【ガクサン 31話ネタバレ】31冊目|福山の過去、うるしの気持ち。「自力で積み重ねてきたもの」がうるしの答え――福山がついに山崎へ電話「勉強会の話を聞こうかと」、そして山崎の「このままで俺はいいのか?」

【ガクサン 31話ネタバレ】31冊目|福山の過去、うるしの気持ち。「自力で積み重ねてきたもの」がうるしの答え――福山がついに山崎へ電話「勉強会の話を聞こうかと」、そして山崎の「このままで俺はいいのか?」 ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

31冊目は「福山の過去、うるしの気持ち」。30冊目のラスト、福山の過去を聞いたうるしの「ありがとうございますっ」の続きです。うるしの言葉が福山を動かし、ずっと断ってきたしをり会に、福山がついに一歩近づきます。そして最後は、山崎さんの心にも波が立つ――4巻の空気ががらりと変わる回です。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

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ガクサン 31冊目「福山の過去、うるしの気持ち」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

ごちゃごちゃノートへの答えは、ノートではなく参考書を「軸足の一冊」にすること。家庭教師時代の教え子だった七海は反発して走り去り、福山は七海を「別世界の人間だ」と言いました。

うるしに誘われた屋上のコーヒーで、福山は自分の過去を語ります。北関東の田舎の町営住宅で育った、ぼんやりした冴えない子ども。研修旅行で広い世界を知り、参考書で一橋大学へ。それでも埋まらなかった文化資本の差。せめて胸を張れた編集者の職も、もう終わった話だ――。話しすぎた、と立ち去ろうとする福山に、うるしが言ったのは、ありがとうございますっ、のひと言でした。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 30話ネタバレ】30冊目|うるしとノートのとり方②。「頼れ」の答えは参考書――七海は家庭教師時代の教え子、屋上で語られた福山の過去「どこにでも行けるんじゃないか?」

「高度な嫌味か何か か?」

お礼を言われた福山は、きょとん。高度な嫌味か何かか、俺には理解できん、と首をかしげます。あわてて首をふるうるし。

話してくれてありがとうございました、なんだか嬉しかったんです、つらい話だったのにこんなことを言うのも変ですけど、とうるし。福山の返事は、まったくだな、のひと言でした。

でも、うるしの胸の中には、ふしぎな気持ちが残っていました。さっきの福山さんは、なんだか小さく見えた。隣にいるのに、もっと近づきたいと思った――。

うるしの答え

もういいか、行くぞ、と背を向ける福山を、うるしは呼び止めます。

七海さんが福山さんの本質をわかっていないとしても。福山さんがもともと持っているものが少なかったとしても。福山さんが七海さんにとって魅力的に見えるのは、自力でたくさんのものを手に入れてきたからじゃないですか。

そしてうるしは、26冊目で福山に言われた言葉をそのまま返します。ここでちゃんと積み重ねてきたんだから、何もないわけがない――このあいだ、私をそう叱ったじゃないですか、と。

どこに生まれてどう育ったかだけじゃない。参考書に救われて、それを仕事にして。福山さんが自力で積み重ねてきたもの全部が、きっと大切なんです。出会ったときから素敵だと思っていましたよ、七海さんもきっとそれで……と言いかけたところで、うるしは、なんだかすごく恥ずかしいことを言っているのでは、と真っ赤になります。

「ご相談係らしくなってきたじゃないか」

福山は、なるほどな、と小さく笑いました。そういう見方もあるのかもな、納得できなくはない、と。

さらに、福山はうるしを認める一言を口にします(このセリフは感想で)。

照れ笑いでごまかして、じゃあ行きましょうか!と先に歩き出すうるし。でも、缶を握りしめた手の中で心臓はどきどき。何、今の顔……びっくりした、人間みたいな顔もできるんだ、と(失礼)。

