【ガクサン 16話ネタバレ】16冊目|うるし、将来を考える。「やる気は『出すもの』ではない」――見栄の告白、TOEICの単語帳、そして山崎が語りはじめる「福山の過去」

ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

16冊目は「うるし、将来を考える」。見栄を張った受験生への福山の答えは、意外にも「状況としては悪くない」。そして同じく見栄を張ったうるしは、高校の友達レナと飲みに行き、「編集者」という将来を考えはじめます。ラストでは、ついに山崎さんが――。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

原作の漫画を手元で読みたい方は、こちらからどうぞ。16冊目は2巻に入っています。

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ガクサン 16冊目「うるし、将来を考える」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

うるしの投稿「参考書は、編集者の愛のかたまりなんです。」がプチバズり。屋上では山崎さんが福山に、編集に戻りたいのではと問いかけ、福山は「編集外された俺」とこぼします。

福山はうるしに豆大福の箱を差し出して、「いい返答だった」。

その夜、高校の友達レナから電話が。編集者をめざしているのかと聞かれ、うるしはつい見栄を張ってしまいます。そこへ届いた新しい相談は、見栄を張って友達と同じ難関大学を志望校と言ってしまった、というもの。福山はひと言、「馬鹿だな」。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 15冊目】うるしとバズの功名。福山の「いい返答だった」と大量の豆大福――屋上で明かされた「編集外された俺」と、新しい相談は「見栄」

「状況としては悪くない」

勉強はそれなりにできると見栄を張った受験生と、編集にくわしいと見栄を張ったうるし。奇しくも同じ状況です。

ところが福山の答えは、意外なものでした。状況としては悪くない、それがモチベーションになるなら、と。

大学でやりたいことがあれば、それがやる気になる。でも高校生でそこまで強い気持ちを持つのは難しい。だから、将来の可能性のために大学へ行きたいだけなら、むしろよかったのではないかというのです。

「やる気は『出すもの』ではない」

参考書での勉強は、尻をたたいてくれる人がいないから、やる気を出すのがいちばんの難所だ、とうるしが言うと、福山の目が光ります。

「やる気は『出すもの』ではない」

大事なのは、やる気がなくてもやる状況を作ること。朝起きたら歯を磨く、磨かないと気持ち悪い。勉強も「そういうもの」に位置づける。電車に乗ったら英単語、乗り換えたら古文単語、お風呂から出たらリスニング。「〇〇したら××する」と決めれば、やる気を出す労力を減らせる、と。

「独学はしない」ほうがいい

さらに福山は、今回の相談者には同じ目標を持つ友人がいることがアドバンテージだと言います。

参考書で独学する場合、できるだけ「独学はしない」ほうがいい。

いっしょに切磋琢磨する人がいることは、モチベーションの維持にとても大事。身近にいなければ、SNSやいっしょに勉強するアプリを使ってもいい。ただし、成績の比較にとらわれると自信をなくしがちなので、習慣づけと組み合わせて、自分が前向きになれるやり方で続けること。

そして最後に、どのみち見栄を張ったことはちゃんと告白したほうがいい。このひと言は、うるしにも突き刺さります。

BOOKS WITH BEER でレナに謝る

週末。レナが予約したのは、出版関係の人が作ったというブックバル「BOOKS WITH BEER」。うるしは手を合わせて、見栄を張ってしまったと謝ります。

レナは、謝ることじゃないと笑い飛ばします。レナ自身も、今の仕事にやりがいがなく、好きな本の仕事に転職したいと考えていたのでした。

軽音部の仲間の結婚話、会社の人たちの話。そしてレナは、地元からでは手の届かない「選択肢」があると言います。もう26歳、先のキャリアを考えなければ、と。

隣の席の単語帳トーク

隣の席では、男性3人が高校時代の単語帳の話で盛りあがっています。『速単』『キクタン』、今も売っている『ターゲット』。

そのうちのひとりが、今度TOEICを受けるのだが高校の単語帳は使えるのか、と言ったところで、うるしが立ち上がります。できれば買い換えたほうがいいと。

単語帳は過去問を調べて出やすい単語を並べている。TOEICには会議や出張のホテル予約のような「大人の日常場面」が多く、大学受験とは出る単語が違う。受験の単語帳は復習用くらいにして、TOEIC専用の単語帳を――と一気にしゃべって、われに返って真っ赤に(笑)。

