【ガクサン 29話ネタバレ】29冊目|うるしとノートのとり方①。東大卒の新人・宮下七海と福山の下の名前「譲」――「きれいなノートはできる奴だけ」、ごちゃごちゃノートには「諦めろ そして頼れ」

【ガクサン 29話ネタバレ】29冊目|うるしとノートのとり方①。東大卒の新人・宮下七海と福山の下の名前「譲」――「きれいなノートはできる奴だけ」、ごちゃごちゃノートには「諦めろ そして頼れ」 ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

29冊目は「うるしとノートのとり方①」。28冊目のラストで柱の陰からうるしを見ていた女性の正体が明らかになります。福山を「ジョーさん」と呼ぶ東大卒の新入社員と、ノートのとり方をめぐるご相談。おじさんも学生時代、ノートを色ペンで飾って満足していたので、耳の痛い回でした。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

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ガクサン 29冊目「うるしとノートのとり方①」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

ご相談係でがんばると決めたうるし。小中学参の編集者・赤城さんは、街で漢字や英単語を見つける体験型のドリルを見せながら、世界が面白いと思える手助けがしたい、と語ります。

うるしが、赤城さんの自信作がちゃんと届くようにご相談係でがんばる、と答えると、赤城さんは、感じが変わりましたね、とびっくり。そんなふたりを、柱の陰からボブヘアの女性がじっと見つめていました。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 28話ネタバレ】28冊目|うるしとイマドキドリル。赤城さん「世界が面白いって思える手助けを」――漢字ハンターズ・ツッコミ理科・おしごと算数、体験型ドリルは「出オチ」じゃない

平和なご相談係に、あやしい視線

ご相談係はいつもどおり、嫌味を言われ、しをり会は勉強になる。あとは福山さんがしをり会に興味を持ってくれたら――。平和だなあ、とお茶を飲むうるし。

ところが最近、どうも誰かにつけられている気がします。振り向くと、柱の陰にさっと隠れるボブヘアの女性。思いきって腕をつかみ、何かご用件でも?と聞いたところへ、福山がぬっと現れました。

福山の口から出たのは、七海じゃないか。女性は顔を輝かせて、ジョーさん!!と答えます。

新入社員・宮下七海

ご相談係の部屋で、女性はあらためて名乗りました。新入社員の宮下七海。4月からの書店研修が終わり、今は営業部で研修中だといいます。

うるしの頭の中は大混乱です。七海、ジョーさん、名前呼び。そういえば福山の下の名前は譲(じょう)でした。ふたりは昔からの知り合い? どういう関係?

七海は、福山が編集部にいると思って入社したのに、ご相談係にいると聞いて配属を志望したら却下された、と不満げ。さらに、SNSも見たけれど、譲さんや私なら本来の仕事のかたわらでできるような仕事ですよね、とまで言います。

カチンとくるうるし。福山は、何が言いたいのかわからないが、ここの仕事はSNS以外にもある、とだけ返しました。

相談①「参考書を解くときのノート」

七海は勝手にパソコンをのぞきこみ、届いていた相談を読み上げます。相談者は「りーんず」さん。参考書を解くときのノートの使い方を知りたい、という内容です。

うるしは、見出しを書いたり、かわいい罫線で囲んだり、と学生時代を思い出して楽しそう。ところが七海は、そういうのは楽しいけれど、大事なのはそこではない、とあきれ顔です。

七海の答えは、問題集を解くときのノートは何でもいい、書き方も何でもいい。大事なのは丸つけのあとで、まちがえた原因とどうすればいいかを確かめ、あとで見返せる形で記録しておくこと。書いておく場所は、参考書でも授業のノートでもいい。

どこかで聞いたような話だな、と思ううるし。七海はうるしの言葉を受けて、ですよね譲さん、と福山にぴったり。福山もこくりとうなずきます。

相談②「ノートが何冊もあって整理できない」

距離が近くない!? 私、何をイラついてるんだろう――と、モヤモヤするうるし。そのすきに七海は、勝手に返事を送ってしまいます。

するとすぐに、りーんずさんから追加の相談が届きました。授業用、演習用、塾のノートと何冊もあって、内容が整理できない。そもそも授業のノートもきれいにまとまっていない。正解がわからない――。

