【ガクサン 5冊目】ネタバレ|うるし、独学受験を考える①。「参考書での独学受験は誰にでも可能だ」――塾なしで大学受験はできる?(ネタバレ注意!)

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ガクサン

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モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

5冊目は、ご相談係に届いた最初の「本物の相談」の回。「お金がないので、参考書だけで難関大を受験したい」――うるしの軽い一言が、福山の地雷を踏みます。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

原作の漫画を手元で読みたい方は、こちらからどうぞ。

漫画『ガクサン』1巻(佐原実波/講談社)

参考書オタク福山と新人うるしの出会い。1冊目〜を収録。

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ガクサン 5冊目「うるし、独学受験を考える①」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

「週明けから来なくて構わん」と言われた週末。うるしは本棚から落ちてきた高校時代の単語帳『ドラゴン・イングリッシュ』の「はじめに」を読み、福山が参考書に夢中になる気持ちを少しだけ理解します。

週明け、うるしは「福山さんのことうらやましいから言ってるんです!」と宣言。福山とのツーショットを自撮りし、ご相談係の Twitter に「参考書クソオタク&新人コンビ」と投稿しました。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 4冊目】うるし、作戦決行。「福山さんのことうらやましいから言ってるんです!」

町中華で、山崎に相談

お昼は、いぶき社のとなりの町中華。うるしは山崎に「完全に空回りしてる」と打ち明けます。SNS は誰にも見てもらえず、福山はあれからずっとイライラ。

これまでも相談は来ていたものの、中身は乱丁や誤植の問い合わせばかり。「お客様ご相談係」とは名ばかりでした。

山崎は言います。「講義や指導をするのは出版社の仕事ではないからね」「僕たちは『読めばわかるもの』を作るのが仕事だから」

……と思いきや、「まぁそれは建て前としてね!」。広報にもつながるし、ばんばんやったらいい。いぶき社は保守的すぎる、と山崎はぼやきます。

うるしがラーメンと餃子を撮っていると、山崎は「インフルエンサーか…」と何かを思いつき、「それだったらなんとかできるかも!!」。その代わりに「今度ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」。

通知が止まらない――最初の相談

午後、うるしのスマホが鳴りやみません。ご相談係の投稿が、山崎や、塾・講師らしきアカウントに次々とリツイートされていたのです。「人脈スゴ…!」

そして早速、相談が1件届きます。

「お金がないので参考書で難関大受験しようと思う」「塾と同じだけの勉強はできますか?」

ずっと無視していた福山が、ピクリと反応。「…見せてみろ」。

うるし、地雷を踏む

「これはビシーッと論破する流れ…!!」とワクワクしたうるしは、先回りして言ってしまいます。

「参考書だけで受験はさすがにできるわけないですよね!!」「いい大学に入るなら教えてくれる人は必要だし…」「やっぱり参考書ってサポートですしね!」

福山は何も言わず、くるりと背を向けて部屋を出ていきました。

「あれ!?」。入れ違いにやって来た山崎は、話を聞いて「…それは地雷踏んだねぇ」。

「あいつ自身も参考書だけで一橋大学行ってるからさ」

いつもなら論破してくるのに、と戸惑ううるしに、山崎は言います。あいつは自分のこととなると、黙り込んだり拗ねたり、ガキなんだよな。「ここに異動してきた時も…」と言いかけて、「なんでもない」。

そして明かされる、福山の過去。「あいつ自身も参考書だけで一橋大学行ってるからさ」。相当大変だったみたいだよ、もう十何年前の話だけど――。

「考えなしなこと言っちゃった…」と落ち込むうるしに、山崎は問いかけます。「受験を前にした自分だったらどうする?」「うるしちゃんもご相談係なんだし、自分の考え探してみてもいいと思うけど」

情報の渦と、お姉ちゃんの電話

その夜、うるしは遅くまでネットで調べます。「絶対無理、素直に予備校に頼るのがベター」「独学失敗」「独学で東大へ!!」――みんな言っていることがバラバラ。「…結局できるのできないの!?」

帰り道、ビデオ通話をかけてきたのは姉のあかね。「なんかへこんでる?」「そりゃわかるよ、姉ぢから53万だから」。

仕事の中身はぼかしつつ、うるしは打ち明けます。答えを知っている人はいるけど、難しい人で、地雷を踏んで聞けなくなった。「でも…悪い人ではないと思うんだ…」

あかねの答えは、こうでした。

「うるしにとっての参考書みたいな人だね」

「めちゃくちゃ読みづらい本っぽいけどね~~」と笑うあかね。うるしは思います。付け焼き刃の自分じゃだめだ。福山さんを開いて、「はじめに」から始めなきゃ。

「お詫びです!!!」

翌日。うるしは福山の目の前に、フルーツサンドを突き出します。「お詫びです!!!」「…声抑えろ」。

ネットで調べたけど、みんな言うことがバラバラでわからなかったこと。参考書で受験を乗り越えた福山さんを、素直にスゴイと思ったこと。「わかんないことがわかっただけだけど…これが今の私の考えです」

