【ガクサン 26話ネタバレ】26冊目|苦手と学習障害。福山「やめておけ」とうるしの涙――「努力不足だと片づけてはいけない」読み書きの困難と、「これは全部君がここで積み重ねてきたことだ」

【ガクサン 26話ネタバレ】26冊目|苦手と学習障害。福山「やめておけ」とうるしの涙――「努力不足だと片づけてはいけない」読み書きの困難と、「これは全部君がここで積み重ねてきたことだ」 ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

26冊目は「苦手と学習障害」。うるしの編集者志望に気づいてしまった福山と、なにも知らないうるし。ぎくしゃくしたご相談係に届いたのは、ひらがなしか読めない小学2年生の子の相談でした。そして、ふたりはついにぶつかります。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

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ガクサン 26冊目「苦手と学習障害」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

娘の動画勉強に反対する谷津さんに、福山は「認知特性」の話をしました。人によって得意な覚え方は違う。自分の過去を打ち明けた谷津さんに、福山は尊敬していますと伝え、うるしは、少しずつ歩み寄れたらいいですね、と笑いました。

その夜。うるしの机から落ちた書類――第四編集部の修正見本、社内公募のお知らせ、校正記号のマニュアル――を見て、福山はうるしが編集者になりたいことに気づいてしまいます。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 25話ネタバレ】25冊目|うるしと認知特性。谷津さんが「書いて書いて書いた」わけと、福山「尊敬しています」――視覚・聴覚・言語優位に合う参考書、そして福山がついに気づいたこと

気もそぞろなご相談係

先月分の問い合わせメールのまとめ(要回覧)を、うるしは回し忘れていました。おそるおそる差し出すと、福山はひとこと、気もそぞろだな。

すみません、と謝りながらも、うるしは心の中でむくれます。福山さんだって回覧が来てないのに気づいてなかったくせに。最近マシになってきたと思っていたのに、相変わらずヤな感じ――。

一方の福山の頭には、あの夜の書類と、山崎さんの「福山は気づけてない、全然」がこびりついていました。

ひらがなしか読めない、小学2年生

そこへ届いた新しい相談。

小学2年生の子どもが、ひらがなしか読めない。それも一字ずつ読んだり、文をとばしたりする。時間がかかって、すぐに疲れてしまう。ほかの子は漢字も読み書きできるのに……読解力をつけさせたいので、おすすめの本はありますか?

実はうるしが、すでに返信していました。読み書きに苦手意識があるのかも、達成感を感じられるドリルで少しずつ努力を――と、いぶき社のドリルを紹介。相談者のお母さんは、なまけ癖があって心配だけど頑張らせてみます、と喜んでいます。

19冊目の姪っ子の件で福山さんが話していたことを参考にしました、とドヤ顔のうるし。ところが福山の表情は、こわばっていました。

「学習障害」という言葉

福山はうるしに、学習障害という言葉を聞いたことがあるか、とたずねます。

学習障害のひとつに、文字を読むことに困難をかかえる読字障害がある。字がぼやけて見えたり、鏡文字に見えたり、人によってパターンも程度もさまざまだ、と。

この子もそうだということですか、と聞くうるしに、福山は、可能性があるにすぎないが、と前置きします。学習障害は「学び方の違い」と呼ばれることもある。読みやすい字体にしたり、音声のメディアを使ったり、学び方を変えることで乗りこえられることがあるからだ。そして、こう続けました(このセリフは感想で)。

子どもの成長には、いろいろな問題や可能性がつきまとう。自分たちの無責任な回答が、問題を悪化させることだってある。結果として取り越し苦労なら何よりだが、専門家の診断を受けるべきだ、と。

「やめておけ」

返信しなおします、と謝るうるしに、福山は、なんで俺に聞かなかった、これまでそうしてきただろう、と責め、わからないことに無責任に手を出すな、と言い放ちます。

うるしも、言い返さずにはいられませんでした。今はダメでも、私だってわかるようになれる。ずっと福山さんのおまけでいるのは嫌だ。福山さんがもったいないと思ってご相談を始めて、社内でも少しずつ見てくれる人が増えてきた。私だって――。

