週刊少年マガジン掲載の漫画 盤上のオリオン最新話の感想、考察をお届け。
以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。
盤上のオリオン 第103話 最新話 あらすじ(ネタバレ注意)
前回までのあらすじ
佳澄碧と茅森月、三段リーグで死闘を繰り広げている。
茅森月の圧倒的な優勢だったかに思えたが、佳澄が形勢逆転。
辞めていった奨励会員たちからの激励を胸に、佳澄は心の中で力強く宣言する。
「私は残夢の上に立つ。誰も見たことのない地平線へ。すべてを捧げて追いかけてこい。」
前回の記事はこちら【盤上のオリオン第102話】
今回のあらすじ
佳澄の放った3二金が、局面を終わらせる妙手だった。
茅森の龍の利きをそらし、桂を跳ねれば詰み——夕飛が「碧らしい会心の一撃」と評するその一手を前に、
茅森はあと20秒という秒読みの中で、盤上ではなく佳澄碧へ向けて言葉を放つ。
「私があんたに勝つまで 勝ち続けて 佳澄碧さん」
佳澄「はい」。
そして——「参りました」。
佳澄碧14勝0敗。
将棋会館をあとにした茅森は、自動販売機でレモンティーを買い、一口飲む。
夕飛がそっとついてくる。
「ついて来んな」「変態!ストーカー!」と罵りながら歩く茅森。
しかしやがて——「ぐすっ 負け……ちゃった」
ホロポロと涙を流す茅森月。
「くやしいい くやしいよぉ」と泣きながら歩く夜道。
黄金の月が、その背中を照らす。
盤上のオリオン 第103話 X(旧Twitter)での反応
『盤上のオリオン』最高だなぁ。
— 木村聡太 (@Kimura_Gairon2) July 8, 2026
盤上のオリオン号泣
— 甲斐_せんだい☪🐾 (@kai_dog) July 7, 2026
盤上のオリオン、将棋というテーマと新川先生の言葉のセンスが噛み合いすぎてめちゃくちゃ良い。
— jackal@ (@jackal1905) July 7, 2026
盤上のオリオン 第103話 感想・考察・まとめ
3二金——「碧らしい妙手」の意味
今回の対局の幕を引いたのは、佳澄の3二金という一手だった。
この手を取ると龍の利きがそれて、桂を跳ねれば詰み。
勉三が「茅森の龍が死に体同然」と評し、夕飛が「盤全体を見た会心の一撃」と静かに語る。
盤全体を見た、という表現が重要だ。
102話で佳澄の手が「初めて止まった」ことを、おじさんは「深さに手を伸ばした瞬間」と書いた。
その深さで読み切った一手が、3二金だったわけだ。
ノータイムで速度の支配者として走り続けてきた佳澄碧が、最後の最後に「盤全体」を俯瞰して放った一撃。
速さと深さを兼ね備えたとき、棋士は本物になる。
佳澄碧はこの対局を通じて、また一段高みに上った。
「私があんたに勝つまで 勝ち続けて」——宣戦布告の美しさ
秒読みあと20秒。
普通ならパニックになるか、あるいは静かに詰みを受け入れるかのどちらかだ。
しかし茅森月はその20秒を、佳澄碧への言葉に使った。
「私があんたに勝つまで 勝ち続けて 佳澄碧さん」
これはただの負け惜しみではない。
茅森の心の中の言葉が添えられている。
「これは私の宣戦布告だ」と。
なんとも言えない胸の高まりを感じた。
負けを認め、しかし未来への闘志を宣言する——この二つを同時にやってのける茅森月の器の大きさよ。
「参りました」と告げるその口が、同時に「次は勝つ」という誓いを宿している。
投了と宣戦布告が同じ瞬間に起きる。
こんな「負け方」ができる棋士が、弱いわけがない。
さすが月ちゃん!
