週刊少年マガジン掲載の漫画 盤上のオリオン最新話の感想、考察をお届け。
以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。
盤上のオリオン 第95話 最新話 あらすじ(ネタバレ注意)
前回までのあらすじ
鬼に堕ちた茅森月。
己の美学を捨て、木村美濃という古い戦術で佳澄に挑む。
なりふりかまわず、すべてを捨てて、勝利だけを求める。
佳澄は、その覚悟を認めた。
そして、興奮している。
13勝0敗vs10勝3敗。
鬼vs鬼の戦いが、今、始まった。
妹弟子対決
居酒屋店員「待ち合わせのお客様ご案内でーす」
天戸「チャオ」
壬生「なんでてめーがいるんだよ!!天戸!!」
天戸「今日対局だろ。三段リーグ、うちの妹弟子と君のところの妹弟子の女性上位ランカー直接対決さ」
壬生「ふーん、知らなかった」
天戸「知らないわけないだろ。ずっとスマホ気にしてるじゃないか。時間も気にしてる。将棋ニュースもチラチラ見てるしな」
スマホをチラ見する壬生。
歴史に名を残す傑物
天戸「今期の佳澄碧は課題の安定感も気力も充分。死角がない。勝てるかい?キミの妹弟子は」
壬生「あれは餓鬼だ」
8回に1回
壬生「ガキは柔軟な思考で本質を吸収する。勉強でも遊びでも。そして恐ろしい速度で進化する」
壬生「今茅森が佳澄とやっても8回に1回勝てるかどうかだろう」
壬生「だが、その一回が今日じゃないとは限らないぜ」
木村美濃の強みと弱み
佳澄「木村美濃。十四世名人木村義雄が愛用した美濃囲いをベースにした陣形」
佳澄「よろしい。お手並み拝見ね」
8六角
佳澄「チッ、角を埋めた。出れないな」
茅森「銀を下げて攻撃手を見送り固めてきた。8六角」
佳澄「引いた角ですかさず攻めに転じた」
勉三「うまい!!」
佳澄「どこかでわかっていた。攻手までモノにしやがった。棋力が上がっているのがわかる」
佳澄「8六角。いい手だ」
鬼退治
茅森「ふふふ。どうだ佳澄、アマ竜王の頃とは違うだろ」
茅森「鬼退治だ」
運命の敵
佳澄「迫ってくる。狂おしいほどに迫ってくる。駒おとが近づいてくる」
佳澄「わかっていた。私は今、運命の敵と対峙している」
盤上のオリオン 第95話 X(旧Twitter)での反応
マガジン今週号で『盤上のオリオン』を読んだ。新川直司ってライバル関係をほんとかっこよく描きますよね
— miumi (@miumi_lr) April 14, 2026
今週も盤上のオリオンは素晴らしい(*´ω`*)
— うえけん (@kjkj0612) April 14, 2026
盤上のオリオン 第95話 感想・考察・まとめ
天戸の「汚物」発言―ギャグとシリアスの絶妙なバランス
冒頭のシーン、最高でした。
居酒屋で待ち合わせしていた壬生のところに、突然現れる天戸。
「チャオ」
という軽い挨拶に対して、壬生の反応が激しい。
「なんでてめーがいるんだよ!!天戸!!」
そして、天戸が提案する。
「イケメン棋士ファン投票3年連続No.1&殿堂入り記念、応募者プレゼント用恋人目線ブロマイド5枚セットあげるからさ」
この長すぎる肩書き(笑)。
恋人目線ブロマイドって何ですか。
そして、壬生の一言。
「汚物め」
この一言で、天戸のキャラクターが全て表現されています。
イケメンで自信家で、ちょっとナルシスト。
でも憎めない。
この軽妙なやり取りが、シリアスな対局シーンの合間に挿入される。
これが、この作品の魅力ですね。
緊張感のある戦いの中に、適度なユーモアを混ぜる。
読者を飽きさせない工夫。
そして、このシーンは単なるギャグじゃない。
実は、兄弟子たちの心配を表現しているんです。
「バーロ…」という照れ隠し
天戸が鋭く指摘します。
「知らないわけないだろ。ずっとスマホ気にしてるじゃないか」
壬生は、茅森の対局が気になって仕方ない。
でも、素直に認めたくない。
だから、「ふーん、知らなかった」ととぼける。
でも、バレバレ。
「バーロ…」
この一言に、壬生の照れ隠しが表れています。
名探偵コナンの「バーロー」を思い出す人もいるかもしれません(笑)。
でも、ここでの「バーロ」は、「バカヤロウ…」という意味でしょうね。
師匠として、妹弟子の対局が気になる。
でも、心配している自分を知られたくない。
だから、知らないふりをする。
でも、スマホをチラチラ見てしまう。
この人間臭さが、いいですね。
壬生というキャラクターの、優しさと不器用さが表れています。
