【弱虫ペダル】呉への夏休み旅行|650kmドライブと“社長秘書”井尾谷、クレミナの奇跡の再会(SPARE BIKE大学編)

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まとめ

ファミレスで交わした何気ない雑談が、夏休みに本当に実現しました。金城・荒北・待宮・新開の4人が、車で650km先の広島・呉を目指します。

秋沢湖ロードレース秘話でご紹介したファミレスでの「車で皆で行くのもおもしろいかもね」という新開の一言。その“くだらん雑談”の続きが、待宮の故郷・呉への旅でした。そして旅の裏側では、待宮の相棒・井尾谷諒が、誰も想像しなかった場所で働いていたのです。

この記事では、前半で物語の流れをまとめ、後半でこのおじさんなりの感想・考察を書いていきます。

該当話数はspare.126〜135を参照しています。細かいセリフや掛け合いはぜひ本編でお楽しみください。


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呉の男・井尾谷諒、まさかの「社長秘書」

呉南工業を卒業した井尾谷は、叔父の紹介で船舶部品を扱う地元の大手企業に就職していました。機械いじりが好きで工場勤務を思い描いていたのに、配属されたのはなんと――

「「社長秘書」をやらされとるんじゃ ワシが!?」

スーツ姿でスケジュール管理や来客対応に追われる井尾谷。社長は、インターハイで「アシスト」を務めた経歴を買って井尾谷を採用したと語り、車中では「信用は失うのは一瞬、作るのには10年かかる」という仕事の哲学を聞かせます。


出発前夜と、650kmの深夜ドライブ

一方、静岡の待宮は、呉への旅を彼女のカナに言い出せずにいました。2人で京都に寄る計画を立てていたカナの怒りは頂点に達し、待宮は出発直前まで正座でお説教を受けることに。

「正座じゃいうとる」

新開は東京から輪行で静岡へ。迎えに来た荒北は新開の決めポーズを封じる「バキュン封じ」を披露し、金城の運転で4人は夜の高速へ。運転したがる荒北を金城が断固拒否し、金城が用意したお菓子がせんべいや酢こんぶ、そして“ド定番”のまんじゅうで「中身若者じゃない」とツッコまれる――と、道中は終始にぎやかです。

そんな中、待宮はぽつりと井尾谷への想いを口にします。

「3年間つらさも苦しさも嬉しさも共にした…大切な・・・友達じゃけのう」


呉駅前の喫茶店と、返事が書けない井尾谷

翌日の昼、一行がたどり着いたのは、待宮が高校時代に仲間と通った呉駅前の喫茶店。肉厚ポークカツカレーと手づくり海鮮ピザに舌鼓を打ちますが、待宮が気にしていたのは、春からメールの返事がない井尾谷のことでした。

実は井尾谷は、メールをすべて読んでいました。返事をしなかったのではなく、書けなかったのです。

「つかみ合って目見てそれで話してきたからー‼ 特にあいつとはほとんど「あ」とか「コラ」とか」

社長にチェックを頼んだ断りのメールは、思わず笑ってしまうほどたどたどしいものでした。


とびしま自転車ライドと、荒北の「運んでヤンヨ」

翌日、とびしま海道のライドイベント会場に現れたのは、スポンサー企業の社長に付き添うスーツ姿の井尾谷。ところが待宮は、つい10分前に後輩たちと8km先の第一エイドへ行ってしまっていました。

交通規制で車は通れない。ならば自転車で――荒北は社長の前に進み出て、自分と井尾谷がインターハイで命を削って闘った仲だと頭を下げます。社長が出した答えは「45分じゃ 無傷で返せよ」。

