【盤上のオリオン第107話】最新話 「棋士になって私を待ってて」――最終日前夜、ジャスミンの香りがする(ネタバレ注意)

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盤上のオリオン

週刊少年マガジン掲載の漫画 盤上のオリオン最新話の感想、考察をお届け。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

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盤上のオリオン 第107話 最新話 あらすじ(ネタバレ注意)

前回までのあらすじ

佳澄碧が初の女性棋士となる。

もう一人棋士になるのは!?

残り2戦、昇段の可能性があるのは二宮夕飛(2敗)・市川(2敗)・七尾(3敗)の三人。

第17戦は二宮対七尾、第18戦は市川対二宮という三すくみ

いよいよ始まる直接対決。

前回の記事はこちら【盤上のオリオン第106話】

今回のあらすじ

三段リーグ最終日の前日。

夕飛はサザンクロス将棋教室でバイトをし、夜はいつものバーphilipでも働いている。

常連客たちは「昇段がかかっているのになぜここにいるんだ!」と騒然とするが、

夕飛は「いつも通りがいいんです」と答え、対局の相手まで買って出る。

明鏡止水。泰然自若。

バイト終わりの帰り道、茅森月が隣を歩く。

夕飛は「眠れる森の美女」を口ずさみながらも、本音では「一人になるのが怖かった」と打ち明ける。

心模様はしけた海のように揺れている。

茅森月はそれを見透かし、「今の君は遠足前の子供のよう」と読む。

そしてジャスミン茶を手渡し、静かに告げる。

「棋士になって私を待ってて」

夕飛「はい」。

帰り道の空気にジャスミンの香りがする。

そして夕飛は、最終日へ向けて燃えるように宣言する。

「さあ来い 二人とも たたきつぶしてやる————」

来たる三段リーグ最終日——次号休載。

盤上のオリオン 第107話 X(旧Twitter)での反応

盤上のオリオン 第107話 感想・考察・まとめ

最終日前夜に、将棋教室とバー——「いつも通り」という覚悟

三段リーグ最終日の前夜である。

普通なら家で静かに過ごすか、緊張で眠れないかのどちらかだろう。

しかし二宮夕飛は、朝からサザンクロス将棋教室でバイトをし、夜はバーphilipでも働いていた。

将棋教室ではおじいさんが「ちょちょっと待った」を連発し、夕飛は「もう16回目ですよ」と穏やかにたしなめる。

店主の海老名楓は「昇段間際なのにこんなことしてていいの?大事な身体なのよ!!」とハラハラしっぱなし。

この日常の空気感が、すでにこの回のテーマを言い表している。

夜のバーではさらにカオスだ。

常連客が「なんでこんな所にいるんだよ!!ニノッチ!!」と絶叫し、小山田が昇段の話を口走りかけた瞬間——鈴木が股間を一撃、西本が後ろから首を手刀。

小山田は発言の途中で悶絶する(笑)。

そして三人はヒソヒソと「バカなんじゃないかな」「あーバカか」「バカなんですねかわいそうに」と結論を出す。

夕飛は「ヒソヒソ話は本人に聞こえないようにしてね」とさらりと返す。

この常連三人衆の「気遣いの暴力」がたまらなく笑えるのに、同時に夕飛の強さが滲み出る場面でもある。

「大事な対局前に下手っぴの相手させて調子崩れたりしないですか?」と心配されても、夕飛の答えは変わらない。

「大丈夫ですよ いつも通りがいいんです ずっと張り詰めていては疲れちゃいますから」

常連客が言う「明鏡止水 泰然自若」。

天才たちの虎の穴で棋士目前に迫っている奴は、俺たちとはスケールが違う——と。

でもおじさんは、この「いつも通り」が単なるクールさではないと思った。

バーphilipは夕飛が将棋を始めた原点であり、茅森月と出会った場所だ。

最終日の前夜をここで過ごすのは、偶然ではなく、夕飛なりの原点回帰なのだと感じる。

「一人になるのが怖かった」——しけた海のような心模様

しかし帰り道、夕飛は本音を打ち明ける。

「いつも通りなんてかっこいいこと言いましたけど」と前置きして——

「一人になるのが怖かったんです 一人でいると色々と考えすぎちゃって」

心の中では「負けるかもしれない」「なんとか勝たなきゃ」「来期はこんなに勝てないかも」と、しけた海のように揺れている。

外側は明鏡止水。内側はしけた海。

この落差が、夕飛というキャラクターの体温そのものだ。

23連敗を経験し、バーで過ごし、ゆっくりと這い上がってきた少年は、最終日の前夜でも「怖い」と言える。

その正直さが、かえって信頼できる。

Twitterで「将棋わからないけど、盤上のオリオンは良いな、将棋わからないけど」という反応が上がっていたが、これがすべてだと思う。

この漫画の本質は将棋の手順ではなく、揺れる人間の内側を描くことにある。

最終日前夜に「一人が怖かった」と言える夕飛の弱さと強さが、この作品の温度そのものだ。

「遠足前の子供のよう」——茅森月の読みの精度

常連客たちは「メンタルが名人クラス」と評する。

しかし茅森月は、少し違う目で夕飛を見ていた。

「今の君は遠足前の子供のよう 対局が待ちきれないって感じ 最終日が来るまで爆発するのを必死でおさえこんでるみたい」