福山は、静かにたずねます。だから編集者になりたいのか。

どうしてそれを、と青ざめるうるしに、福山は、やめておけ、と。そんな理由で編集になっても、いい参考書は作れない。

夢を見たっていいじゃないですか、とうるし。私には何もないんです、福山さんと違って。福山さんも、ここのご相談係も、私のことなんて必要じゃないじゃないですか――。

「何もないわけがないだろう」

すると福山は、一冊のファイルを差し出します。中身は、これまでの相談対応の記録。うるしが返した提案まで、一件ずつ紙にまとめてありました。相談対応もうちの仕事だ、記録くらいする、と福山。(ついでに、俺は紙派だ、とも)

君が始めなければ、ここにいる全員、何も変わらなかった。たしかに君の知識は付け焼き刃で、無責任で、無鉄砲だ。だが――サッカーボールの少年、古文の積読のゆいさん、理転した葵さん。これまでの相談者たちの顔が浮かびます。

「これは全部 君がここで積み重ねてきたことだ」

何もないわけがないだろう、と福山。けれど、うるしは涙ぐんだまま、福山さんは人の気持ちなんてわからないくせに、とぶつけてしまいます。福山の返事は、そうかもな、のひとことでした。

山崎さんの週末と、福山からの電話

その夜。ひとり暮らしのおしゃれな部屋で、山崎さんは缶ビール片手に、ようこそ週末! 買ったばかりのプロジェクターで映画を観まくって、明日は美術展。ま、一人だけど! 気楽に会える女友達は、みーんな結婚しちゃったしね……。

そこへ、めずらしく福山から電話。茅野の件、お前知っていて何も言わなかったのか。校正記号の本や校了紙の見本を貸したのはお前だろう――。うるしに資料を貸していたのは、山崎さんだったのです。

怒ってる?とびくびくする山崎さんに、福山は、なんで俺が怒る、状況確認だ、とロボットのような返事。

茅野と話したが、気持ちはよくわからない。なぜ自分がこんなに気にしているのかもわからない。これまでの相談係は問題もなく、それでよかったのに、茅野が来ていつのまにか……毒された感じだな、と福山。

山崎さんは言います。それさ、うるしちゃんがいなくなったら「残念」って思ってるんじゃない? お前。

これが「残念」……とつぶやく福山に、初めて感情を知ったロボかよ、と山崎さん。わかった、と電話を切られたあと、ソファにずり落ちながら、なんかフクザツ……とこぼすのでした。27冊目へ続きます。

【ガクサン流・読み書きの困難に気づいたら】「なまけ」ではなく「学び方の違い」かもしれない

26冊目は、ガクサンの中でもとくに慎重に読みたい回でした。作中の欄外には、参考として厚生労働省の「e-ヘルスネット」の学習障害のページが紹介されています。

※ここに書くのは一般的な情報です。お子さんのことで気になることがあれば、かかりつけの小児科や学校、地域の相談窓口に相談してください。おじさんは専門家ではありません。

1. 学習障害(LD)とは

学習障害は、全体的な知的発達に遅れはないのに、読む・書く・計算するなど、特定のことだけがとても難しい状態をいいます。作中の欄外にあるように、

  • 読字障害(読むことの困難)
  • 書字表出障害(書くことの困難)
  • 算数障害(計算や推論の困難)

に分けられます。読むことの困難は「ディスレクシア」とも呼ばれ、学習障害の中でも多いタイプです。文字と音を結びつける力に、生まれつきの弱さがあると考えられています。(Peterson & Pennington, 2012)

決してめずらしいことではありません。文部科学省の2022年の調査では、通常の学級にいる小中学生のうち、学習面で著しい困難を示すとされた子は約6.5%。35人のクラスなら2人ほどの計算です(担任の先生の回答による推定で、診断ではありません)。