「昨日適当なこと言ってすみません」「どうか力を貸してくださいっ!」

「言うこと聞いてもらいます~とか啖呵切ってたくせに」とぼやいた福山は、フルーツサンドを受け取ると……「…そっちのもよこせ」。うるしの分まで取り上げて、スタスタと歩き出します。

屋上で――「誰にでも可能だ」

たどり着いたのは屋上。フルーツサンドの袋をバリッと開けた福山は、ぽつりと言いました。

「…できる」

「参考書での独学受験は誰にでも可能だ」

5冊目はここで幕。

【ガクサン流・独学受験】参考書だけで大学受験はできる?

5冊目の相談は「塾と同じだけの勉強は、参考書でできるのか」。福山の答えの中身は次回ですが、先にデータと研究から考えてみました。

塾・予備校にはいくらかかる?

相談者の「お金がない」は切実です。文部科学省の調査では、公立高校(全日制)に通う子どもの「補助学習費」(家での学習・学習塾・家庭教師など)は、1人あたり年間で約20万1千円。学年別では、高校3年生がいちばん多く、30万円近くになっています。(文部科学省, 2026)

※通っていない家庭も含めた平均です。実際に予備校に通うと、これよりずっと高くなります。

一方、参考書は1冊千円〜2千円ほど。10冊そろえても2万円前後です。

独学に必要なのは「自分で回す力」

塾がやってくれることを分けると、①何をどの順で学ぶか決める ②教える ③進み具合を見て直すの3つ。

②の「教える」は、山崎の言う「読めばわかるもの」=参考書が代わりを務められます。問題は①と③。

教育心理学では、自分で目標を立て、やり方を選び、進み具合を見て直していく学び方を「自己調整学習」と呼びます。うまく学ぶ人は、この「計画→実行→ふり返り」のサイクルを自分で回している、というのが研究者Zimmermanの整理です。(Zimmerman, 2002)

つまり独学受験とは、塾の「①と③」を自分でやること。1冊目の「割る」(作業量÷時間)は、まさに①の計画の話でした。

独学でも使える、効果の高い勉強法

「教わらないと効率が悪いのでは?」という不安には、心強い研究があります。

さまざまな勉強法を比べた総説では、「練習テスト(自分で問題を解いて思い出す)」と「分散学習(間をあけてくり返す)」が、効果の高い方法とされました。(Dunlosky et al., 2013)

どちらも、問題集と計画表があれば、ひとりでできる方法です。1冊目の「解説を読む→問題演習→潰す」とも重なります。

独学でも「人に頼る」のはアリ

もうひとつ大事なのが、わからないときに助けを求めること。

研究では、答えを丸ごと教えてもらうのではなく、自分で考えたうえで、必要なヒントを求める「適応的な援助要請」が、よく学べる人の特徴とされています。(Newman, 2002)

学校の先生、無料の質問サービス、そして――いぶき社の「お客様ご相談係」。独学は、孤独学ではないんですよね。うるしが福山に「どうか力を貸してください」と頭を下げたのも、まさに援助要請でした。

ぱっと見まとめ:参考書で独学受験するなら

番号名前やること
1費用を比べる塾・予備校と参考書のお金の差を知っておく
2計画を立てる志望校から逆算し、何をどの順でやるか決める
3参考書で「教わる」「読めばわかる」1冊を選び、「はじめに」から読む
4問題で思い出す読むだけで終わらせず、問題を解いて思い出す
5間をあけてくり返す一気にやらず、日をあけて同じ範囲をやり直す
6ふり返って直す進み具合を週ごとに見て、計画を直す
7人に頼る自分で考えたうえで、わからないところを質問する

チェックリスト

  • [ ] 志望校までにやることを、書き出して並べたか
  • [ ] 参考書の「はじめに」を読んだか
  • [ ] 読むだけでなく、問題を解いて思い出しているか
  • [ ] 同じ範囲を、日をあけてくり返しているか
  • [ ] 週に一度、計画どおりか確かめているか
  • [ ] わからないとき、質問できる相手や窓口があるか
  • [ ] ネットの「絶対無理」「楽勝」をうのみにしていないか

参考文献

  • 文部科学省 (2026). 令和5年度子供の学習費調査 結果のポイント.
  • Zimmerman, B. J. (2002). Becoming a self-regulated learner: An overview. Theory Into Practice, 41(2), 64–70.
  • Dunlosky, J., et al. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.
  • Newman, R. S. (2002). How self-regulated learners cope with academic difficulty: The role of adaptive help seeking. Theory Into Practice, 41(2), 132–138.

