【ガクサン 32話ネタバレ】32冊目|うるしとイラスト事情。山崎と日曜の個展へ、これってデート?――参考書の表紙は「今どき」へ、そしてうるし「編集者目指すのやめたんです」

【ガクサン 32話ネタバレ】32冊目|うるしとイラスト事情。山崎と日曜の個展へ、これってデート?――参考書の表紙は「今どき」へ、そしてうるし「編集者目指すのやめたんです」 ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

32冊目は「うるしとイラスト事情」。31冊目のラスト、山崎さんからの「今週の日曜日あいてる?」の続きです。行き先はやはりイラストレーター・ヤイダさんの個展。参考書の表紙やイラストの「今」が語られる勉強回でありながら、最後の最後で山崎さんの心をひっくり返す一言が飛び出します。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

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ガクサン 32冊目「うるしとイラスト事情」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

屋上でうるしは、福山が自力で積み重ねてきたもの全部が大切なんだ、と伝えました。26冊目で福山に言われた言葉を、そのまま返したのです。福山は笑って、うるしを「ご相談係らしくなってきた」と認めました。

その夜、福山は本に埋もれた部屋で「積み重ねてきたもの」をかみしめ、山崎さんに電話。ずっと断ってきたしをり会の話を、聞こうかと思う、茅野に気付かされた、と。打ち上げ中だった山崎さんは、うるしと福山の「フラグ」に気づいて胸がざわつき、このままでいいのか、と自問します。そしてヤイダさんの個展の招待状を手に、うるしへメッセージを送りました。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 31話ネタバレ】31冊目|福山の過去、うるしの気持ち。「自力で積み重ねてきたもの」がうるしの答え――福山がついに山崎へ電話「勉強会の話を聞こうかと」、そして山崎の「このままで俺はいいのか?」

日曜日、これってデート?

日曜日。ワンピース姿のうるしが、ビルの前で山崎さんを待っています。個展なんてめったに来ないし、山崎さんの知り合いの個展だし、とドキドキ。

数日前、山崎さんのメッセージには、新刊で一緒に仕事をしたイラストレーターの個展があるから、よかったら一緒に行かない?とありました。うるしはヤイダさんの絵をSNSで見たことがあり、なんとコンビニのコラボLINEスタンプまで持っていた。ミーハースイッチ、作動です。即答で「ぜひ!」。

ところが返信したあとで、ふと我に返ります。なんで私が誘われたんだろう、ほかの編集部の人は? 日曜日って、仕事じゃなくてプライベート……これってデート? ベッドに倒れこんで、いやいやないない!

当日、やってきた山崎さんも、内心は大混乱でした。福山の電話と「フラグ」が頭をよぎり、勢いで誘ったけれど、これはデートだよな、俺は何をしたいんだ、と。最後は、うるしちゃんが編集者になるのに少しでも役立てばいいか、と自分に言い聞かせます。

ギャラリーで聞く「参考書のイラスト事情」

ギャラリーには、CDのジャケットで見たことのある絵や、山崎さん担当の『古典読解のヒント』(作中の架空の本)も展示されていました。

うるしは、ヤイダさんのような今どきの作家さんが参考書の仕事をしていたのは意外だった、と言います。参考書といえば、もっとカラフルで子ども向けっぽいイメージがあったから。

山崎さんの答えは、最近は意外とそうでもない、でした。昔はポップで立体的でカラフルだったのが、今はフラットでシンプル。好き嫌いが出にくい、シンプルで癖のないイラストが主流なのだそうです。イラストやキャラが好きで参考書を買う人はまれで(有名キャラの版権ドリルは別)、今の感覚でなじみやすいかどうかが大事なのだ、と。

さらに、読者の年齢でも事情が変わります。中高生向けは、大人の感性を身につけ始めているので「おしゃれ」かどうかも大切。小学生向けは親が買うので、親がやらせたいと思える見た目でなければならない。かといって、大人が考える「子どもっぽさ」を出しすぎると、子どもはだまされている感じを受けてしまう。このバランスが難しいのだとか。うるしは、なんだか哲学的……と目を回します。

山崎さんが最近うまいと思ったのは、小学生向けのヒット作『ヒマつぶしドリル』のイラスト。やる気のないキャラクターが子どもにとって等身大に見えて、タッチも力が抜けていて面白い、と。うるしは、この人の絵も見たことある!とまた反応します。

ヤイダと、後輩のイラストレーター・結城

そこへヤイダさんが登場。山崎さんはうるしを、いぶき社営業部お客様ご相談係の茅野うるし、と紹介し、いずれ一緒に仕事をするかもしれないから名刺交換しておいたら、とささやきます。ところが、ご相談係は内勤扱いなので名刺がない、とうるし。山崎さんは、えっそうだったの!?