「積み重ねてきたもの」

その夜。福山は自分の部屋に帰ります。ドアを開けると、壁一面の本棚と、床から積みあがった参考書の山。

椅子に深く腰かけた福山は、積み重ねてきたもの、かとつぶやきました。

山崎の打ち上げ

同じころ、山崎さんは居酒屋にいました。担当した新刊『古典読解のヒント』の打ち上げです(作中の架空の本)。

店頭に並んだのを見て感極まった、と山崎さん。著者は、表紙の絵の色を変えてよかった、店頭で目立つ、と大喜び。デザイナーは、功労者は中面のイラストもたくさん描き下ろしてくれたヤイダさんだ、とイラストレーターをたたえます。

古典の人物イラストは、時代は合っているか、身分に応じた服装か、形は正しいか、と、ひとつ描くにも間違えられない。今回のためにすごく勉強した、とヤイダさん。

山崎さんの説明では、こういう専門的な図版は、ふだんは教育系に特化したイラストレーターのいる会社に頼むことが多いのだそう。でも今回は、装丁と中面の図版のテイストをそろえたくて、ヤイダさんに無理をお願いした。おかげで、手元で何度もながめたくなる本になった、と。

話題はヤイダさんの個展へ。今週末から始まる個展で、今回の装画も展示するのだとか。ヤイダさんは、よかったらぜひ、と招待状を配ります。

福山からの電話

そこへ、山崎さんのスマホが鳴ります。画面には「福山」の文字。店の外に出て電話に出ると、福山は、勉強会の話を聞こうかと、と切り出しました。

勉強会って、しをり会のことだよね!? 編集者に戻ろうとか、そういうこと!? と山崎さんは大あわて。福山は、そういう話ではない、お前が忙しくないときにまた聞く、と電話を切ろうとします。

なんで急に、ってとこだけでも教えろよ、と食い下がる山崎さん。少しだまってから、福山は答えました。編集者をしていたことも、参考書が好きなことも、もう全部意味がないと思っていた。でも、何もないわけじゃないのかもしれない――。

そして、癪だがあいつのおかげだな。行くかどうかは未定だが、どういうつもりで呼んでいるのか聞いてやらないこともない。福山らしい言い方で、電話は切れました。

山崎の「このままで俺はいいのか?」

残された山崎さんは考えます。よくわからないけれど、福山はうるしちゃんの気持ちに納得できた、ということなのかな……って。あれ、これ、うるしちゃんと福山のフラグ?

福山が前向きになれるのは、同期としては嬉しい。頭に浮かんだのは、並んで歩いていく福山とうるしの後ろ姿を、ひとりで見送る自分。

足もとに落ちたのは、ヤイダさんの個展の招待状でした。山崎さんは胸の中でつぶやきます(このセリフは感想で)。

スマホを取り出した山崎さんが、うるしに送ったメッセージは、うるしちゃん、今週の日曜日あいてる? 32冊目へ続きます。

【参考書ができるまで・番外編】イラストや図版は誰が描く?

31冊目にはハウツーの相談はありませんでしたが、山崎さんの打ち上げの場面で、参考書の「絵」の作られ方が紹介されました。13冊目の「参考書ができるまで」の番外編として、作中の話と研究をまとめます。

1. 専門の図版は「専門の会社」へ

作中の山崎さんいわく、専門的な図版は、教育系に特化したイラストレーターのいる会社に頼むことが多い。作中のイメージ図には、地図専門のチーム、理科実験のイラストが描けるチーム(正しい水上置換!)が出てきます。

地図の国境や地名、実験器具の向き、古典の装束。参考書の絵は、かわいいかどうかより、正しいかどうかが先に問われます。13冊目の「恐怖!消えない赤字」は、文章だけでなく絵にもあてはまるわけです。

2. 装丁と中面の「統一感」

今回の『古典読解のヒント』は、表紙(装画)と中面の図版を同じイラストレーターにそろえた本。山崎さんは、手元で何度もながめたいと思ってもらえる本になった、と言っています。

8冊目の福山の「参考書との付き合い方は恋愛と同じ」、30冊目の「愛着」。何度も開きたくなる見た目は、それだけで勉強を続ける力になります。

3. 研究で見る「役に立つ絵」と「飾りの絵」

文章に絵をそえると学びやすくなるのか。研究をまとめたレビューでは、文章の内容を表したり、関係を整理したり、わかりにくい所を説明したりする絵は、理解や記憶を大きく助けると報告されています。一方で、内容と関係のない「飾り」の絵には、ほとんど効果がないとされています。(Carney & Levin, 2002)

