箱根学園のエースクライマー・東堂尽八は、当初東京の明早大学を第一志望にしていました。ところが高校3年の秋、卒業を待たずに志望校を筑士波大学へ変更しています。
その裏にあったのは、幼馴染・糸川修作との3年ぶりの再会、そして巻島裕介が誰にも――田所迅にすら――明かせなかった本当の進路でした。
この記事では、「SPARE BIKE」で描かれた高校3年秋のエピソードを中心に、東堂と巻島、そして修作の関係をまとめます。
「SPARE BIKE」該当話数はspare.78〜85を参照しています。東堂尽八本人・巻島裕介のプロフィールは、それぞれの個別まとめ記事もあわせてご覧ください。
発端:後輩・黒田が気づいた“異変”
箱根学園自転車競技部の後輩・黒田雪成は、水曜恒例だった東堂の指導練習が最近来ないことに気づきます。理由を聞いた同期の泉田塔一郎から返ってきたのは、思いがけない情報でした。
「東堂さんもやはり忙しいのだろう 図書室でよくお見かけするよ 筑士波大学を受験するそうだ」
かつて東堂の第一志望は東京の明早大学だったはず。志望校を急に変えた理由を、泉田は「夏の終わりの頃に、とても大切な人との再会があったそうだ」と語ります。この“大切な人”こそが、幼馴染の修作でした。
3年ぶりの再会:箱根で待った2時間
舞台は晩夏の箱根町。中学卒業と同時に埼玉へ引っ越した修作と、3年ぶりに顔を合わせる約束をしていた東堂でしたが、待ち合わせに修作が2時間近く遅刻。電車の遅延という不運に、東堂は独り言でぼやきます。
「3年間も待たせて なおも待たせるか」
それでもタクシーで駆けつけた修作の姿を見て、再会を喜ぶ東堂。積もる話の中心は、なぜか自転車ではなく修作の恋愛事情(空手部の先輩マネージャーへの猛アタックと、あっさり振られた話)でした。
「自転車の話がカケラも出てこないなおまえの口から」
しかし話題は、修作の彼女が進学するという筑士波大学へと移ります。修作に「一緒に目指さないか」と誘われた東堂は、いったんは断ります。理由は、ある男が入るという噂を聞いていたから――東堂が語るその男の正体は、こうでした。
「笑顔の苦手な クモ男だよ」「自転車乗りだ 手足が長くてまるでクモ 髪は長くてタマムシ色」
修作は、その描写に驚きながらも東堂の想いの強さを感じ取ります。
表彰式前の直談判:「巻ちゃんの志望校を教えてくれ」
数週間前――インターハイ神奈川県大会1日目、山岳賞の表彰を控えたテントで、東堂は総北の田所迅を呼び止めます。
「巻ちゃんの…大学の…志望校教えてくれ!!」
情報戦を疑う田所でしたが、金城・福富・新開に聞いても誰も教えてくれないと東堂が漏らす一途さに、根負けして明かします。田所自身も箱根学園には昔の遺恨があると釘を刺しつつ、こう告げました。
「東京のー明早大だ」
東堂は自分も明早大を受けると決意しますが、実はこの時点で巻島は田所にもウソをついていたことが、後に明かされます。巻島の本当の進路は、まだ誰にも――田所にも――告げられていなかったのです。
巻島の告白:「9月から日本にいません」
夏休みも終わりに近づいた頃、巻島は神奈川の東堂庵まで新幹線でやってきます。祭りの手伝いをしていた東堂に声をかけますが、要件は「3分で終わる」と告げるばかり。東堂はその態度に苦言を呈します。
「わからないのか 一番楽しいのは 楽しい時間をつくりあげるのは とるに足らない 駄話だ!!」
タダ券で金魚すくいをさせ、花火を見せながら“6時30分までは聞かない”と時間を稼ぐ東堂。ようやく夜になって切り出された話は、東堂の想像を超えるものでした。
「明早大じゃねェ ちょっと遠い もう 一緒には走れねェ イギリスだ 9月からだ」