玉形とは―将棋における王様の守り方
さて、ここで「玉形」という専門用語が出てきます。
佳澄が言います。
「現代的には玉形がやや薄い」
玉形(ぎょくけい)とは、王様(玉)の周りの守りの形のことです。
将棋で最も大切な駒は、玉(王様)。
これを取られたら負け。
だから、玉をしっかり守る必要がある。
その守り方、守りの陣形を「玉形」と呼びます。
例えば:
- 美濃囲い:玉を左に移動させて、金銀で囲む
- 矢倉囲い:玉を右に移動させて、金銀で厚く囲む
- 穴熊:玉を端に追いやって、金銀で完全に囲む
それぞれに特徴があります。
美濃囲いは横からの攻めに強いが、上からの攻めに弱い。
矢倉囲いはバランスが良いが、組むのに時間がかかる。
穴熊は最強の守りだが、組むのに非常に時間がかかる。
そして、「玉形が薄い」とは、守りが弱いという意味。
金銀が少ない、あるいは配置が良くない。
そういう状態を「薄い」と表現します。
逆に、「玉形が厚い」「玉が堅い」と言えば、守りが強いという意味。
佳澄が指摘しているのは、木村美濃は現代将棋の基準では守りがやや弱いということ。
でも、「中央が強固」というメリットもある。
中央を制圧できる。
そして、「中飛車と相性が良い」。
茅森の戦法(中飛車)にマッチしている。
だから、玉形は薄いけど、採用する価値がある。
この分析が、佳澄の棋力の高さを示しています。
「歴史に名を残す傑物」―天戸の評価
天戸が言います。
「うちの佳澄碧は歴史に名を残す傑物だよ」
傑物(けつぶつ)=才能や人格が非常に優れた人物。
普通の人ではない。
特別な存在。
歴史に名を残すほどの天才。
天戸は、妹弟子をそう評価している。
そして、続ける。
「今期の佳澄碧は課題の安定感も気力も充分。死角がない」
死角がない=弱点がない。
完璧な状態。
そんな佳澄に、茅森は勝てるのか?
天戸の問いかけは、挑発でもあり、本気の疑問でもある。
「あれは餓鬼だ」―壬生の評価
対する壬生の答えが、素晴らしい。
「あれは餓鬼だ」
餓鬼(がき)。
普通は子どもを指す言葉。
でも、仏教用語としての「餓鬼」には、もっと深い意味があります。
餓鬼道に落ちた者。
常に飢えている存在。
満たされることを知らない。
いくら食べても、飢え続ける。
壬生は、茅森をそう評している。
いくら勝っても、満足しない。
いくら強くなっても、もっと強くなりたい。
常に飢えている。
だから、「恐ろしい速度で進化する」。
満足しないから、成長し続ける。
これは、最高の褒め言葉です。
「8回に1回」という現実的な分析
そして、壬生の冷静な分析。
「今茅森が佳澄とやっても8回に1回勝てるかどうかだろう」
これは、勝率12.5%ということ。
圧倒的に佳澄が有利。
でも、ゼロじゃない。
8回に1回は勝てる。
そして、壬生は続ける。
「だが、その一回が今日じゃないとは限らないぜ」
この言葉が、名セリフです。
確率は低い。でも、奇跡は起こる。
8回に1回。
その1回が、今日かもしれない。
この希望。
この可能性。
それを信じることが、スポーツやゲームの面白さなんですよね。
「勝てないかもしれない。でも、勝てるかもしれない」
その「かもしれない」のために、人は戦う。
壬生は、茅森の可能性を信じている。
8回に7回は負ける。
でも、1回は勝てる。
そして、今日がその1回かもしれない。
この言葉には、師匠としての愛情と期待が込められています。
古代ローマの詩人ウェルギリウスは言いました。
「運命は勇者に味方する」(Audentes fortuna iuvat)
茅森は、勇者です。
すべてを捨てて、佳澄に挑んでいる。
だから、運命が味方するかもしれない。
壬生は、それを信じている。
8六角という好手
そして、盤上で茅森が放つ。
8六角。
勉三が叫ぶ。
「うまい!!」
佳澄も認める。
「どこかでわかっていた。攻手までモノにしやがった。棋力が上がっているのがわかる」
攻手(こうしゅ)=攻撃の手段。
茅森は、守りだけでなく、攻めも習得した。
木村美濃で守りを固めつつ、攻撃のタイミングも掴んでいる。
短期間で、ここまで成長した。
佳澄が妖怪のように呪う。
「壬生め…夕飛め…」
壬生が師匠として教え、夕飛が友人として手伝った。
その結果、茅森はこれほど強くなった。
佳澄は、二人に嫉妬している。
自分には、こんな協力者がいない。
孤独に戦ってきた。
でも、茅森には師匠も友人もいる。
その差を、佳澄は感じている。
でも、同時に認める。