さらに、内容と関係のないおもしろい絵や小話を足すと、かえって大事なところの理解が下がることもあります(「誘惑的詳細」効果)。(Harp & Mayer, 1998)

古典の人物の服装や身分がひと目でわかる絵は、まさに「内容を表す絵」。時代考証にこだわるのは、絵そのものが教材だからです。7冊目で紹介した、古文常識を絵で覚えるやり方ともつながります。

ぱっと見まとめ:参考書の絵の見方

番号名前どんな絵か使い方
1表す絵本文の内容をそのまま絵にしたもの(装束・実験器具など)本文を読んだあと、絵だけで説明できるか試す
2整理する絵地図・図表・流れ図など書き写さず、そのページに書きこんで使う
3説明する絵わかりにくい仕組みをたとえで見せるものわからなかった所は絵から先に見る
4飾りの絵内容と直接関係のないキャラクターなど楽しむのはOK。覚える対象にはしない

参考書の絵チェックリスト(31冊目から)

  • [ ] 絵を見て、本文の内容を自分の言葉で説明できた
  • [ ] 図表や地図は、30冊目の「軸足の一冊」に書きこんで使った
  • [ ] 飾りの絵と、覚えるべき絵を分けて見た
  • [ ] 見た目が好きな参考書を、何度も開いている

参考文献

  • Carney, R. N., & Levin, J. R. (2002). Pictorial illustrations still improve students’ learning from text. Educational Psychology Review, 14(1), 5–26.
  • Harp, S. F., & Mayer, R. E. (1998). How seductive details do their damage: A theory of cognitive interest in science learning. Journal of Educational Psychology, 90(3), 414–434.

ガクサン 31冊目 感想・考察

【今回の一番】「少なくとも 今 私には素敵に見えます」

31冊目でいちばん心に残ったのは、屋上でうるしが笑顔で言ったこの言葉でした。

「少なくとも 今 私には素敵に見えます」

30冊目の福山は、自分を「これまでいた世界を出るためだけに勉強した人間」と言い、持っているものの少なさばかりを数えていました。うるしはそれを否定しません。持っているものが少なかったとしても、と、いったん全部受けとめたうえで、だからこそ、自力で手に入れてきたものが素敵なんだと、ひっくり返してみせたのです。

そして、その根拠に使ったのが、26冊目で福山がうるしに言った「ここで積み重ねてきたことだ」「何もないわけがない」。自分には何もない、と泣いたうるしを救った言葉を、今度はうるしが福山に返す。言葉が持ち主のところに帰ってくるという、ガクサンらしい美しい形でした。

「ご相談係らしくなってきたじゃないか」

福山が笑って言ったこの一言も、外せません。

「茅野もご相談係らしくなってきたじゃないか」

27冊目で、うるしは「編集者」ではなく「ご相談係」としてがんばりたい、と決めました。相談係の仕事は、相手の悩みをいったん受けとめて、ちがう見方を示すこと。うるしが屋上でしたのは、まさに福山という相談者への「回答」です。

1冊目で「大人になれ」と中学生を突き放していた福山が、そういう見方もあるのかもな、と人の意見を受け入れる。15冊目の「いい返答だった」に続いて、福山がうるしを認めた二度目の場面と言っていいと思います。

「積み重ねてきたもの、か」――福山の部屋

夜の福山の部屋は、セリフがほとんどないのに、とても雄弁なページでした。壁一面の本棚と、床から積みあがった参考書。2冊目で言われた「近年の参考書はすべて読破」の正体が、そのまま絵になっています。

町営住宅で、塾にも行けなかった少年が、一冊ずつ積み上げてきたもの。福山にとって参考書の山は、「持っていなかった側」から積み上げてきた証拠そのものです。

30冊目で「それも終わった話だ」と言った福山が、この部屋で「積み重ねてきたもの」をかみしめる。うるしの言葉が、ちゃんと届いていたことがわかります。

ついに「しをり会」へ一歩

ここが31冊目の最大の転換点です。福山が自分から山崎さんに電話して、勉強会の話を聞こうか、と言った。

9冊目で、しをり会の目的のひとつは「福山を呼ぶこと」と明かされました。11冊目のうるしの壁の目標①は「福山さんを研究会につれてくる!!」。21冊目では谷津さんにも「しをり会に来なよ」と誘われ、福山は「わかりません」と答えていました。