革靴の井尾谷を、新開・金城・荒北が囲んで走り出します。

「運んでヤンヨ待宮んところまで 最速でな!!」

第一エイドでの再会は、「ピアス」「犬ヅラ」と呼び合う、いかにも2人らしいものでした。なぜそこまでしてくれるのかと問う井尾谷に、新開はこう答えます。

「想いがあって 届かなくって あと少しで届けられそうで それを手伝えるんだったら 気持ちいいだろ?」


感想・考察

「くだらん雑談」が本当に実現する、大学生らしさ

まず、このおじさんが好きなのは、旅の始まりがファミレスでの思いつきだという点です。「車でさ皆でさ」なんてノリの話、普通はその場で消えていきますよね。それを本当に夏休みに実行してしまう。

しかも向かう先は650km先。荒北は「すぐじゃナァイ」と言い、金城はお菓子をせっせと用意し、待宮は出発前に彼女に絞られてボロボロ。高校時代は敵同士だった4人が、ただの大学生として同じ車に乗っている――この光景だけで、SPARE BIKE大学編を読んできてよかったと思えました。

井尾谷の「返事が書けない」に、やられました

今回一番刺さったのは、井尾谷がメールを返さなかった理由です。冷たくなったわけでも、忙しすぎたわけでもない。文章が下手で、考えているうちに次のメールが来て、また書けなくなる。

これ、すごくリアルじゃないですか。大事な相手ほど、ちゃんとした言葉で返したくて手が止まる。インターハイではあれだけ体でぶつかり合っていた男が、文字になった途端に一歩も進めなくなる。そのギャップに、井尾谷という人の不器用さと誠実さが詰まっていると感じました。

社長に添削を頼んだ、たどたどしい断りのメールも、笑えるのに少し泣けます。

「アシスト」だった男が、社長を支える仕事に就いている

社長が井尾谷を採用した理由が「チームを支えるアシストをやっていたから」というのも、とても良い設定だと思います。

インターハイで待宮を支えた井尾谷が、今度は社長を支える秘書になっている。荒北に「作戦参謀みたいなことやってたし、適役じゃないか」と言われ、「ちょっとだけ努力が報われた気がする」と感じる場面は、自転車で身につけたものが、社会に出てもちゃんと生きていることを教えてくれます。自転車を続けていない人の人生も肯定してくれる、SPARE BIKEらしい優しさです。

荒北の「運び屋」は、レースの外でも健在

そして何と言っても、とびしま海道での荒北。社長の前できちんと自己紹介して頭を下げ、45分をもぎ取ってくる行動力。高校時代の「運び屋」が、今度はレースではなく、友達に会わせるために人を運ぶんですよね。

先頭を新開、後ろを金城が固め、荒北が井尾谷の前を引く。インターハイでは敵として見ていた面々に守られて走る井尾谷の驚きは、読んでいるこちらまで胸が熱くなりました。

社長という、もう一人の“運び屋”

見逃せないのが社長の存在です。主催者との会話で、自分も10代で働き始め、夜間大学に通って苦労したこと、だからこそ友達の誘いを断ろうとする井尾谷を会わせてやりたかったことが語られます。

実は代理を立てる予定だったこのイベントに、自ら足を運んだのも井尾谷のため。荒北が「運んだ」のは8kmの道のりですが、そのチャンスごと井尾谷を”運んだ”のは社長だったのかもしれません。大人の粋な計らいが、若者たちの無茶を支えている構図がとても好きです。


まとめ

ファミレスでの“くだらん雑談”から始まった650kmの旅は、返事が書けずにいた井尾谷と、ずっと心配していた待宮を、かつてのライバルたちが”運んで”再会させるという、最高の夏休みで幕を閉じました。

高校を出てそれぞれ違う道を歩み始めても、インターハイを共に闘った仲間であることは変わらない。そして、自転車で身につけたものは、社会に出てもちゃんと自分を支えてくれる。SPARE BIKE大学編の中でも、特に爽やかで温かいエピソードでした。

呉南コンビや洋南大学の3人が好きな方は、ぜひ単行本や本誌で、道中の掛け合いまでじっくり味わってみてください。


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