「ぐすっ、負けちゃった」——推しの涙に撃沈
さあ、ここからがおじさんの本番です。
将棋会館を出た茅森月。
自動販売機でレモンティーを買う。
レモンティー——かつて夕飛が敗北のたびに飲んでいた、あの飲み物だ。
茅森月がレモンティーを買う、というだけで、このシーンがどれだけ丁寧に設計されているかがわかる。
「ついて来んな」「変態!ストーカー!」と罵倒しながら歩く茅森。
夕飛は「はい変態ですストーカーです」と飄々と答えながらついてくる(笑)。
そしてその罵倒の中に、「ぐすっ」が紛れ込む。
「負け……ちゃった」
この「ちゃった」がたまらない。
「負けた」じゃない。「負けちゃった」だ。
「ちゃった」という語尾には、自分でも信じられない、どこかまだ夢を見ているような、
そんな呆然とした気持ちが滲んでいる。
攻撃至上主義、宣戦布告、悪鬼羅刹——そんなフレーズで語られてきた茅森月が、
夜道でぽろぽろと泣きながら「くやしいよぉ」と言う。
おじさん、やられました。完全にやられました。
強いキャラクターが泣く瞬間の破壊力というものが、これほどまでとは。
96話から積み上げてきた茅森月の強さと覚悟が、この「ぐすっ」一つで一気に「人間・茅森月」として着地する。
鳩サブレーをかじって「戦闘開始よ」と言っていたあの茅森月が、「くやしいよぉ」と泣いている。
おじさんはここで静かに本を閉じて、深呼吸してしまった。
夕飛の優しさ——「つかれたら電車のりましょうね」
この場面における二宮夕飛の立ち回りが、また絶妙だ。
「ついて来んな!!」と言われても、「帰り道同じ方向ですから」とついてくる。
「変態!ストーカー!」と罵られても、「はい変態ですストーカーです」と受け流す。
そして茅森が泣き始めても、何も言わない。
慰めない。励まさない。ただ、隣にいる。
泣いている人に何か言ってしまいたくなるのが人情だが、夕飛は何も言わない。
ただ「横浜まで歩きたい気分だったんです」と自然に隣を歩き続ける。
そして最後に一言だけ。
「つかれたら電車のりましょうね」
正しい言葉より、正しい距離感。
茅森の悲しみを解決しようとするのではなく、ただそこにいることを選ぶ。
悲しみにそっと寄り添う夕飛の優しさ。
レモンティーが繋ぐもの
茅森月が買ったレモンティー。
これは13話で夕飛が千葉に負けた夜、「敗北の味だ」と言いながら飲んでいた飲み物だ。
あのとき月は「その割には美味しそうに飲むじゃない」と突っ込み、
夕飛は「野暮で不粋ですね」「誰かが側にいるからかな」と独白した。
今回、その立場が完全に入れ替わっている。
負けた茅森がレモンティーを買い、夕飛がそっとついてくる。
13話の夕飛と茅森が、103話で茅森と夕飛になって繰り返される。
この対称性は偶然ではなく、作者が丁寧に設計した「繰り返しのドラマ」だ。
夕飛はそれを知っているから、こう書く。
「レモンティーは雪辱の味 鼻をすするしぐさ 黄金の月が 彼女のゆく道を照らす」
詩のような一文が、この夜道の美しさをそのまま言葉にしている。
「彼女は私だって」——佳澄の回想が明かす真実
この話のもう一つの重要な場面が、佳澄と夕飛の回想だ。
「ドラ猫は敵じゃないわ 夕飛が言ったのよ」と佳澄は言う。
「彼女は私だって」
前に夕飛が茅森月を佳澄碧に引き合わせた際に言った「彼女は君だよ碧」という言葉。
あれは単に「同じ立場の人間」という意味だけではなかった。
佳澄碧がかつて歩いた道を、茅森月は今歩いている。
だから佳澄は言う——「ドラ猫のフォローよろしく」「彼女を絶対辞めさせないで」「昔の私達がそうだったように」と。
これが決定的だ。
佳澄碧にとって茅森月は、強大な敵であると同時に、かつての自分の姿でもある。
だから面白い。
だから辞めさせたくない。
ライバルへの敬意と、先輩としての責任と、そして自分自身の過去への優しさ——その全てが、この一言に込まれている。
「その人の足音は影を追う 君は歩き出したばかりだ」
夕飛の最後の独白が、この話のすべてを締める。
「その人の足音は影を追う 君は歩き出したばかりだ」
茅森月は負けた。しかし「参りました」の瞬間から、すでに次の戦いが始まっている。
「私があんたに勝つまで勝ち続けて」という宣戦布告とともに、茅森月の新しい物語の第一歩が踏み出された。
「ぐすっ」と泣きながら横浜まで歩く夜道が、その第一歩そのものだ。
おじさんはこの夜道の場面を読みながら、なんだかとても温かい気持ちになった。
負けて泣いて、罵倒しながら歩いて、レモンティーを飲んで、隣に誰かがいる。
将棋の勝ち負けより、この夜道の方が、ずっと豊かだと思う。
Twitterに「号泣」「最高だなぁ」「言葉のセンスが噛み合いすぎてめちゃくちゃ良い」という声が集まっているのも、完全に頷ける。
この漫画はやっぱりすごい。
まとめ——負けた夜が、一番美しい
103話は、長く続いた佳澄碧vs茅森月の対局に決着がついた回だった。
しかし勝敗よりも、対局後の夜道の方が、この話の本体だったとおじさんは思う。
3二金の妙手、宣戦布告の投了、レモンティー、「ぐすっ」、「ついて来んな」、「つかれたら電車のりましょうね」。
これだけのものが詰まった一話が、休載を挟んで届けられた。
待たされた甲斐があった、と素直に思う。
茅森月というキャラクターをずっと好きでいてよかった。
強くて、口が悪くて、鳩サブレーをかじって、宣戦布告して、そして夜道でぽろぽろ泣く。
やっぱり茅森月が好きだ。
来週からの三段リーグがどうなるのか、茅森月がどんな将棋を指していくのか。
佳澄碧が14勝0敗のまま突き進むのか。
おじさんの目が離れる日は、当分来そうにありません。
来週が待ちきれません!!
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キャラクターや将棋用語をじっくり知りたい方は → 盤上のオリオン まとめ・一覧
これまでの対局の流れを振り返りたい方は → 過去の最新話一覧

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