福山はその理由を、こう語ります。

「…茅野に気付かされた」

編集者をしていたことも、参考書が好きなことも、全部意味がないと思っていた。17冊目で編集部を外され、15冊目で「編集外された俺」と言っていた福山にとって、過去は傷でしかなかったはずです。それを「何もないわけじゃない」と思えた。目標①は、うるしが「連れてきた」のではなく、うるしの言葉で福山が自分から動いた形で、達成に近づきました。

癪だがあいつのおかげだ、と、素直に言えないところも福山らしいですね。

山崎さんの「このままで俺はいいのか?」

そして、ラスト。31冊目は、まさかの山崎さん回でもありました。

「…このままで 俺はいいのか?」

この言葉には、ふたつの読み方がありそうです。

ひとつは、うるしへの気持ち。うるしと福山の「フラグ」に気づいた直後に、並んで歩くふたりの後ろ姿を想像し、うるしに日曜日の予定を聞く。16冊目で山崎さんは、福山を「漫画の主人公みたい」「勝ち目がない」と苦笑していました。あのときから、山崎さんの中には何かがあったのかもしれません。

もうひとつは、仕事への気持ち。24冊目で山崎さんは、心の中で「どこか仕事に夢中になりきれない俺」と打ち明けていました。今回の打ち上げでも、表紙の色はデザイナーのセンス、功労者はヤイダさん、と、自分の手柄を口にしません。その横で、福山はまた参考書の世界に向き直ろうとしている。同期として嬉しい、でも、自分はこのままでいいのか――。

26冊目では、美術展にもひとりで行き、女友達はみんな結婚した、という山崎さんの一人暮らしが描かれていました。ヤイダさんの個展の招待状は、偶然ではなさそうです。うるしを誘う日曜日は、たぶん個展。おじさんは、恋と仕事、両方の意味がこもった「このままで」だと読みました。

うるしの気持ちはどこへ

忘れてはいけないのが、タイトルの「うるしの気持ち」。

隣にいるのにもっと近づきたい。人間みたいな顔もできるんだ、と真っ赤になる。29冊目で七海と福山の距離にもやもやし、30冊目で教え子と聞いて「ほっ」としたうるし。31冊目で、その気持ちはかなりはっきりしてきました。

ただ、うるし本人はまだ「好き」とは言っていません。27冊目で見つけた答えは「何かに夢中な人が好き」。福山への気持ちが、尊敬なのか、それ以上なのか。そこへ山崎さんからの日曜日のお誘い。ガクサンに、はっきりした三角関係の気配が出てきたのは、31冊目が初めてです。

まとめ

  • うるしの「ありがとうございますっ」に、福山は「高度な嫌味か何かか?」
  • うるし「福山さんが自力で積み重ねてきたもの全部がきっと大切」――26冊目の福山の言葉をそのまま返す
  • 福山は笑って「茅野もご相談係らしくなってきたじゃないか」「そういう見方もあるのかもな」
  • 福山の笑顔にうるしはどきどき。「隣にいるのにもっと近づきたい」
  • 夜、本に埋もれた部屋で福山「積み重ねてきたもの、か」
  • 山崎は担当書『古典読解のヒント』(架空)の打ち上げ。専門的な図版は教育系のイラスト会社に頼むことが多い
  • 福山から山崎へ電話「勉強会の話を聞こうかと」。「茅野に気付かされた」「癪だがあいつのおかげだな」
  • 山崎「うるしちゃんと福山のフラグ…??」「このままで俺はいいのか?」→うるしに「今週の日曜日あいてる?」――32冊目へ

31冊目は、うるしの言葉で福山がしをり会に一歩近づき、山崎さんの心も動き出した回でした。30冊目で過去を語った福山が、31冊目で未来のほうを向いた。日曜日、山崎さんとうるしはどこへ行くのか。32冊目が待ちきれません!

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