「8六角。いい手だ」
この素直さが、佳澄の美点です。
悔しいけど、認める。
良い手は、良い手だと認める。
これが、本物の強者の姿勢。
「鬼退治だ」―茅森の宣言
茅森が思う。
「ふふふ。どうだ佳澄、アマ竜王の頃とは違うだろ」
「鬼退治だ」
この宣言。
かつて、佳澄は言いました。
「鬼に堕ちるしかないわ」
茅森は、鬼に堕ちた。
でも、今、「鬼退治」を宣言している。
これは矛盾しているようで、していない。
茅森は、鬼になって、鬼を退治しようとしている。
桃太郎のように正義の味方として退治するんじゃない。
鬼として、鬼と戦う。
同じ土俵に立って、全力でぶつかる。
それが、茅森の「鬼退治」。
そして、茅森は自分に言い聞かせる。
「屈辱に耐え、恥辱に耐え、よく頑張ったわ」
屈辱=悔しい思い。
恥辱=恥ずかしい思い。
何度も佳澄に負けた。
泣かされた。
おごらされ続けた(21対0)。
でも、耐えた。
諦めなかった。
だから、今ここにいる。
フランスの哲学者アルベール・カミュは言いました。
「真の絶望とは、希望を持ち続けることである」
茅森は、何度負けても希望を持ち続けた。
いつか勝てると信じ続けた。
その希望が、今、形になろうとしている。
「駒おとが近づいてくる」―佳澄の高揚
佳澄の心理描写が、美しい。
「迫ってくる。狂おしいほどに迫ってくる。駒音が近づいてくる」
駒音が近づいてくる=茅森が追いついてくる。
実力差が縮まっている。
かつては圧倒的に自分が上だった。
でも、今は違う。
茅森が、すぐそこまで来ている。
駒音が聞こえるほど、近くに。
そして、佳澄は悟る。
「わかっていた。私は今、運命の敵と対峙している」
運命の敵(teki)=destined rival、fated enemy。
出会うべくして出会った相手。
戦うべくして戦う相手。
茅森月は、佳澄碧の運命の敵。
この認識が、重要です。
佳澄は、茅森を認めた。
単なるライバルではなく、「運命の敵」として。
自分の人生において、避けては通れない相手。
自分を成長させてくれる存在。
ドイツの哲学者ニーチェは言いました。
「あなたを殺さないものは、あなたを強くする」(Was mich nicht umbringt, macht mich stärker)
茅森という敵は、佳澄を殺さない。
でも、佳澄を強くする。
だから、佳澄は茅森を「運命の敵」と呼ぶ。
殺し合う敵ではなく、お互いを高め合う敵。
新川直司が描くライバル関係
Twitterの反応で、こんなコメントがありました。
「新川直司ってライバル関係をほんとかっこよく描きますよね」
これ、本当にその通り。
新川直司先生の前作『四月は君の嘘』でも、ライバル関係は重要なテーマでした。
有馬公生と相座武士。
宮園かをりと井川絵見。
お互いを高め合うライバル。
憎み合うのではなく、尊重し合うライバル。
そして、『盤上のオリオン』でも、それは継承されている。
佳澄と茅森。
二宮と碧。
月と彼方。
みんな、お互いを認め合いながら戦っている。
ライバルがいるから、強くなれる。
ライバルがいるから、楽しい。
このテーマが、一貫している。
だから、読者は感動する。
自分も、こんなライバルが欲しいと思う。
まとめ―8回に1回の奇跡は起こるか
第95話は、師匠たちの視点が加わった回でした。
天戸と壬生。
二人の兄弟子が、妹弟子たちの対局を見守る。
天戸は佳澄を「歴史に名を残す傑物」と評し、
壬生は茅森を「餓鬼」と評する。
そして、壬生は言う。
「8回に1回勝てるかどうかだろう。だが、その一回が今日じゃないとは限らないぜ」
この言葉が、今回の核心。
確率は低い。でも、奇跡は起こる。
盤上では、茅森が好手を放つ。
8六角。
佳澄も認める「いい手」。
そして、佳澄は感じる。
駒音が近づいてくる。
運命の敵が、すぐそこまで来ている。
次回、この対局はどう展開するのか。
8回に1回の奇跡は、起こるのか。
それとも、佳澄が無敗を守り切るのか。
歴史が動く瞬間を、私たちは見届けます。
壬生が信じた可能性。
天戸が認めた傑物。
夕飛が教えた戦術。
木佐貫が見守る成長。
全ての想いが、この一局に込められている。
次回も、正座して待っています。
駒音が、どこまで近づいてくるのか。
運命の敵との戦いが、どんな結末を迎えるのか。
その全てを、見届けたい。
心からそう思います。

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