痛しかゆし。そこは各社の法務部が動画の投稿者と連携して、法的に問題がないよう工夫している、と。

授業は動画で受けられるけれど、動画の中では問題をあまり解かないから、共存できているんですね、とうるし。福山もうなずきます。

「見ただけで勉強した気になる」

そして福山は、動画で学ぶデメリットにもふれます。動画を見ただけで、勉強した気になってしまうかもしれない。

その瞬間、廊下からのぞいていた谷津さんが、そう!!それなんだよ!!と飛びこんできます。動画の話が聞こえてきて、つい――。

実は、と谷津さんが話したのは、娘の葵さんのこと。理転すると決めたのに、家ではタブレットやスマホで、アニメのキャラクターが英語を教える動画ばかり見ている。注意すると、パパは知らないだろうけど今の勉強はこうなの!と言い返される。朝の駅の一件は、これだったのです。

勉強は最終的には読んで書いて覚えるものだろう、あんなチャラチャラした勉強法があるか、動画を見ただけで身につくわけがない、と息巻く谷津さん。

すると福山は、静かに問いかけます。

「認知特性という言葉はご存じですか?」

は?と谷津さん。知らない言葉が出てきた!とメモを取り出すうるし。25冊目へ続きます。

【ガクサン流・勉強動画の使い方】「見ただけ」で終わらせないコツ

24冊目は、勉強動画と参考書の関係がテーマでした。福山が言った「動画を見ただけで勉強した気になる」は、実は研究でも確かめられている落とし穴です。動画を上手に使うコツを、研究とあわせて整理してみましょう。

1. わかりやすい授業ほど「わかった気」になる

ある実験では、同じ内容の短い講義を、なめらかで自信たっぷりに話す先生と、メモを見ながらつっかえつっかえ話す先生の2パターンで見せました。

すると、なめらかな先生の講義を見た人のほうが「よく理解できた」「テストでもとれる」と感じていたのに、実際のテストの点数には差がなかったのです。(Carpenter ほか, 2013)

動画の授業は、編集もされていて、とてもわかりやすい。だからこそ「わかった気」になりやすい。福山の言うデメリットは、まさにこれなんですね。

2. 途中で「小テスト」をはさむ

では、どうすればいいのか。

オンラインの講義動画を使った実験では、動画の途中で短いテストをはさむと、集中がとぎれにくくなり、学習の成績も上がったという結果が出ています。テストをはさんだグループは、メモを取る量も増えていました。(Szpunar ほか, 2013)

6冊目で紹介した「テスト効果」(思い出す練習をすると記憶に残る)と同じ考え方です。動画を1本見たら、一度止めて、今の内容を何も見ずに説明してみる。例題を自分で解いてみる。それだけで「見ただけ」から抜け出せます。

3. 動画で「授業」、参考書で「演習」

福山の「授業を受ければ受けるほど問題集が売れる」は、勉強のしかたとしても理にかなっています。

役割動画が得意参考書・問題集が得意
理解動きや音で説明する、先生の解き方を見る自分のペースで読み返す、全体を見わたす
練習苦手(見るだけになりやすい)たくさんの問題を解く、丸つけで確かめる
復習苦手な単元だけ見直す間違えた問題をくり返す

動画で理解して、問題集で手を動かす。『はいちの楽しくなる数学』のように、動画と本がセットになった教材は、この組み合わせを最初からやりやすくしてくれます。

4. スタディ・ウィズ・ミー動画は「ペースメーカー」

うるしが見つけた「一緒に30分勉強しよう」という動画は、授業ではなく、誰かと一緒に勉強している雰囲気を作ってくれるものです。16冊目で福山が言った、できるだけ「独学はしない」、仲間と切磋琢磨する、の動画版とも言えます。

ただし、中身を教えてくれるわけではないので、何をやるかは自分で決めておくのが大前提。30分勉強・5分休憩のようなタイマー代わりに使うのがよさそうです(ここは作中の描写からの、おじさんの提案です)。

ぱっと見まとめ:勉強動画の上手な使い方

番号名前やること
1わかった気に注意わかりやすい動画ほど、わかった気になりやすいと知っておく
2止めて思い出す1本見たら止めて、何も見ずに説明する・例題を解く
3問題集とセット動画で理解、問題集で演習
4苦手だけ見直す間違えた単元の動画だけを見直す
5一緒に勉強動画やることを決めてから、タイマー代わりに使う

勉強動画チェックリスト(24冊目から)

  • [ ] 動画を見る前に、どの単元を勉強するか決めた
  • [ ] 1本見終わったら、内容を自分の言葉で説明してみた
  • [ ] 同じ単元の問題を、問題集で実際に解いた
  • [ ] 間違えたところだけ、動画を見直した
  • [ ] 見た本数ではなく、解けた問題の数で進み具合を確かめた

参考文献

  • Carpenter, S. K., Wilford, M. M., Kornell, N., & Mullaney, K. M. (2013). Appearances can be deceiving: Instructor fluency increases perceptions of learning without increasing actual learning. Psychonomic Bulletin & Review, 20(6), 1350–1356.
  • Szpunar, K. K., Khan, N. Y., & Schacter, D. L. (2013). Interpolated memory tests reduce mind wandering and improve learning of online lectures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(16), 6313–6317.