じつはこれ、いぶき社の売れ筋『英単語タンコブ FOR TOEIC』の「はじめに」の受け売り。しかも隣の3人は編集者でした。レナは、自分は編集者に転職したいのだと、すかさず連絡先を交換します。

「私にも答えが見つかるんじゃない…?」

その夜。さっきの自分はヤバいときの福山のようだったと反省しつつ、うるしはレナのことを考えます。積極的で、やりたいことに一直線。

大学を出てからふらふらして、ようやく正社員に落ち着いたうるし。壁には11冊目の目標「ご相談係をがんばる!!」が貼ってあるのに、自分はブレブレだと感じます。

ご相談係がうまくいっても、自分自身は何者でもないまま。そして、

「もし編集者になれたら …みんなみたいに熱く仕事ができたら 私にも答えが見つかるんじゃない…?」

桃三郎で、山崎が語りはじめる

町中華「桃三郎」で、うるしは山崎さんに、編集者になるにはどうしたらいいかと聞きます。

山崎さんは、福山を見ていると憧れてしまうのはわかる、あいつは漫画の主人公みたいだ、勝ち目がない、と苦笑します。そして、編集者になりたいという話は福山にはしないほうがいい、と。

うるしは、ずっと気になっていたことを聞きます。福山は編集者のころ、何があったのか。

山崎さんは、いい加減話さなければ、と福山の過去を語りはじめます。17冊目へ続きます。

【ガクサン流・やる気の作り方】「やる気は『出すもの』ではない」は本当か

16冊目の福山の名言「やる気は『出すもの』ではない」。じつはこれ、心理学の研究とかなり重なっています。福山の3つの助言を、研究とあわせて見てみましょう。

1. 「〇〇したら××する」と決める

福山の「電車に乗ったら英単語」は、心理学で「実行意図(if-thenプラン)」と呼ばれるものにそっくりです。「〇〇のときに××する」と、きっかけと行動をセットで決めておくと、ただ「頑張る」と決めるより実行しやすくなることが、多くの研究で示されています。(Gollwitzer, 1999)

習慣は、目標ややる気よりも、「いつもの場所・いつもの流れ」というきっかけで動くようになります。歯みがきのように「やらないとスッキリしない」状態は、まさにそれです。(Wood & Neal, 2007)

2. 習慣になるまでの目安は「数週間〜数か月」

では、どのくらい続ければ習慣になるのでしょうか。毎日の行動(昼食時に水を飲む、など)を続けてもらった研究では、自動的にできるようになるまでの期間は人によって18〜254日と幅があり、真ん中の値は66日でした。また、たまに1日休んでも、習慣づくりには大きく響かなかったそうです。(Lally ほか, 2010)

「3週間で習慣になる」はよく聞きますが、研究ではもっとかかることが多い。うまくいかなくても、2〜3か月は様子を見ましょう。

3. 「独学はしない」――仲間の力と、比較のワナ

福山の「一緒に切磋琢磨する人間がいることが モチベーション維持には非常に重要だ」。これも研究があります。実際には一人で課題に取り組んでいても、「仲間と一緒に取り組んでいる」と感じるだけで、粘り強く続けられ、課題をおもしろく感じたという実験です。(Carr & Walton, 2014)勉強アカや、一緒に勉強するアプリが効くのも、このためかもしれません。

