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モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。
3冊目は、うるしのお客様ご相談係としての本格的な仕事初め。倉庫のような部屋で、福山と1対1。そこでうるしが見たのは、社内でのご相談係の「扱い」でした。
以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。
原作の漫画を手元で読みたい方は、こちらからどうぞ。
ガクサン 3冊目「うるし、『ご相談係』の洗礼」あらすじ(ネタバレ注意!)
前回までのあらすじ
書店フェアで、自分が使った名著『数完』を子どもにも、という父親に、福山は「時代遅れですね」。親の「バイブル」は最終的に役立った本であって、今の子には習熟度に合わせた参考書がある――「参考書は昔よりずっと学ぶ人間に優しくなってるんですよ」。
帰社したうるしは、福山の同期・山崎から、ご相談係は福山とうるしの2人だけだと知らされます。うるしの役目は「福山お守り係」でした。
前回の記事はこちら → 【ガクサン 2冊目】「はじめに」から始めろ。親世代の名著『数完』は「時代遅れ」?
鳴りやまない電話と「マニュアルを読め」
嵐のような初日の翌日。本棚に囲まれた倉庫のような部屋で、電話が鳴り続けます。福山は本から目を上げもしません。
「あの、電話出たほうが…?」。結局うるしが出ると、福山は「外線はお前が出ろ」「他は机の中のマニュアルを読め 以上」。
この厄介な人を、この部屋で1対1で面倒を見る――。本屋さんでのアレを毎日やるってこと!? うるしの頭に浮かんだのは「早く辞めたい…」でした。
月1の「回覧」と編集部
最初の仕事は「回覧」。お問い合わせメールを1カ月分印刷し、編集部に回して読んでもらう業務です。
「偏差値が上がりました!」「子どもが数学好きになりました!」。読者からのうれしい声がたくさん書いてあります。福山の回答メールは語気が強すぎて、「メールでもこの人こうなのか…」。
初めて入る編集部に、うるしのミーハー心がうずきます。いぶき社では、小中学参の編集者はどの教科も担当し、高校学参の編集者は教科ごとの専門。試し刷りに目を輝かせ、広告営業部、デジタル事業部、法務部までのぞいて「出版社っぽ~い」。
ところが、高校参考書の第一編集部で回覧を渡すと、返ってきたのは冷たい反応でした。
「あ~ご相談係のやつね…」「悪いけど三園欄にチェック入れて、あっちの山崎君に渡しといて」。読みもしない。「忙しいのにこんなの回されてもね」「福山君には言わないでよ」。
いいことがたくさん書いてあるのに――。
「福山さん、編集だったんだ」
回覧を受け取った山崎は「これ福山の本の感想だ、すごいみっしり…」。そして、うるしに教えてくれます。
「福山ね 元々編集なんだよ いろいろあって異動したんだよね」
せっかく詳しいのに今の仕事じゃもったいない、と山崎。うるしは、福山が嫌われているせいもあるのか、社内でのご相談係の扱いがどこかおかしいと感じ始めます。
「不要な業務だと思われてるからだ」
部屋に戻ると、福山は編集部でのやりとりをお見通しでした。「まあどうせろくに見ないだろうがな」。
「『お客様ご相談係』がこんな倉庫にある理由がわかるか?」「不要な業務だと思われてるからだ」
読者は置いてけぼり。仕方ない、そういう会社だ――。違和感の正体はこれか、とうるしは思います。
「福山さんはこのままでいいと思ってるんですか?」と聞くうるしに、福山は「うるさい 外野が口を出すな」。
「一応私も正社員採用なんですけどっ…!」と返すうるしに、福山は「即戦力採用の正社員様は余裕があるな」。頼まれていた電話メモを、うるしは忘れていました。
やり直し、やり直し、やり直し
それからの日々は散々でした。書いた回答は「違う」「要点があってない」「やり直し」。数日たっても「まだこんなこともわかんねーのか」。
「不要な業務」というわりに仕事は多い。前任者が半月前に辞めてから、大量の仕事がうるしのところで止まっている。なのに福山は「マニュアル見ろ」しか言わず、わからないことで逐一怒られる。営業部長は「ぼくは基本ノータッチだよ、まかせます!」。
こういうことだったのか――前任者さん、ご苦労様でした。
それでもうるしは踏みとどまります。こういうのは転職あるある。せっかくの正社員だし、慣れればきっと平気。そして頭に浮かぶのは、福山の「参考書が好きなだけだ」という言葉。
この仕事が答えなのかはわからない。でも、中途半端に辞めてしまう自分はもう嫌だ。
「『不要な業務』でも!!」
そんなとき、福山がうるしのミスを指摘します。「この参照先、間違ってる」。そして書類を取り上げ、「やる気ないならもういい 俺がやる」。
「ミーハー心でここに来たんだろ」「思ってた仕事と違っていて面倒になってるんだろう」「おそらく君はそういうタイプだ」
ほかの仕事も自分が引き取る、「ったく仕事が増える…」。そう言われて、うるしは叫んでいました。