ガクサン 5冊目 感想・考察

【今回の一番】「うるしにとっての参考書みたいな人だね」

このおじさんが5冊目で一番ぐっときたのは、お姉ちゃんのこの一言です。

簡単には調べられないことを知っている。その人から学べば、うるしもきっと「スゴク」なれる。福山=参考書というたとえは、この作品のテーマそのものですよね。

しかも「めちゃくちゃ読みづらい本っぽいけど」というオチつき。口が悪くて、とっつきにくくて、でも中身はぎっしり。読みづらいけど、名著。福山にぴったりです。

そこから、うるしが「福山さんを開いて、『はじめに』から始めなきゃ」と受け取るのが見事。2冊目の「『はじめに』から始めろ」が、今度は人との向き合い方の言葉になりました。

「参考書ってサポートですしね!」がなぜ地雷なのか

うるしに悪気はありませんでした。むしろ福山が「ガキにはできない!!」と論破する流れだと思って、先回りしただけ。

でも福山は、参考書だけで一橋大学に受かった人でした。「参考書はサポート」「教えてくれる人は必要」は、福山の十何年前の努力を「本当は無理だったこと」にしてしまう言葉です。

2冊目で福山は「参考書は昔よりずっと学ぶ人間に優しくなってる」と言っていました。参考書でも学べる、と一番信じているのが福山なんですよね。

「お金がないので」――福山の過去と重なる?

相談者がわざわざ書いた「お金がないので」。そして山崎の「相当大変だったみたいだよ」。

福山がなぜ塾に行かず参考書で受験したのかは、まだ語られていません。でも、相談を無視し続けた福山が、この相談にだけは「…見せてみろ」と反応した。自分と同じ境遇の誰かを見たのかもしれません。

1冊目で福山が聖暁中の男子に言った「大人になれ」も、ひとりで勉強してきた人の言葉だと思うと、また違って聞こえます。

山崎の「建て前」と「お願い」

5冊目の山崎は、いい人で終わらない感じがします。

「出版社の仕事は『読めばわかるもの』を作ること」と言ったすぐあとに、「まぁそれは建て前としてね!」。そして人脈でリツイートを集めてくれた代わりに、「今度ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」。

さらに「ここに異動してきた時も…」と言いかけて、やめています。3冊目の「いろいろあって異動」と合わせて、山崎は福山の異動の事情を知っているようです。お願いの中身と一緒に、今後の伏線になりそうです。

ネットの「情報の渦」と、ご相談係の意味

夜のうるしが迷い込んだ「情報の渦」。「絶対無理」「独学失敗」「独学で東大へ!!」と、ネットには正反対の答えが並んでいます。

うるしの「…結局できるのできないの!?」は、受験生や親御さんの本音そのものですよね。

だからこそ、「参考書をすべて読んでいる人」に直接聞ける窓口には価値がある。ご相談係は「不要な業務」じゃない――3冊目からのテーマに、5冊目で最初の答えが見えてきました。

「お詫びです!!!」と、フルーツサンド

お姉ちゃんの「おいしーものでも買っていったら、コロッと態度変わるかもよ!」。うるしは「それはお姉ちゃんだけでしょ~」と言いつつ、ちゃんと買っていきました(笑)。

そして福山は、うるしの分まで「そっちのもよこせ」。本当にコロッと変わってる……!

でも、福山を動かしたのはフルーツサンドだけではないはずです。「わかんないことがわかっただけだけど、これが今の私の考えです」。自分で調べて、わからないと認めて、頭を下げた。それはまさに、独学の第一歩でした。

まとめ

  • 山崎の人脈で、ご相談係の投稿が拡散。最初の相談は「お金がないので参考書で難関大受験。塾と同じだけの勉強はできますか?」
  • うるしの「参考書ってサポートですしね!」で、福山は無言で退室
  • 福山は参考書だけで一橋大学に合格していた(山崎)
  • 姉あかねの「うるしにとっての参考書みたいな人だね」で、うるしは福山と正面から向き合うと決める
  • フルーツサンドでお詫び。屋上で福山は「参考書での独学受験は誰にでも可能だ」

「誰にでも可能だ」と言い切った福山。その方法とは、そして福山自身の受験とは。「①」の続き、6冊目が楽しみです。

続きが待ちきれない方は、漫画でひと足先にどうぞ。

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