一方で、福山が注意した「成績の比較」。優秀な生徒が集まる学校にいると、同じ実力でも自分の学力を低く見積もりがちになる「井の中の大魚効果(Big-Fish-Little-Pond Effect)」が知られています。(Marsh, 1987)見栄を張って難関大を目指す相談者が、友達と自分を比べすぎないように、という福山の助言は的確です。

勉強に使うなら

  • 毎日する行動(電車に乗る・お風呂から出る・夕食後)を1つ選び、「〇〇したら××する」を紙に書く
  • ××は「単語帳を1ページ」のように、小さく具体的に
  • 1日休んでも気にしない。2〜3か月は続けてみる
  • 一緒に勉強する仲間(友達・勉強アカ・アプリ)を作る。ただし点数の比べっこより「今日やったこと」を報告しあう

ぱっと見まとめ:やる気に頼らない勉強法

番号名前やること
1〇〇したら××するいつもの行動をきっかけに、やることを決めておく
22〜3か月続ける習慣になるまでは時間がかかる。1日休んでもやめない
3一緒にやる仲間やSNS・アプリで「一緒に勉強している」感覚を持つ
4比べすぎない点数の比較より、自分のやった量と続いた日数を見る

やる気に頼らないチェックリスト(16冊目から)

  • [ ] 「〇〇したら××する」を1つ以上決めた
  • [ ] ××は5〜10分でできる小さなことにした
  • [ ] 1日休んでも、次の日に戻ってきている
  • [ ] 一緒に勉強する仲間(友達・勉強アカ・アプリ)がいる
  • [ ] 友達の点数より、自分の「続いた日数」を見ている

参考文献

  • Gollwitzer, P. M. (1999). Implementation intentions: Strong effects of simple plans. American Psychologist, 54(7), 493–503.
  • Wood, W., & Neal, D. T. (2007). A new look at habits and the habit–goal interface. Psychological Review, 114(4), 843–863.
  • Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.
  • Carr, P. B., & Walton, G. M. (2014). Cues of working together fuel intrinsic motivation. Journal of Experimental Social Psychology, 53, 169–184.
  • Marsh, H. W. (1987). The big-fish-little-pond effect on academic self-concept. Journal of Educational Psychology, 79(3), 280–295.

【今回のガクサン】速単とキクタン

作中の「今回のガクサン」欄に載っていたのは、隣の席の3人が話していたこの2冊です。

『速読英単語 必修編』(Z会)は、通称「速単」。長文を読みながら単語を覚えるタイプで、作中でも「文章の中身もトリビアっぽくて結構おもしろい」「オオカミの子育てとか」と言われていました。

『キクタン』(アルク)は、音楽(チャンツ)に乗せて単語を聞いて覚えるシリーズ。「デザインが洒落てんだよ!」の本です。

なお、うるしが言っていたとおり、TOEICを受けるなら、受験用の単語帳は復習用にして、TOEIC専用の単語帳を使うのがおすすめ。会議・出張・クレーム対応など、出てくる場面がまったく違います。

ガクサン 16冊目 感想・考察

【今回の一番】「私にも答えが見つかるんじゃない…?」

16冊目の一番は、夜の部屋でうるしがつぶやいたこの言葉です。

1冊目からうるしは、自分のことを何をしても胸を張れる答えが見つからないと思ってきました。そのうるしが、15冊目で初めて福山に認められ、16冊目で「編集者」という答えの候補に出会う。

空欄に大きく浮かぶ「参考書」の文字。うるしにとって、参考書は1冊目からずっと「答えのある場所」なのです。おじさんはこのページで、うるしの物語が本当に動き出した気がしました。

見栄を張った2人は、同じ答えにたどり着いた

15冊目の記事の最後に「2人は同じ答えにたどり着けるのか」と書きましたが、答えははっきりしていました。

見栄を張ったことはちゃんと告白したほうがいい、という福山の言葉どおり、うるしはレナに謝り、レナは笑って受け止めてくれました。相談者への答えが、そのままうるしへの答えになる。ガクサンらしい、きれいな重ね方です。