わかる気がする、とうるし。学生時代、先生が言っていたことをどこにメモしたか、よく探したものでした。

七海は自信たっぷりに、一冊にまとめればいいと答えます。授業中から板書を写すだけでなく、頭の中で整理した形でノートをとる。配られたプリントも切り貼りし、前に学んだ関連事項もメモし、演習やテストで気づいたことも書きこむ。それを受験まで使い続ける。一元化です。それを見れば全部わかるという安心感があって、受験のお守りのようだった、と。

福山「しなくていい」

新卒で編集採用だし、頭がいいんだろうな、と引け目を感じるうるし。それでも、勉強が得意じゃない人には大変そうですね、と口にすると、七海は、それは努力でできるようにするんです、とぴしゃり。

ところが、ここで福山が割って入ります。いや、しなくていい(このセリフは感想で)。

福山は七海の方法を、理想だ、さすが東大生だ、と認めます。そのうえで、たいていの生徒は先生の話を理解するので精一杯で、集中も続かない。授業中に情報を整理し、過去の内容と結びつけてノートを作り上げるのは無理だろう、と続けます。

それでも私はこれで、と言いかける七海に、福山は、君はもともと情報を整理する力が高い、東大に行ける素地があったのだろう、昔からできがよかったからな、と言いました。頬を赤らめる七海。うるしは、福山さんが人のことを覚えているなんて相当な関係では!?と、ますます気が気ではありません。

「きれいなノートにこだわるのをやめる」

福山はあらためて、りーんずさんの相談に向き合います。

授業のノートは、一般化して答えるのが難しい。プリントの穴埋めで進む授業もあれば、問題集が中心の授業もある。板書をきっちり写して提出させ、それが内申点にかかわる場合もある。

そのうえで福山がすすめたのは、まずきれいなノートへのこだわりをやめること。きれいに書くことが目標になり、意味がわからないまま板書を写すのでは本末転倒。授業中にわかっていなければ、家で見返しても何が書いてあるかわからない。

あとから全部まとめなおしたノートを作るのも、おすすめしない。授業でわかったことをもう一度写しても時間のむだ。わかっているか確かめたいなら、問題演習に時間を割いたほうがいい。

「諦めろ」

うるしは、できない人は無理にきれいなノートを目指さず、授業中に理解することが大事、と整理します。でも、ノートがごちゃごちゃ問題は何も解決していないのでは?

だったらやっぱり一冊のノートに、と言いかける七海をさえぎって、福山は不敵に笑い、ひと言(このセリフも感想で)。

ときめく七海に、うるしは、何に? と首をかしげながら、今日3回目だなあ、と冷静なツッコミ。30冊目(ノートのとり方②)へ続きます。

【ガクサン流・ノートのとり方】きれいさより「理解」と「解き直し」

29冊目でぶつかった、七海の「一冊に一元化」と福山の「きれいなノートはやめろ」。どちらが正しいのでしょう。研究でわかっていることから考えてみます。

1. 授業中のノートとりは、頭にかなりの負担

ノートをとるあいだ、人は聞く・理解する・選ぶ・書くを同時にこなしています。研究では、ノートとりは読むことや覚えることよりも大きな負担がかかる、文章を書くのに近いくらい頭を使う作業だと報告されています。(Piolat ほか, 2005)

福山の言う、大半の生徒は先生の話を理解するので精一杯、はまさにこのこと。そこへ見出しの色分けや罫線のデザインまで加えると、肝心の理解に回す頭の余力が減ってしまいます。授業中は「わかること」を優先し、ノートは自分が見返してわかれば十分です。

2. ノートは「とる」より「見返す」が効く

ノートの研究では、ノートをとること自体よりも、あとで見返すことのほうが成績への効果が大きい傾向が報告されています。(Kiewra, 1985)