「怖い」のではなく「待ちきれない」と読む。

「緊張している」のではなく「抑え込んでいる」と読む。

この読みの精度が、茅森月という棋士のものでもあり、夕飛を一番近くで見てきた人間のものでもある。

「遠足前の子供」という表現が実に茅森月らしい。

詩的でも哲学的でもなく、少し意地悪で、でも温かい。

これが茅森月の愛情表現だ。

木佐さんの言葉として語られる「棋士は月下の途がよく似合う」も印象深い。

月明かりの下を歩く道——最終日前夜の二人の帰り道そのものが、その言葉の映像化になっている。

そして茅森月は静かに告げる。

「君が私の側にいてくれた様に 私は君の側にいる 佳澄碧と私を待ってて」

「必ず 必ず 君たちのいる場所までたどり着いてみせるから」

「棋士になって私を待ってて」

夕飛「はい」。

茅森「よろしい はい」——とジャスミン茶を手渡す。

2話との完全な対称——ジャスミン茶が再び渡される

おじさんはここで、静かに本を置いて深呼吸した。

思い出してほしい。第2話だ。

将棋をやめると言った夕飛に、茅森月は言った。

「選ぶのは君だよ」

そして飲みかけのジャスミン茶を渡し、「受け売りだけどね」と付け加えた。

あのとき夕飛はこう書き留めた。

「アルバイトの帰り道 僕の歩く道はジャスミンの香りがする」

107話、同じ帰り道で、今度も茅森月がジャスミン茶を渡す。

そして夕飛は再び言う——「アルバイトの帰り道 ジャスミンの香りがする」と。

2話で渡されたジャスミン茶が、107話でもう一度渡される。

最初は夕飛を将棋に引き戻すために渡した茶が、今度は夕飛を最終日へと送り出すために渡される。

同じ香りが、まったく違う意味を帯びて繰り返される。

これがこの漫画の恐ろしい計算だ。

そして「棋士になって私を待ってて」という言葉も完璧だ。

かつて夕飛に「プロ棋士になりませんか」と言われ、「棋士なんて大ッ嫌い」と答えた茅森月が、今度は自分から「棋士になって」と言う。

言葉の主語と述語が、まるごと入れ替わっている。

この二人の関係がどれだけ深まったかが、たった一言でわかる。

「佳澄碧と私を待ってて」——佳澄碧が先に棋士になった今、茅森月は自分の到達点を、夕飛の側に置く。

ゴールに立った佳澄と、まだ途中の月と、最終日を迎える夕飛。

三人の時間が、この一言で一本の線につながる。

「なんか壬生さんに似てきましたね」——過去イチのキズ

ジャスミン茶を渡したあと、夕飛が「優しいですね ガラにもなく 毒入ってます?」と茶化す。

茅森は「べべべ別に優しくないわよ!!」と真っ赤になって否定する。

そこへ夕飛が放った一言。

「なんか壬生さんに似てきましたね」

茅森「過去イチキズついたんだけど」。

この「過去イチ」という反応の速さと正直さが茅森月らしくて最高だ(笑)。

壬生に似てると言われるのが、褒め言葉でも悪口でもなく「キズつく」という絶妙な位置づけ。

でも確かに——口が悪くて愛情表現が不器用で、でも誰よりも気にかけている、というのは壬生と茅森月の共通点だ。

師匠の里村一門、全員に育てられた茅森月が、いつのまにか壬生にも似てきた。

人は知らず知らず、関わった人に似ていく。

この一瞬のギャグが、二人の距離の近さを証明している。

「さあ来い たたきつぶしてやる」——大トリの静かな炎

帰り道の最後、夕飛が静かに、しかし燃えるように宣言する。

「最終日 上位者同士の対局 この二戦で三人の中の一人 もう一人の棋士が生まれる さあ来い 荒れる風景 慣れている さあ来い 二人とも たたきつぶしてやる————」

「二人とも」——七尾と市川への宣言だ。

23連敗し、バーで過ごし、原点に戻り、茅森月からジャスミン茶を受け取った夕飛が、最終日に向けて静かに燃える。

前回、清太郎が言っていた。

「お前はいつも遅いんだよ 親友 大トリはまかせたぜ夕飛」

佳澄が「ゴール」に立った夜、夕飛は「スタートライン」に立とうとしている。

ゴールがスタートラインへ——この作品のテーマが、ここでも繰り返される。

「荒れる風景 慣れている」という言葉にも、夕飛の履歴が凝縮されている。

連敗も、迷いも、揺れも、全部「荒れる風景」として通過してきた男の言葉だ。

まとめ——対局ゼロの前夜が、いちばん重い

107話は対局ゼロの、ただの「前夜」を描いた回だった。

しかしこれほど密度の高い「前夜」が、かつてあっただろうか。

将棋教室の日常、バーでの「いつも通り」、帰り道の本音、茅森月の読み、ジャスミン茶の再演、「さあ来い」の宣言——

すべてが最終日という一点に向かって、静かに収束している。

「将棋わからないけど盤上のオリオンは良いな」というツイートが今回も刺さった。

将棋がわからなくても、この帰り道の場面は届く。

人が何かに向かう前夜の、揺れと覚悟と香りが、ちゃんと届く。

それがこの漫画の強さだ。

次号は休載。

その空白の一週間が、かえって最終日への助走になる。

おじさんは今から手が震えています。

再来週が、待ちきれません!!

もっと読む

キャラクターや将棋用語をじっくり知りたい方は → 盤上のオリオン まとめ・一覧

これまでの対局の流れを振り返りたい方は → 過去の最新話一覧

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