そして、その先うまく関係を活かせるかは自分しだい。見栄がきっかけで、レナは本当に編集者とつながり、うるしは将来を考えはじめました。見栄は、ちゃんと告白すれば「モチベーション」に変えられるのです。

【考察】福山の「やる気」論は、福山自身の生き方

「やる気は出すものではない」。いかにも福山らしい言葉ですが、5冊目で明かされた「参考書だけで一橋大学に合格」という経歴を思い出すと、重みが違います。

塾も、尻をたたいてくれる人もいない独学。6冊目の、自分よりも「持っている」人たちがいるという話。やる気に頼らないしくみは、福山がひとりで受験を乗り越えるために身につけたものなのかもしれません。

だからこそ「できるだけ独学はしないほうがいい」は、独学のつらさを知っている人の言葉に聞こえます。……そして、福山に山崎さん以外の友達はいるのか、といううるしの心配には笑いました(笑)。

うるし、「ヤバいときの福山さん」になる

BOOKS WITH BEER の場面は、16冊目でいちばん楽しい場面でした。

見知らぬ人の話に割って入って、単語帳の作りを語りだす。本人の言うとおり、完全にヤバいときの福山です(笑)。

でも中身は、2冊目で福山に教わった「『はじめに』から始めろ」そのもの。自分の会社の『タンコブ FOR TOEIC』の「はじめに」を読んで覚えていたからこそ、すらすら言えた。「付け焼き刃」と本人は言いますが、16冊ぶんの積み重ねがちゃんと出ています。

レナの「選択肢」と、うるしの「何者でもない」

レナの「地元からでは手の届かない選択肢がある」は、6冊目の教育格差の話とつながる言葉だと思います。

住む場所やお金で、手の届く参考書・塾・仕事の選択肢が変わる。福山はその格差を「参考書」で越えようとしてきました。レナはそれを「東京」で越えようとしている。そしてうるしは、選択肢はあるのに、何を選べばいいかわからない。

26歳という年齢。軽音部の仲間は半分以上が結婚。12冊目の葵が「やりたいこと」で理転したように、うるしも「やりたいこと」を探しはじめました。ガクサンは受験生だけでなく、大人の「進路相談」の物語でもあるのです。

山崎の「勝ち目がない」

桃三郎の山崎さんの言葉も、15冊目の続きとして読むと味わい深いです。

好きなものを極めたい、それだけで生きている福山には勝ち目がない。15冊目のいちばんうらやましくて悔しいと同じ気持ちを、今度はうるしの前で口にしています。

そして、編集者になりたいという話は福山にしないほうがいい、という忠告。13冊目の「編集には関わらないほうがいい」、15冊目の「編集外された俺」。福山が編集から「外された」理由が、ついに17冊目で語られます。

まとめ

  • 見栄を張った相談者に、福山は「状況としては悪くない」。それがモチベーションになるなら
  • 「やる気は『出すもの』ではない」。「〇〇したら××する」で、やる気がなくてもやる状況を作る
  • できるだけ「独学はしない」ほうがいい。仲間やSNSを使い、成績の比較にはとらわれない
  • うるしはレナに見栄を謝る。レナも本の仕事への転職をめざしていた
  • 隣の席の単語帳トーク(速単・キクタン・ターゲット)に、うるしがTOEIC用の単語帳をと割って入る
  • 夜、うるしは「編集者になれたら、自分にも答えが見つかるのでは」と考える
  • 桃三郎で山崎が「福山の過去」を語りはじめる

16冊かけて積み上げてきた「福山はなぜ編集部を離れたのか」の謎が、ついに明かされます。うるしは福山の過去を知って、それでも編集者をめざすのか。17冊目が待ちきれません!

続きが待ちきれない方は、漫画でひと足先にどうぞ。

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