ただし、見返しても授業中に理解していなければ意味がわからない、というのが福山の指摘でした。授業中にわかったうえで、あとから見返す。順番が大事です。

3. 「まとめ直し」より「問題を解く」

学習法の効果を比べた大規模なレビューでは、ハイライトやまとめ直しは効果が低め、練習テスト(問題を解いて思い出す)は効果が高いと評価されています。(Dunlosky ほか, 2013)

また、思い出す練習は、図にまとめる勉強法よりも、後日のテストの成績がよかったという実験もあります。(Karpicke & Blunt, 2011)

福山の、後から全部まとめ直すのはおすすめしない、理解度を確かめたいなら問題演習、は研究とよく合っています。きれいに書き直す時間を、解き直しの時間に。

4. 七海の「マル付けした後が本体」は正しい

一方で、七海の言う、丸つけのあとが本体、まちがえた原因を記録して見返す、も研究の裏づけがあるやり方です。まちがいに気づいて正しい答えを確かめると、むしろ記憶に残りやすいことがわかっています。(Metcalfe, 2017)

1冊目で福山が教えた「潰す」(まちがえた問題に付箋をつけ、日をおいて解き直す)とも同じ考え方。うるしが「既視感」を覚えたのは、このためでしょう。

ぱっと見まとめ:ノートのとり方

番号名前やること
1理解を優先授業中は板書をきれいに写すより、話がわかることを優先する
2見返すその日のうちにノートを見返し、わからない所に印をつける
3まとめ直さない全部を清書し直す時間は、問題演習に回す
4誤答を記録丸つけのあと、まちがえた原因と直し方を書いておく
5解き直す記録したまちがいを、日をあけて解き直す

ノートのとり方チェックリスト(29冊目から)

  • [ ] 色ペンや罫線を、ノートの目的にしていない
  • [ ] 授業中に「わからない」所に印をつけた
  • [ ] その日のうちにノートを見返した
  • [ ] まちがえた問題の原因と直し方を書いた
  • [ ] 清書の代わりに、問題を解き直した

参考文献

  • Piolat, A., Olive, T., & Kellogg, R. T. (2005). Cognitive effort during note taking. Applied Cognitive Psychology, 19(3), 291–312.
  • Kiewra, K. A. (1985). Investigating notetaking and review: A depth of processing alternative. Educational Psychologist, 20(1), 23–32.
  • Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58.
  • Karpicke, J. D., & Blunt, J. R. (2011). Retrieval practice produces more learning than elaborative studying with concept mapping. Science, 331(6018), 772–775.
  • Metcalfe, J. (2017). Learning from errors. Annual Review of Psychology, 68, 465–489.

ガクサン 29冊目 感想・考察

【今回の一番】「授業中にきれいなノートをとるのは できる奴だけやればいい」

29冊目でいちばん刺さったのは、七海の「努力でできるようにする」を止めた、福山のこの言葉でした。

「授業中にきれいなノートをとるのは できる奴だけやればいい」

ぶっきらぼうですが、言っていることはとても優しい。七海の方法を否定するのではなく、理想だと認めたうえで、それは誰にでもできることではないと線を引いています。

これは1冊目からずっと変わらない福山の姿勢です。19冊目では、ゆかりの勉強のスタートラインは「読んでわかる」ことだと言い、25冊目では、誰にとっても「読んで書いて覚える」がいちばんではない、と認知特性の話をしました。勉強法は、できる人の成功体験ではなく、目の前の人に合わせて選ぶ。参考書オタクの福山が、きれいなノートより問題集を、と言うのも納得です。

自分にあった勉強法ってのを探すのがなかなか難しいんですけどね…。

それをこのブログで見つけて行ってもらえる一助としてもらえれば…、なんてね。

宮下七海は「昔のうるし」の鏡?