うるしは心の中で考えます。もしかして山崎さんは、編集志望の私のために今日呼んでくれたのかも――。

ヤイダさんにも、紹介したい人がいました。専門学校時代の後輩で、仕事を探しているイラストレーターの結城さんです。ところが結城さんは、いぶき社と聞くなり尻ごみ。参考書の会社なら自分の絵は合わない、と。

見せてもらったポートフォリオは、キラキラした美少女のイラスト。うるしは思わず、かわいい……。結城さんは、まじめな参考書向けの絵柄じゃない、ライトノベルやソーシャルゲーム向けだ、と縮こまります。

うるしが語る「今どきの表紙」

ここで、うるしのスイッチが入ります。昔と違って、特にここ3〜4年、とくに中学生向けの参考書では、コミックやアニメ感のあるカバーが流行っているんです、と。

実在の参考書の表紙を挙げながら、こういうタッチの絵を表紙に使い始めた元祖は中経出版の「面白いほどわかる本」シリーズだと思う、最近は背景つきの絵がトレンド、と説明するうるし。山崎さんとヤイダさんも、萌えというより等身大、絶妙なバランスだ、とうなずきます。

うるしいわく、中学生が手に取りたくなる雰囲気で、しかも親から見ても「これならやる気を出してくれるかも」と思えるライン。そこが編集とイラストレーターの腕の見せどころ。

結城さんが漫画も描けると聞くと、うるしはスマホでKADOKAWAの「ゼッタイわかる」シリーズを見せます。キャラクターデザインも本格的で、各章の導入がギャグ漫画、解説もキャラクターの会話で進む。漫画を使った参考書も、昔のイメージとはずいぶん変わってきているのです。

山崎さんは、参考書はどんどん今っぽく洗練されてるね、と感心しつつ、本音ももらします。業界全体では同じような雰囲気の本も多いし、いぶき社も昔ながらでなかなか難しい、新しい本を作っても昔からある名著に埋もれてしまう、と。

それに対するうるしの答えは、感想で紹介します。しゃべりすぎた、とあわてるうるしに、山崎さんは、なるほど……と感心しきりでした。

結城の決意、そして帰り道

うるしの話を聞いた結城さんは、顔を真っ赤にして、自分には堅い参考書の仕事は向いていないと思っていたけれど、役に立てることがあるのかも、と頭を下げます。ぜひよろしくお願いします、と。

帰り道。今日はご縁ができてよかった、と山崎さん。そして、うるしちゃん成長してるね、結城さんに言っていたことにびっくりした、やっぱり編集者を目指しているから……と続けます。

うるしは、実はそれなんですけど、と切り出し、ぺこりと頭を下げました(このセリフは感想で)。

目が点になった山崎さんの「へ?」で、33冊目へ続きます。

【参考書ができるまで・番外編②】表紙とイラストは「見た目」だけじゃない

32冊目にもハウツーの相談はありませんでしたが、31冊目の「参考書の絵は誰が描く」に続いて、表紙やイラストの「今」がたっぷり語られました。作中の話と研究をまとめます。

1. 昔はカラフル、今は「シンプルで癖がない」

作中の山崎さんいわく、参考書のイラストは、ポップでカラフルなものから、フラットでシンプルなものへ。誰からも好き嫌いが出にくいことが優先されています。

参考書は、イラストが好きだから買う、という本ではありません。邪魔をしない、なじむ絵が求められるわけです。

2. 読者は二人いる――子どもと親

小学生向けは親が買い、中高生向けは本人が選ぶことが増える。だから小学生向けは「親がやらせたい」、中高生向けは「本人がおしゃれと思える」ことが大事。そのうえで、子どもっぽすぎても、落ち着きすぎてもいけない。