2. 「努力不足」と決めつけない

相談のお母さんは「なまけ癖」と書いていました。でも、読むのに人の何倍も時間がかかり、すぐに疲れてしまうのは、本人がなまけているからではないかもしれません。

困難に気づかれないまま「もっと頑張れ」と言われ続けると、勉強そのものが嫌いになったり、自信をなくしたりしやすい。福山が、うるしの「ドリルで少しずつ努力を」という返信に顔色を変えたのは、そのためです。

3. 気になるサインと、相談先

作中の相談にあったような様子は、気にかけてよいサインです。

  • 一字ずつ区切って読む、読むのにとても時間がかかる
  • 行や文をとばす、似た字を読みまちがえる
  • 読むとすぐに疲れる、音読をいやがる

こうしたサインがあっても、それだけで学習障害と決まるわけではありません。視力など、ほかの原因のこともあります。だからこそ福山の言うとおり、判断は専門家に。相談先には、たとえば次のようなところがあります。

  • かかりつけの小児科(必要に応じて、発達を診る専門の医療機関を紹介してもらう)
  • 学校の担任の先生・特別支援教育コーディネーター
  • 市区町村の教育相談窓口、各都道府県の発達障害者支援センター

4. 学び方を変える工夫

福山が言った「学び方を変えることで乗りこえられる」には、たとえばこんな工夫があります。

困りごと工夫の例
文字が読みにくい読みやすい字体・大きめの文字、行間を広くする、読む行以外を隠す
読むのに時間がかかる音声の読み上げを使う、文字と音声がいっしょに出る教材を使う
書くのが大変パソコンやタブレットで入力する、写真で板書を記録する
テストで力が出せない時間の延長、問題の読み上げ(学校と相談)

文字と音声が同時に流れる「マルチメディアデイジー教科書」のように、読みに困難のある子のための教材もあります。25冊目の「認知特性」の話ともつながりますね。

学校や事業者には、障害のある人への「合理的配慮」が求められています(障害者差別解消法。2024年4月からは民間の事業者も義務に)。困りごとは、遠慮せず学校に相談してよいのです。

ぱっと見まとめ:読み書きの困難に気づいたら

番号名前やること
1決めつけない「なまけ」「努力不足」と決めつけず、困りごととして見る
2様子をメモするどんなときに、何が難しいのかを書きとめる
3専門家に相談小児科・学校・教育相談窓口などに相談する
4学び方を変える字体・音声・タブレットなど、合う方法を探す
5学校と話す合理的配慮について、担任の先生と話し合う

読み書きの困難チェックリスト(26冊目から)

  • [ ] 「なまけている」と決めつけていないか、ふりかえった
  • [ ] 読むときの様子(一字ずつ読む・行をとばす・すぐ疲れる)をメモした
  • [ ] かかりつけ医や学校、相談窓口に相談した
  • [ ] 音声や読みやすい字体など、別の学び方を試した
  • [ ] できたことを一緒に喜び、自信を守るようにした

参考文献

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット 学習障害についてのページ(作中の欄外で紹介) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
  • 文部科学省(2022)「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」
  • Peterson, R. L., & Pennington, B. F. (2012). Developmental dyslexia. The Lancet, 379(9830), 1997–2007.
  • 内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)改正法 2024年4月1日施行

ガクサン 26冊目 感想・考察

【今回の一番】「これは全部 君がここで積み重ねてきたことだ」

26冊目でいちばん心に残ったのは、福山が差し出した一冊のファイルでした。

「これは全部 君がここで積み重ねてきたことだ」

うるしは、自分には何もない、と言いました。16冊目の夜にも、私自身は何者でもないまま、とつぶやいていたうるし。編集者になれば答えが見つかるかもしれない――その思いの底には、いつも「何もない自分」がいました。