「…やりますっ!」「『不要な業務』でも!!」
――言い過ぎた。そう気づいたときには、もう遅い。
「週明けから来なくて構わん」
「やらかした~~!!!」と頭を抱えるうるし。一方そのころ山崎は、「うるしちゃん、福山とトラブってないといいけど…」と、来週のランチに誘おうかと考えていました(予感的中)。
【いぶき社で見る】学参出版社のしくみ
3冊目では、学習参考書の出版社の中が少しだけのぞけました。作中で出てきたものを整理しておきます(いぶき社の場合)。
| 部署・仕事 | 作中の説明 |
|---|---|
| 小中学参の編集部 | 人数は少なめ。編集者はどの教科も担当する |
| 高校学参の編集部(第一編集部) | 人数が多い。国語・数学・物理など教科ごとの専門 |
| 広告営業部 | 受験情報誌の広告を扱う |
| デジタル事業 | 「最近多いもんね」とだけ登場 |
| 法務部 | 「こんな部署もあるんだあ」と名前だけ登場 |
| お客様ご相談係(営業部) | 問い合わせ対応、SNS、改訂の告知、編集部への回覧、書庫のリファレンス。部屋は倉庫のよう |
「回覧」は、読者からの問い合わせメールを1カ月分印刷して編集部で読んでもらう仕事。読者の声を本づくりに生かすための仕組みのはずですが、第一編集部では読まれずに回されていました。
ガクサン 3冊目 感想・考察
【今回の一番】「『不要な業務』でも!!」
このおじさんが3冊目で一番ぐっときたのは、うるしのこの叫びです。
1冊目で福山は、うるしを「飽き性かミーハー」と言いました。3冊目でも「ミーハー心で来たんだろ」「面倒になってるんだろう」。
たしかに、うるしは仕事を転々としてきました。本人もそれを気にしている。だからこそ、「中途半端に辞めちゃう自分はもういやだ」と決めた直後に「やる気ないならもういい」と言われたのは、いちばん痛いところを突かれたんですよね。
「やりますっ!」は、福山への反論であると同時に、昔の自分への反論でもあったと思います。
福山がキレたのは「不要な業務」のほう
では、なぜ福山は「週明けから来なくて構わん」とまで言ったのか。
おじさんは、引き金はうるしの口答えではなく、「不要な業務」という言葉そのものだと読みました。
「不要な業務だと思われてる」と言ったのは福山自身です。でもそれは、会社がそう扱っているという皮肉。福山は、倉庫のような部屋でも、読者の声を回覧し、編集部に読まれなくても、この仕事を続けてきた。
そこに入って数日の新人から「『不要な業務』でも!!」と言われたら――自分が一番大事にしているものを「不要」と呼ばれたように聞こえたのかもしれません。
うるしの「言い過ぎた」も、たぶんそこに気づいたからなんですよね。
読まれない回覧と、読者の声
読者からの「偏差値が上がりました!」「子どもが数学好きになりました!」。本を作る人にとって、これ以上うれしい言葉はないはずです。
それを「どうでもいいよ」と読まずに回してしまう第一編集部。読者は置いてけぼり。
1冊目・2冊目の福山は、いつも「参考書を使う人間」のほうを見ていました。ご相談係は、会社の中で唯一、読者と直接つながっている場所。福山がこの仕事を手放さない理由が、少し見えた気がします。
福山は「元編集」――2冊目の伏線
山崎の「元々編集なんだよ、いろいろあって異動したんだよね」。
2冊目の「好きになるほど、いいことばかりじゃない」「ただ苦しくなるだけ…ってこともある」と、2冊目の営業部員の「何か言える立場じゃねーだろ」。この「いろいろ」が、福山の過去の核心なのは間違いなさそうです。
参考書が好きすぎて、編集部で何かがあった。そして倉庫のような部屋に来た――。今後の展開が楽しみです。
わからないのに「マニュアル見ろ」問題
もうひとつ、社会人として身につまされたのが、うるしの「わからないことで逐一怒られて全然進まない」状況。
前任者は半月前に辞め、仕事は山積み、上司はノータッチ、先輩は「マニュアル見ろ」。転職したばかりの人なら、誰でも一度は経験があるのではないでしょうか。
福山の教え方は、1冊目の中学生への「大人になれ」と同じで、自分で考えて実行しろというもの。ただ、中学生には「3つのステップ」と「割る」を具体的に渡したのに、うるしには渡していない。
福山がうるしを「教える相手」と思えるようになるのか。そこが2人の関係のカギになりそうです。
まとめ
- ご相談係の仕事初め。倉庫のような部屋で、福山と1対1
- 回覧を届けた第一編集部は、読者の声を読まずに回していた
- 山崎いわく、福山は「元々編集」。いろいろあって異動した
- ご相談係が倉庫にあるのは「不要な業務だと思われてるから」
- やり直し続きの末、うるしは「『不要な業務』でも!!」と言ってしまい、福山は「週明けから来なくて構わん」
1巻の序盤から、なかなかハードな展開になりました。うるしは週明け、あの部屋に戻れるのか。次の4冊目が気になります。
続きが待ちきれない方は、漫画でひと足先にどうぞ。

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