【盤上のオリオン第97話】最新話 深呼吸が盤面を開く―夕飛の声が届く場所(ネタバレ注意)

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盤上のオリオン

週刊少年マガジン掲載の漫画 盤上のオリオン最新話の感想、考察をお届け。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

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盤上のオリオン 第97話 最新話 あらすじ(ネタバレ注意)

前回までのあらすじ

佳澄碧と茅森涼夏、ついに本格的な激突が始ま。

そして茅森の手元には、鳩サブレー。

前回の感想はこちら【盤上のオリオン第96話】

今回の展開

三段リーグ、全勝中の佳澄碧と対峙する茅森月。

押しつぶされそうなプレッシャーの中、茅森は歩の突き捨てから玉頭攻めを仕掛ける。

佳澄も負けじと歩手裏剣で応戦し、盤面は一気に激化。

窮地に立たされた茅森の脳裏に、夕飛の言葉が蘇る。

ゆっくり吸って吐いて。

その声に導かれ、茅森は俯瞰の視点を取り戻す。

そして金を逃がした佳澄に対し、茅森の思考が——「よし届いた」

盤上のオリオン 第97話 X(旧Twitter)での反応

盤上のオリオン 第97話 感想・考察・まとめ

「玉頭攻め」と「歩手裏剣」——将棋用語ミニ講座

今回は将棋用語が二つ飛び出したので、おじさんが簡単に調べたかぎりで解説しておきます。

難しそうに見えるけど、意味を知るとめちゃくちゃドラマチックなんですよこれが。

玉頭攻め(ぎょくとうぜめ)とは、相手の玉将の真上、つまり「頭」に向かって歩などの駒を叩きつけていく攻め方のこと。

将棋では玉の守りが薄い「頭」を狙うのは非常に効果的で、心理的なプレッシャーも大きい。

茅森が8五歩と叩いたのはまさにこれ。

「あなたの王様の頭に、私は迷わず歩を打ちます」という宣言だ。

勉三が「巧い!!」と思わず声を上げたのも頷ける。

そして歩手裏剣(ふしゅりけん)

これは作中で佳澄が「必殺」と二度放った一手、1八歩、5七歩のこと。

将棋には「歩は将棋の花」という言葉があるほど、たった一枚の歩が局面を一変させることがある。

手裏剣のように、一見目立たない小さな一手が突然急所に飛んでくる——それが歩手裏剣だ。

忍者が懐から手裏剣を取り出すがごとく、佳澄はニヤリと笑いながら歩を放った。

茅森の「ウゲ」という反応が全てを物語っている(笑)。

「全面戦争」と口の悪い二人

今回の対局を外から見ていた奨励会員が「さながら全面戦争だ」と評した。

その表現、正確だと思う。

これは将棋の対局であると同時に、二人の女の魂のぶつかり合いだ。

そして二人の口の悪さよ。

……おじさん、「イボサイ」という言葉を初めて知りましたよ。

方言なのか造語なのか、なんにせよ強烈な悪口のオーラがある(笑)。

「鶏糞」に至っては、完全に罵倒の新境地だ。

盤上の戦いが激しいほど、言葉もまた鋭くなる。

これはある意味、二人が本気だということの証明でもある。

本気じゃない相手には、人はこんなに言葉を尖らせない。

シェイクスピアは「言葉は剣よりも鋭い」と言ったが、この二人の場合は剣と言葉が同時に飛んでくる。

盤面の駒と口撃が同時進行する将棋漫画、そうそうないぞ(笑)。

夕飛の声——「呼吸」というコーチング

今回の白眉は、間違いなく夕飛の回想シーンだ。

窮地に立たされた茅森の脳裏に蘇る、将棋サロンでの夕飛の言葉。

「ゆっくり吸って吐いて 脳に酸素を送るんだ」

「まだ絶望する局面ではないと」

これは単なる「落ち着け」というアドバイスではない。

夕飛が茅森に伝えたのは、俯瞰するための「技術」だ。

人は緊張すると視野が狭くなる。これは医学的にも証明されていることで、ストレスホルモンが分泌されると文字通り視野が狭まる。

将棋の盤面で言えば、金を取られそうだという恐怖に囚われて、全体の形勢が見えなくなる。

夕飛はそれを知っていた。だから「呼吸」を教えた。

呼吸は、最も古くて最も確かなリセットボタンだ。

ヨガでも、武道でも、スポーツ心理学でも、「呼吸を整える」ことは集中状態に入るための基本中の基本として位置づけられている。

夕飛がそれを「コーチング」として茅森に伝えていたという事実に、おじさんはじんわりと感動してしまった。

夕飛は今この場にいない。

でも夕飛の声は、茅森の内側に生きている。

師匠から弟子へと受け継がれるものの本質は、技術よりもこういう「思考の習慣」なんじゃないかと思う。

「よし届いた」——この三文字の重さ

今回のラスト、茅森の内心に浮かんだ言葉。

「よし届いた」

たった五文字。でもこの五文字に、この話の全てが凝縮されている。

何が届いたのか。

夕飛の言葉が、届いた。

俯瞰の視点が、届いた。

覚悟が、盤面に届いた。

そして茅森自身の将棋が、佳澄碧という高みに届いた。

「届く」という言葉は美しい。

距離があるから届く。遠くにいるからこそ、届いたときの喜びがある。

茅森はずっと誰かの「後ろ姿」を追いかけてきた。

その背中に、ようやく手が届きそうになっている。

詩人のリルケは「あなたが感じるすべての困難は、あなたの内部でまだ解決されていないものがある証拠だ」という言葉を残した。

佳澄という困難に正面から向き合い、夕飛の声を内側で解決策として活かした茅森は、困難を超えた先の自分に近づいている。

佳澄の「だが燃える」——ライバルの本音

見逃せないのが、佳澄の内心の呟きだ。

夕飛が「めんどくさい奴を作り上げた」と内心でぼやきながらも、「だが燃える」とこぼす。

これがたまらない。

本当に嫌いな相手には「燃える」とは思わない。

強くて、面倒で、厄介で、でも——だからこそ燃える。

佳澄は誰よりも本音に正直な女だ。

強い相手と戦えることへの喜びを、口では悪口で包みながらも、心の中では隠せていない。

これこそが「運命のライバル」の本質だと思う。

お互いがお互いを引き上げる関係。

佳澄にとって茅森は、今や「厄介な敵」であり「燃える存在」であり、そして——きっとこれから——将棋の同志になっていくのだろう。

まとめ——盤面に宿る、二人の覚悟

97話は「激突の中盤」を描いた、密度の高い一話だった。

玉頭攻め、歩手裏剣、金の逃げ——将棋の技術描写と、内面の心理描写が見事に絡み合う。

そして夕飛の声が、遠い将棋サロンから三段リーグの盤面まで、確かに届いた。

将棋は盤の上の戦争だが、本当の戦いは棋士の内側で起きている。

佳澄は燃え、茅森は届く。

次回、この二人の対局がどんな結末を迎えるのか——おじさんはもう居ても立っても居られません。

来週が待ちきれません。

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