新キャラの七海は、東大卒、新卒で編集採用、勉強法にも自信満々。ご相談係の仕事を「かたわらでできちゃう」と言ってしまうあたり、なかなか強烈です。

でも、おじさんは七海を見ていて、3冊目のころを思い出しました。あのころ社内では、ご相談係は「不要な業務」と思われていました。七海の言葉は、その社内の見方をそのまま口にしたものです。

おもしろいのは、うるしがそのたびにカチンときていること。3冊目のうるしなら、言い返せずに落ちこんでいたかもしれません。27冊目で、ご相談係でがんばると決めたうるしにとって、七海は自分の仕事の意味を問い直してくる存在になりそうです。

もうひとつ。七海の「それは努力でできるようにするんです」は、17冊目で語られた、編集者時代の福山の姿にも重なります。後輩に「怠慢」を許さず、正しいことを言い続けて、結果的に編集部を離れることになった福山。その福山が、今は「しなくていい」と言う側にいる。七海は、昔の福山の鏡なのかもしれません。

福山の下の名前は「譲」

29冊目でさらっと明かされたのが、福山の下の名前、譲(じょう)。七海は「ジョーさん」「譲さん」と呼びます。うるしの心の声、いまさらだけど似合わない、には笑ってしまいました。

そして気になるのが、福山と七海の関係です。福山は「話には聞いていた」「久々だな」「昔からできがよかった」と言います。17冊目で山崎さんが、福山は社内、とくに編集者にトラウマがある、と話していましたが、七海に対しては構えた様子がありません。

昔の読者? 親戚? 家庭教師? 東大合格までを知っているような口ぶりからすると、学生時代の七海を知っている人なのは確かです。ふたりの関係は、30冊目以降で明かされそうです。

うるしのモヤモヤ

七海が福山にぴったりくっつくたびに、距離が近くない!?とイラつくうるし。自分でも、私何をイラついてるんだろう、と首をかしげています。

28冊目の、あれから福山さんを意識しちゃう、の続きですね。27冊目で泣きやむまで隣にいてくれた福山に、うるしの気持ちが少しずつ動いているのがわかります。

一方の福山は、七海に「キュン」とされても気づかず、最後の決めゼリフのあとも涼しい顔。七海の登場で、ご相談係に三角関係の風? ただ、うるしの、今日3回目だなあ、という冷静なツッコミを見ると、まだ恋のバトルというより、うるしが一歩引いて見ている感じです。

「諦めろ そして頼れ」――30冊目への引き

ラストの決めゼリフがこちら。

「…諦めろ」「そして頼れ」

授業ノート、演習ノート、塾ノート、提出用。ごちゃごちゃになったノートを一冊にまとめようとするのではなく、諦める。では、何に頼るのか。

おじさんの予想は、「参考書に頼れ」です。授業のノートで全部を完結させようとしなくても、知識は参考書という「完成されたまとめ」にちゃんと載っている。わからないことがあったら、自分のごちゃごちゃノートを探すより、参考書を開けばいい。1冊目から「参考書は学ぶ人間に優しくなってる」と言ってきた福山らしい答えになりそうです。

七海の「完ペキな一冊を自分で作る」と、福山の「完ペキな一冊はもうある」。そんな対比になったらおもしろいですね。答えは30冊目で。

まとめ

  • 28冊目の柱の陰の女性は、新入社員の宮下七海。東大卒で編集採用、今は営業部で研修中
  • 七海は福山を「ジョーさん」と呼ぶ。福山の下の名前は譲(じょう)
  • 七海はご相談係を「本来の仕事のかたわらでできる仕事」と言い、うるしはカチン
  • 相談①ノートの使い方:七海「丸つけのあとが本体」、まちがいを記録して見返す
  • 相談②ノートが何冊もあって整理できない:七海「一冊に一元化」
  • 福山「きれいなノートはできる奴だけやればいい」「まとめ直すより問題演習」
  • 福山は七海を「昔からできがよかった」。ふたりの関係はまだ謎
  • ラスト、福山「諦めろ そして頼れ」――30冊目へ

29冊目は、新キャラ七海の登場で、ご相談係に新しい風が吹いた回でした。「頼れ」の答えと、福山と七海の関係は――。30冊目が待ちきれません!

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