田所への“ウソ”の理由も、9月からの渡英という大きすぎる決断も、東堂にはこの日まで一切明かされていませんでした。
イギリスの兄、そして“姉妹校”という伏線
呆然とする東堂に、巻島は事情を明かします。イギリスで服飾ブランドを営む兄から誘われ、大学進学とともに渡英を決めたのだと。
「向こうに兄貴がいるんだ 4年前から行ってて ブランドやってる」
このとき巻島の兄が口にした大学名――トールウェッソン大学――が、実は日本の筑士波大学の姉妹校であるという事実は、まだこの場では誰も気づいていません。それが判明するのは、修作からの一本の電話でした。
修作の電話が繋いだ、“叶わない希望”への道
祭りの翌日、東堂は体の重さに動けないほどのショックを引きずっていました。そこへ修作から電話がかかってきますが、内容は空手部の先輩の話――のはずが、思わぬ単語が飛び出します。
「筑士波大の工学部をオレ目指すって言ってただろ?」「イギリスのー トールウェッソン 大学に行く前に」
「姉妹校らしいんだ」「条件が合って希望すれば 割とカンタンな試験で留学できるらしいぞ」
巻島が行くと決めた大学と、修作が目指す筑士波大学が姉妹校――しかも留学制度がある。この情報を聞いた東堂は、それまでの落胆から一転、明早大への進学希望を撤回します。
「思い描いた”未来のイメージ”を どうしてもあきらめられなくてな ”可能性”がある方を選んだのだ!!」
最後の電話、そして再会の約束
渡英直前、東堂は最後にもう一度巻島と自転車で走ろうと計画しますが、巻島の出発が前倒しになり、この約束は叶いませんでした。それでも東堂は日本を発つ巻島に、最後の電話をかけます。
「行ってこい あとのことは気にするな 新しい道を進むおまえにおめでとうを送るよ」「手の届かない遠くへ行っても いつまでも おまえはおまえだよ 巻ちゃん」
黒田との峠対決:“未来のイメージ”を問う
物語は再び箱根学園の練習に戻ります。しばらく練習を休んでいた東堂に、後輩・黒田雪成が食らいつきます。峠のゴール直前まで粘る黒田に、東堂は勝負を仕掛ける前にこう問いかけます。
「勝負の前にきいておこう!! おまえの”未来のイメージ”は何だ!!」
黒田の答え(箱根学園エースクライマー、ゼッケン3)を聞いた東堂は、あと30mまで追い詰められながらも振り切り、黒田の成長を讃えます。
SPARE BIKEで見えてきた東堂尽八の“素顔”(大学受験編)
東堂尽八まとめ記事の中学時代編に続く、東堂の“友情の一途さ”を象徴するエピソードです。
- 巻島の進路を知るためだけに、インターハイのテントで田所に直談判する行動力
- 3分で切り上げようとする巻島を、駄話と花火とタダ券で引き留める“もてなしの心”
- 渡英という想定外の別れを受け止め、それでも“可能性”に賭けて志望校を変更する一途さ
- 幼馴染・修作の何気ない一言が、東堂の運命を大きく動かしたという巡り合わせ
東堂の自信満々な自己紹介の裏には、こうした仲間のために本気で悩み、動く一途さが常にあることが、このエピソードでもよくわかります。
まとめ
東堂尽八が筑士波大学を選んだ理由は、決して偶然ではありませんでした。巻島の渡英という大きすぎる別れを受け止めながらも、幼馴染・修作との何気ない会話から見つけた“小さな可能性”に賭ける――理屈より「心にある小さな灯り」を選ぶ東堂らしい決断でした。
この決断が、後に田所迅との運命的な再会、そして筑士波大学自転車競技部の創設へと繋がっていきます。続きは田所迅の大学編まとめでご紹介します。

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