18冊目で、うるしが姪のゆかりちゃんにドリルを選んだとき、「使う本人が自分で選んだからこそ愛着がわく」と言っていました。買う人と使う人がちがうのが、学参の表紙の難しさです。

3. 研究で見る「好感の持てる見た目」の効果

見た目は学びに関係あるのでしょうか。教材の色や絵を、温かい色や丸みのある形で「好感が持てる」ようにデザインした実験では、学習者の気分が上がり、理解や応用の成績もよくなったと報告されています。(Um ほか, 2012)

似た実験で、図の要素に顔や温かい色をつけて親しみやすくしたところ、内容の理解が上がったという結果もあります(Mayer & Estrella, 2014)。研究者たちはこれを「エモーショナルデザイン」と呼んでいます。

ただし31冊目で紹介したように、内容と関係のない「飾り」の絵には効果がないどころか、気が散ってしまうこともあります。好感の持てる見た目は、あくまで中身を読む気にさせる入り口です。

4. 漫画で学ぶ参考書は「アリ」か

作中の「ゼッタイわかる」シリーズのように、漫画で解説を進める参考書も増えました。経営学の内容を、ふつうの文章と、グラフィックノベル(漫画)形式で読ませて比べた研究では、漫画形式のほうが内容をよく覚えていたと報告されています。(Short ほか, 2013)

25冊目の認知特性の回で、視覚優位の人は絵や図から入ると理解しやすい、という話がありました。漫画の参考書は、そういう人にとって最初の一冊の入り口になりそうです。ただ、漫画で読んだら終わりではなく、1冊目の福山の言葉どおり、問題演習で「潰す」ところまでがセットです。

ぱっと見まとめ:参考書の見た目と選び方

番号名前ポイント使い方
1シンプルな表紙好き嫌いが出にくく、長く使える中身(はじめに・目次)を見て決める
2今どきの表紙中高生が手に取りやすいコミック・アニメ調「開きたくなる」なら立派な選ぶ理由
3親しみのある絵気分が上がり、読み進める力になる図や絵が本文の説明になっているか確かめる
4漫画の参考書導入や解説を会話で読める読んだあとに必ず問題演習をする

参考書の見た目チェックリスト(32冊目から)

  • [ ] 表紙だけでなく「はじめに」と中のページも見た
  • [ ] 絵や図が、内容の説明になっているかを確かめた
  • [ ] 子どもの参考書は、親が選ぶだけでなく本人にも見せた
  • [ ] 漫画の参考書は、読んだあとに問題演習までした
  • [ ] 何度も開きたくなる一冊を選んだ

参考文献

  • Um, E., Plass, J. L., Hayward, E. O., & Homer, B. D. (2012). Emotional design in multimedia learning. Journal of Educational Psychology, 104(2), 485–498.
  • Mayer, R. E., & Estrella, G. (2014). Benefits of emotional design in multimedia instruction. Learning and Instruction, 33, 12–18.
  • Short, J. C., Randolph-Seng, B., & McKenny, A. F. (2013). Graphic presentation: An empirical examination of the graphic novel approach to communicate business concepts. Business Communication Quarterly, 76(3), 273–303.

ガクサン 32冊目 感想・考察

【今回の一番】「編集者…目指すのやめたんです」

32冊目でいちばん驚いたのは、やはりラストのこの一言でした。

「編集者…目指すのやめたんです すみませんっ!!」

27冊目で、うるしは「編集者」ではなく「お客様ご相談係」でがんばりたい、と決めました。福山には伝えていましたが、山崎さんはそれを知らなかったのです。

思い返せば、山崎さんは26冊目で校正記号の本や校了紙の見本をうるしに貸した張本人。今日の個展も、名刺交換のすすめも、「うるしちゃんが編集者になるのに役立てば」という気持ちが支えでした。デートかもしれない、と迷う自分への言い訳でもあったわけです。