その「何もない」を、福山は紙の記録で否定した。4冊目の勝手なツイートから始まったご相談係の仕事。5〜6冊目の独学の少年、7〜8冊目のゆいさん、11〜12冊目の葵さん。一件一件を、福山はちゃんと紙に残していたのです。

15冊目で福山は、うるしの投稿に「いい返答だった」と豆大福を差し出しました。口ではほめない福山が、ずっと見ていたことの証拠が、あのファイルでした。

「努力不足だと片づけてはいけない」

学習障害の話のなかで、福山はこう言いました。

「こうした違いを『努力不足』だと片づけてはいけない」

このセリフは、相談の子どもだけでなく、うるし自身にも返ってくるように思えます。福山は、うるしの知識を「付け焼き刃」と言い切る一方で、うるしの積み重ねを「何もない」とは決して言わなかった。できないことと、努力していないことは違う。福山はそこを、きちんと分けて見ているのだと思います。

19冊目で福山は、勉強は受験のためにするものではない、この社会で人が自信をもって生きていくために大切だ、と語りました。読み書きにつまずく子に「もっと頑張れ」と言い続けることは、その自信を一番奪ってしまう。福山の厳しさの理由が、ここにあります。

「やめておけ」の本当の意味

それでも、「やめておけ」は残酷に聞こえました。

ただ、福山は「お前には無理だ」とは言っていません。「そんな理由で」編集になっても、いい参考書は作れないと言ったのです。福山さんのおまけは嫌、見てくれる人が増えた、私だって――うるしの動機は、自分のためのものでした。

17冊目で語られた福山の過去を思い出すと、この言葉の重さがわかります。読者の人生に響くから、と後輩に厳しく当たり、編集から外された福山。福山にとって参考書づくりは、読む人のための仕事です。だから「何もない自分を変えたい」という理由に、うなずけなかったのでしょう。

うるしの「人の気持ちなんてわからないくせに」に、福山は、そうかもな、と返しただけでした。25冊目で、うるしは「少しずつ歩み寄れたら」と言ったばかり。その言葉を思い出して立ち上がった福山が、いちばん歩み寄れない形でうるしと向き合ってしまった。なんともせつない展開です。

「これが『残念』…」――初めて感情を知ったロボ

重い回の最後を救ってくれたのは、山崎さんでした(笑)。

週末をひとりで満喫する山崎さんのもとに、めずらしく福山から電話。うるしに資料を貸していたのは山崎さんで、福山はそれを「状況確認」しに電話したのです。

毒された感じだな、という福山に、山崎さんは、うるしちゃんがいなくなったら「残念」なんじゃない?と言い当てます。これが「残念」……と、初めて自分の気持ちに名前がついた福山。15冊目の「満足している」、24冊目の「好きなだけで十分」と、ずっと自分の気持ちに無頓着だった福山が、うるしのことでは揺れている。

そして、なんかフクザツ……とソファにずり落ちる山崎さん。24冊目で「隣にいてしんどいときある」ともらした山崎さんにとって、福山の変化はうれしくもあり、少しさびしくもあるのでしょう。

まとめ

  • 福山はうるしの編集者志望を知ってぎくしゃく。うるしは回覧を忘れて「気もそぞろだな」
  • 小2の子がひらがなしか読めないという相談に、うるしはドリルをすすめてしまう
  • 福山「学習障害」「努力不足だと片づけてはいけない」「専門家の診断を受けるべきだ」
  • 福山「だから編集者になりたいのか」「やめておけ」「そんな理由で編集になってもいい参考書は作れない」
  • うるし「私には何もない」→福山の相談記録ファイル「これは全部君がここで積み重ねてきたことだ」
  • うるし「人の気持ちなんてわからないくせに」→福山「そうかもな」
  • その夜、山崎さんに電話。資料を貸したのは山崎さん。福山「これが『残念』…」

26冊目は、ご相談係のふたりが初めて本気でぶつかった回でした。「残念」を知った福山は、うるしにどう向き合うのか。27冊目が待ちきれません!

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