【弱虫ペダル】六溝山レース前編|巻島が筑士波大で参戦!大学シリーズ最終戦と「東堂と駄話するためだ」(SPARE BIKE大学編)

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まとめ

秋の福島県で開催される六溝山(ろくみぞさん)レース。台風の影響で次戦が中止となり、急きょ大学シリーズの最終戦になったこのレースに、赤い筑士波大学のジャージを着た巻島裕介が現れます。

東堂と巻島が同じチームで走る――その事実に、明早大も洋南大も騒然。福富・新開・石垣・盾崎の明早大、金城・荒北の洋南大、そして東堂・巻島・田所・糸川の筑士波大。かつてのインターハイの面々が、大学のジャージで再び同じレースに揃いました。

六溝山レースは前編・中編・後編の3部作でお届けします。この前編では、レース序盤の流れを前半でまとめ、後半でこのおじさんなりの感想・考察を書いていきます。

該当話数はspare.157〜160(六溝山レース1〜4)を参照しています。中編はspare.161〜166、後編はspare.167〜です。


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新生筑士波大、福島へ

秋の福島県南部・河白市。レース会場に到着した筑士波大のメンバーの中で、糸川修作は落ち着きません。

東堂が連れてきた「巻島さん」。服のセンスはすごい、スソは長すぎる、いつも何か傾いている、髪はみどりで長い、そして何より顔がコワい。

「オレをもってしても物おじる‼」

本人は「フツウに見てるだけ」。車中ではアイマスクと枕を装備し、千葉の鴨川で録った波の音をループで聴きながら爆睡していた巻島に、田所は「運転への感謝は特にないんだな」とツッコみます。

そこで東堂から重大なニュースが。台風で次の東海ロードレースのコースが崩落し、六溝山レースが今シーズンの大学シリーズ最終戦になったのです。総合ポイント争いをする洋南や明早にとっては、ここが天王山。


明早大に走る衝撃「名前は巻島裕介だ」

明早大は、福富・新開・石垣の1年生に加え、山のセカンドエース・仮名森を連れてきていました。

エースの盾崎は、筑波山レースで自分と10秒差の2位だった東堂を警戒。さらに出走リストの最終更新で、筑士波大に「大学シリーズ初参戦」の選手が一人増えていることに気づきます。

「名前は巻島裕介だ」

「巻島…てあの総北のクライマーや!!」と驚く石垣。「どういう魔法使ったかは知らないけど」と笑う新開。そして福富は一言。

「東堂!! おもしろいことをする!!」

一方の巻島は、明早が本気で勝ちに来ていると聞いても動じません。

「セカンドでもサードでも止めてやるショ 山の上までオレが連れてく 行こうぜ尽八 頂点獲るショ!!」


洋南のスタート――荒北、無念

洋南大の荒北は、東海ロード中止の知らせに大荒れです。静岡の地元レースで、練習でいつも使う道、早起きしなくていい、自転車でスタートまで行ける――「理由が少しかたよってる気もするが」と金城。

さらに気の毒なのが待宮。練習中の落車で擦過傷を負い、「次は最終戦・地元必勝」と六溝山を見送っていたのに、その地元レースが中止に。「ワシの分もがんばれよ」と見送ってくれた待宮を思い、荒北は「あいつの分もがんばろう」と誓います(金城いわく「空に旅立った仲間みたいに言うな」)。

そして金城が明かします。このレースに懐かしいヤツが走る、と。

「巻島裕介がな」

荒北の記憶の中の巻島は、「とっつきにくい」「髪の長い」「ダンシングがキモチ悪くて速いヤツ」。スタートラインで見つけた巻島は――

「ジャージは黒じゃねェ 赤だ!! そんでもってトナリにゃ 東堂立ってる‼」

「あいつら同じチームで走んのかヨ!!」


糸川修作、「逃げ」に乗る

号砲とともに、大学シリーズ最終戦がスタート。

東堂と巻島と田所が名前を呼び合う中、「オレの名前も呼んでくれー‼」と叫ぶ修作。そんな修作に東堂が託したのは、レース序盤にできる小集団「逃げ」に乗る役目でした。

チームメイトが「逃げ」に入っていれば、残りのメンバーは追わずに集団で足を温存できる――そんなロードレースの不文律を早口でまくし立てる東堂に、修作は「全然オレの話聞いてないじゃんか尽八ー‼」と怒りながら飛び出していきます。

実はこれ、東堂の作戦でした。

「ヤツは気の回るタイプだ 普通に送り出しても途中でいろいろ考えてしまう」「ひとつのことに集中させたのだよ‼」

幼馴染の性格を知り尽くした東堂の狙いどおり、修作は単独で「逃げ」に追いつきます。そこにいたのは洋南の荒北、明早の石垣、ほか数名。「ズングリくんじゃナァイ!!」と迎える荒北に、修作は「靖友‼もっと速度上げよう 尽八の集団を引き離そう‼」。

ちなみに巻島は修作を「星園」と呼び、東堂に「一文字も合ってないぞ?」と訂正されています。


「チャンスなんていつもそうじゃナァイ!!」

「逃げ」と集団の差は1分半。荒北は冷静に分析します。こっちは8人、集団は130人。1分半は射程圏内で、集団は上手にコントロールしている。

「オレ今尽八の役に立っちゃってるのか!?」

東堂とケンカ中のつもりの修作は、自分が逃げるほど東堂の足を温存させていると知り愕然。「確率悪くないか!?」と聞く修作に、荒北が返します。

「確率悪い? 『チャンス』なんていつもそうじゃナァイ!!」


仮名森の挑発と、「東堂と駄話するためだ」

集団では、金城がようやく巻島をつかまえて事情を問いただします。「東堂と山で出会った‼ そこで仲間になれっつわれたショ!!」という説明に、「勇者と冒険の旅か」と金城。