ガクサン 24冊目 感想・考察

【今回の一番】「うるしちゃんは…こっち側の人だよ」――山崎さんの本音

24冊目でいちばん心に残ったのは、山崎さんのこの言葉です。

「うるしちゃんは…こっち側の人だよ」

17冊目で山崎さんは、うるしに「だって正直うるしちゃんって……」と言いかけて、ミーハーでしょ、とごまかしました。その続きが、ようやくわかりました。うるしは参考書そのものより、参考書に熱意を注いでいる「人たち」が好きなのだ、と。

そして山崎さんは、それを「自分と同じ」だと感じています。どこか仕事に夢中になりきれない自分が、ずっと持っているあこがれ。福山のように、ただ好きで、好きなだけで十分だと言える人がまぶしい。15冊目の「デキる奴が好きなだけで満足だ…なんて一番うらやましいし悔しい」という言葉とも重なります。

いつも明るく人当たりのいい山崎さんが、隣にいてしんどいときがある、と心の中でもらす。山崎さんにとっての福山は、親友であり、かなわない相手でもあるのでしょう。だからこそ、同じ「こっち側」のうるしの気持ちがわかるのだと思います。

福山の「好きなだけで十分だろ」

一方の福山は、うるしの変化を「参考書の沼にハマった」と、うれしそうに受け止めています。最初はミーハーなにわかサブカルだと思っていたけれど、見どころがないわけではない。福山なりの最大級のほめ言葉でしょう(笑)。

でも、もったいない、という感覚が福山にはわからない。好きなだけで十分。どこにいても参考書にかかわれればいい。15冊目で、俺は参考書に携われたらそれでいい、満足している、と言っていた福山らしい答えです。

好きなものに夢中になれることが「当たり前」の人には、夢中になりきれない人の気持ちは見えにくい。22冊目で、英語ができるしをりさんに桃さんのつまずきが見えなかったのと、少し似ています。山崎さんの「気づけるわけないんだよ」には、そんなさびしさがにじんでいました。

動画と参考書は「食い合わない」

勉強動画の話は、参考書業界の今がよくわかって、とてもおもしろかったです。

動画が増えたら参考書が売れなくなる、と思いがちですが、福山いわく、授業動画が人気になるほど演習のための問題集が売れる。動画の中で参考書を紹介してもらえることも多い。動画は参考書のライバルではなく、入り口にもなっているんですね。

そして『はいちの楽しくなる数学』のように、動画が先にあって、本があとからできる参考書も生まれている。13冊目で見た、企画会議から1年かけて本を作る流れとはまったく違う、新しい作り方です。勉強動画を見て福山が上機嫌になったのは、参考書の世界が広がっていくのがうれしいからなのかもしれません。

谷津さんと葵さん、そして「認知特性」

ラストは、12冊目で理転を応援すると決めた谷津さんの、新しい悩みでした。娘が動画ばかり見ている、チャラチャラした勉強法だ――。親としては、心配になる気持ちもよくわかります。

ただ、葵さんの「パパは知らないだろうけど、今の勉強はこうなの!」にも一理あります。福山自身も、動画は見ただけで終わらせなければ役に立つ、という立場でした。

そこで福山が持ち出したのが「認知特性」という言葉。人によって、見て覚えるのが得意、聞いて覚えるのが得意、といった違いがある、という考え方です。ただ、心理学の研究では、自分の得意なタイプに合わせて教え方を変えると成績が上がる、という「学習スタイル」の考え方は、十分な裏づけがないとも言われています。(Pashler ほか, 2008)

福山はこの言葉を、谷津さんにどう説明するのか。葵さんの動画勉強を、どう生かすのか。25冊目が楽しみです。

参考文献

  • Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008). Learning styles: Concepts and evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105–119.

まとめ

  • 福山「茅野も参考書の沼にハマったんだな」。うるしの変化を、うれしそうに受け止める
  • 山崎さんの本音:うるしは参考書に熱意を注ぐ「人たち」が好き。自分と同じあこがれ
  • 福山「好きなだけで十分だろ」。山崎さん「うるしちゃんは…こっち側の人だよ」「福山は気づけてない」
  • うるしが勉強動画の世界をのぞく。オンライン講義、無料の解説動画、一緒に勉強する動画
  • 葉一さんの『はいちの楽しくなる数学』。動画が先、参考書があとの新しいスタイル
  • 動画と参考書は食い合わない。授業動画が人気になるほど問題集が売れる
  • ただし動画は「見ただけで勉強した気になる」。娘の動画勉強に悩む谷津さんに、福山「認知特性という言葉はご存じですか?」

24冊目は、山崎さんの心の奥と、今どきの勉強のかたちが見えた回でした。「認知特性」とは何か、福山の答えは。25冊目が待ちきれません!

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