その土台が、最後のページで静かに崩れる。山崎さんの「へ?」は、ただの驚きではなく、俺は何のために誘ったんだっけ、という問いの始まりに見えます。

「これからの参考書出版社に必要な感覚」

もうひとつ心に残ったのが、昔ながらで難しい、と弱音をもらした山崎さんに、うるしが笑顔で返した言葉です。

「今の時代の一般的な目線で魅力的に見える本を作るのも」

これからの参考書出版社に必要な感覚なんでしょうね、と、うるしは続けました。「参考書ってこういうものだよね」という思いこみを捨てて、と。

17冊目で山崎さんは、うるしを「ミーハー」と評していました。今回も、SNSで見た絵、コンビニのコラボスタンプ、とミーハーぶりは全開です。でもそのミーハーさが、業界の中の人が見落としている「ふつうの人の目線」として役に立った。弱点だと思われていたものが、武器にひっくり返る。ガクサンが何度も描いてきた形です。

しかも、これは編集者の目線というより、ご相談係の目線です。読者が何を見て手に取るのか、親が何を見て買うのか。27冊目で選んだ道の延長で、うるしは自然に話していました。だからこそ、編集者をやめたという告白と、ちゃんとつながっているのだと思います。

山崎さんの「このままで」の答えは

31冊目の「このままで俺はいいのか?」。おじさんは前回、恋と仕事の両方の意味だと読みました。32冊目は、その両方が一度に揺さぶられる回でした。

恋のほうは、言うまでもなく「これってデートだよな」。仕事のほうは、いぶき社は昔ながらで難しい、新しい本は名著に埋もれる、という本音です。17冊目では、学参の出版社で「もうちょっと色のある本を作りたい」と話していた山崎さん。24冊目の心の声、どこか仕事に夢中になりきれない、もここにつながります。

そこに、福山はしをり会へ一歩近づき、うるしは自分の道を見つけ、さらに編集者をやめたと言う。山崎さんだけが、まだ答えを出していない。33冊目は、山崎さんの番になりそうです。

結城さんの「僕の絵じゃダメ」

結城さんの尻ごみも、ガクサンらしい場面でした。

「僕の絵じゃダメだと思いますからっ…!!」

参考書は堅いもの、自分の絵は場ちがい。結城さんのこの思いこみは、山崎さんの「いぶき社は昔ながら」と、裏表になっています。作る側も描く側も、「参考書ってこういうもの」に縛られていたわけです。

うるしの一言で、その両方がほどけていく。30冊目で福山が七海に言った、自分の考え方に固執するな、という言葉は、勉強だけでなく仕事にもあてはまるのですね。結城さんは、今後いぶき社の本の絵を描くことになるのでしょうか。新しい登場人物として、覚えておきたいところです。

うるしは誰を見ている?

最後に、恋の行方を少しだけ。

日曜日の誘いに「デート?」と動揺したうるしですが、その後はミーハー全開で、個展を心から楽しんでいました。そして山崎さんの親切を、編集志望の自分のため、と受け取ります。31冊目で福山に「隣にいるのにもっと近づきたい」と感じたときのような、胸の高鳴りは描かれていません。

一方の山崎さんは、うるしのために、と言い聞かせながら、ずっと自分の気持ちと格闘していました。同じ日曜日を、ふたりはまったくちがうものとして過ごしていたのが、少し切ないところです。

まとめ

  • 山崎の誘いで、うるしはヤイダの個展へ。うるしも山崎も「これってデート?」と動揺
  • 参考書のイラストは、カラフルからシンプルで癖のないものへ。小学生向けは親が買う、中高生向けはおしゃれさも大事
  • ヤイダの後輩・結城は、自分の絵は参考書に合わないと尻ごみ
  • うるしは、ここ数年の中学生向け参考書のコミック・アニメ調の表紙や、漫画で進む参考書を紹介
  • 「参考書ってこういうもの」を捨てて、今の目線で魅力的な本を――結城は参考書の仕事に前向きに
  • 帰り道、うるしが山崎に「編集者目指すのやめたんです」。山崎「へ?」――33冊目へ

32冊目は、参考書の「見た目」の今を学べる回であり、山崎さんの足もとが揺らぐ回でした。うるしのミーハーな目線が、業界の思いこみをほどいた。そして、何も知らなかった山崎さんは、これからどうするのか。33冊目が待ちきれません!

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