そこへ下がってきたのが、明早のセカンドエース・仮名森。東堂に、周回コースにある800mのパンチの効いた丘での「前哨戦」を持ちかけます。

「足を使いたくなきゃわざと負けてもいいぜ?」と挑発する仮名森に、割って入ったのは巻島でした。

「おいコラ 東堂は今オレと喋っていたんだが?」

「つか『ショ』って何だ?」「何だその髪」と煽る仮名森に、巻島は宣言します。

「オレはイギリスからわざわざ2つのことをやりに来た ひとつは日本のレースで走ること もうひとつは 東堂と駄話するためだ!!」


感想・考察

「東堂と駄話するためだ」は、1年越しのアンサーだった

今回、このおじさんが一番震えたのは、やっぱり最後の巻島のセリフです。

東堂尽八と巻島裕介の“別れ”の記事で紹介したとおり、高校3年の夏、渡英を告げに来た巻島に、東堂はこう言っていました。

「一番楽しいのは 楽しい時間をつくりあげるのは とるに足らない 駄話だ!!」

「3分で終わる」と用件だけ済ませようとした巻島を、東堂は金魚すくいと花火で引き留めた。あのとき巻島は、駄話の大切さを東堂から教わっていたんですよね。

そして1年後。巻島は、その「駄話」をするためにイギリスから来たと、明早のセカンドエースの前で言い切った。

仮名森にとっては「何訳わかんねーこと」。でも東堂にとっては、これ以上ない言葉だったはずです。「巻ちゃん‼」という東堂の叫びに、全部詰まっていると思います。

石垣光太郎の「ワクワクしとる」

明早側の反応で好きなのは、石垣です。

巻島の名前を聞いて、「日本のレースを走るんか…あの東堂と共に!!」「早よう見とうてワクワクしとる」と、つい本音が漏れてしまう。そしてすぐに「レース前やぞ それに敵や 落ちつけ光太郎」と自分に言い聞かせる。

京都伏見の主将として、インターハイで総北や箱根学園と戦った石垣だからこそ、「巻島と東堂が同じチーム」という事実の重さがわかるんですよね。敵なのにワクワクしてしまう――ロードレースを愛する人間の、正直な反応だと思います。

修作の「逃げ」と、東堂の人を見る目

レース序盤の主役は、間違いなく糸川修作でした。

東堂が修作に早口で作戦をまくし立てたのは、わざと「話半分に聞かせる」ため。気の回る修作に細かい戦略を説明すると、考えすぎて勢いが落ちる。だから「前に追いつけ」というひとつのことだけに集中させた。

ここに、東堂の人を見る目がよく表れています。中学からの付き合いの修作だからこそ使える作戦ですし、同時にこれは修作への信頼でもある。「ヤツのまっすぐさはオレが一番心得ているよ‼」という言葉が、それを物語っています。

巻島とも田所とも違う、修作だけの役割。新生筑士波大は、チームとしてちゃんと機能し始めているのだと感じました。

【自転車用語】「逃げ」と「集団」の数比べ

ここで少しロードレースの用語を整理しておきます。

「逃げ」とは、レース序盤などに集団(プロトン)から飛び出して先行する少人数のグループのことです。

集団のほうが人数が多い分、先頭交代で風よけを分担できるので、基本的には速く、楽に走れます。荒北が言うとおり「数の優位が力の優位」。1分半程度の差なら、集団はいつでも捕まえられる「射程圏内」です。

では「逃げ」は無意味なのか。そうではありません。

  • チームメイトが逃げに乗っていれば、残りのメンバーは集団で追わずに足を温存できる
  • 集団で落車やメカトラブルが起きれば、逃げがそのまま勝負を決めることもある

荒北、石垣、修作は、それぞれ見原、盾崎、東堂のための「逃げ要員」。そして荒北の「チャンスなんていつもそうじゃナァイ!!」は、確率が低くても全力で走る逃げの本質を言い当てています。高校時代、福富のために走り続けた“運び屋”らしい一言でした。

待宮の不在と、荒北の優しさ

もうひとつ見逃せないのが、洋南大の待宮のエピソードです。

落車のケガで六溝山を見送り、地元・静岡の最終戦に懸けていたのに、そのレースが中止。本人の出番がないまま、シーズンが終わってしまいました。

それをネタにしつつ「あいつの分もがんばろう」と言う荒北。ぶっきらぼうだけど、ちゃんと仲間のことを考えているのが荒北らしいところです。呉への夏休み旅行で待宮と井尾谷を“運んだ”荒北を思い出すと、なおさら沁みます。


まとめ

六溝山レース前編は、巻島と東堂が初めて同じジャージで走るレースとして幕を開けました。

  • 台風で東海ロードが中止となり、六溝山レースが大学シリーズ最終戦に
  • 出走リストの「巻島裕介」に、明早大が騒然
  • 荒北は「赤いジャージで東堂の隣に立つ巻島」に絶句
  • 修作は東堂の狙いどおり「逃げ」に乗り、荒北・石垣と先行
  • 仮名森の挑発に、巻島は「東堂と駄話するためだ!!」と応戦

レースはまだ序盤。仮名森との丘の勝負、最終周回の長い登り、そして盾崎との決着――「二位と二位」の2人が、どんな走りを見せてくれるのか。

この続き、丘の前哨戦と15kmの登りは六溝山レース中編でまとめています。


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