【ガクサン 7冊目】ネタバレ|うるしと参考書の愛し方①。古文は「常識」から? 名著を持っているのに読めない相談者と「積読」(ネタバレ注意!)

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ガクサン

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モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

7冊目は、単行本1巻の最終話。新しい相談は「古文がわからないのですが、おすすめの参考書は?」というもの。シンプルに見えて、実は一筋縄ではいかない相談でした。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

原作の漫画を手元で読みたい方は、こちらからどうぞ。

漫画『ガクサン』1巻(佐原実波/講談社)

参考書オタク福山と新人うるしの出会い。1冊目〜を収録。

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ガクサン 7冊目「うるしと参考書の愛し方①」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

屋上で福山は、参考書での独学受験の最大の弱点を「勉強のやり方の正解がわからないこと」と説明。「志望校が決まったら即、赤本を買え」と語ります。

そして「これが教育格差というものだ」と冷めた顔で言ったあと、「それでもだ 希望はあった」。それが参考書だった、と。

うるしの「私いっしょに頑張りますから!」に、福山は「今の話まとめて提出しろ」とだけ言い残して去っていきました。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 6冊目】うるし、独学受験を考える②。「赤本」は最終関門じゃない――福山が語る独学のコツと「希望はあった」

休日のうるしと、枕元の本の山

休日のうるしは、ベッドでごろごろ。文化的なことをしなきゃとは思うものの、枕元には読んでいない本の山=「積読」がそびえています。

本屋さんに行くとわくわくして、ためになりそうな気がしてつい買ってしまう。読まなきゃ意味がないのは、わかってるんだけど……。

雑誌の甘いもの特集を眺めながら、うるしは数日前のことを思い出します。

相談対応料は「週1の甘いモン」

数日前。独学受験の相談者から、お礼の返信が届きました。「ちょっと希望が持てました」。うるしはほっと胸をなでおろします。

そのとき福山がモグモグしていたのは、この前のフルーツサンド。気に入ったんですか?と聞くうるしに、福山の答えは「週1」。今後の相談対応料として、この手の甘いものを買ってこい、と。

さらに福山は、自分が力を貸すのは参考書をよりよく使ってもらうため、それだけだと念を押します。部署のことも、自分の立場のこともどうでもいい。うるしは笑顔で「はいっ!!」。

新しい相談と「週1先払いだ」

さっそく次の相談が届きます。「高2です。古文がわからないのですが参考書はどれがおすすめですか?」

いぶき社の本を……と言いかけたうるしに、福山は「入門ならウチのよりも…」と何か言いかけて、ぴたり。「週1先払いだ」。

うるしの心の声「ケチ!!」は、しっかり口から出ていました(笑)。

自腹の週1と、「編集の道も…?」

ベッドの上で、うるしは考えます。週1って自腹だよね。コンビニのお菓子じゃ「何のつもりだ?」と言われそう……。

雑誌をめくると、山崎が編集者として紹介された連載記事が。「編集はキュレーターではなく『クリエイター』でありたい」。うるしは「似合いそう~」と思いつつ、自分もこのカッコいい業界のはしっこにいるんだよね、と妄想がふくらみます。

もしかして編集の道も……「いやいやないない!!」。まずはご相談係のSNSを頑張らないと。

書店で、店員さんに捕まる

週明け、うるしは洋菓子店で甘いものを確保。その帰りに、大型書店「山星堂」へ寄ります。福山にまた「にわか」と言われたくないし、自分でも見てみないと。

古文の棚には、文法・単語・常識・読解……。迷っていると、店員さんが声をかけてきました。

当人が来ないとおすすめは難しい、と言いつつ、店員さんはうるしをじっと見て、「あなた自身も詳しくないんですよね?」。差し出されたのは、漫画で読める古典常識の本でした。

わくわくしたうるしは、ついでに漫画の新刊や雑誌も……。会社に戻ってから、「自分の積読増やしてどうすんの…」と崩れ落ちるのでした。

「何がわからないのかすらわからない」相談

福山は「無闇におすすめと言われても困るだろ」とバッサリ。書店でも、「先生に買えって言われたらしくて」という親御さんの質問には困っているそうです。人によって理解度も、必要な本も違うからです。

そこでうるしの切り札、期間限定のりんごタルト。負けた福山は「もう少し情報を聞き取れ」。

ところが、DMで「どこが苦手ですか?」と聞いても、返ってくるのは「古文がわからないです」「高校1年生の範囲です」。さっきは高2と言っていたのに……。

自分のPCから様子を見ていた福山は、イライラ。何がわからないのかすらわからない人がここにたどりつくのは想定しておくべきだった、とぼやきます。

「勉強アカ」の世界

手がかりを探すうるしは、相談者のプロフィールに「#勉強アカ」の文字を見つけます。

検索すると、勉強の記録や点数、タイムラプスを投稿しあうアカウントがずらり。社会人もいっぱいいる。相談者の投稿も、カフェでいちごのドリンクを片手にノートを広げた、オシャレな一枚でした。

勉強への意識は高そうなのに、なぜあんな質問を? 後ろからのぞいていた福山は言います。「この手の子はまず古文常識からじゃないか?」。今の時代に生きる子に、いきなり当時を想像しろと言っても難しいだろう、と。

福山のおすすめは「マドンナ」と「源氏」

福山が薦めたのは、古文常識参考書の「ど真ん中の一冊」。名物講師・荻野文子先生の『マドンナ古文常識』です。平安時代の暮らしや習わしを、コラムとイラストで紹介する本。読み物としても、索引つきの用語集としても使えます。

もうひとつは、漫画で楽しく読める『源氏でわかる古典常識』。源氏物語のドラマを追ううちに、当時の常識が身につく一冊です。

「あっこれ!」と声をあげるうるし。それは、書店で店員さんにすすめられて買った本でした。店員さんと福山の答えが、同じだったのです。

「どっちももう持ってる…!?」

ところが、相談者の投稿を見た福山が固まります。「持ってる参考書~♡」の写真に、今まさに薦めた2冊が写っていたのです。

名著がそろっているのに「古文がわからない」。首をかしげる福山に、うるしははっと気づきます。この子、私と同じタイプなのでは……?

そう、積読です。いい本を買っただけで「やった感」がある。うるしの説明に、福山は「…なるほど」。

そして1巻のラストを飾るのが、このひとことでした。

「この子が知るべきなのは 参考書の愛し方だな」

「愛…!?」と目を丸くするうるし。2巻につづきます。

【ガクサン流・古文の始め方】なぜ「古文常識」から?

7冊目の福山の答えは、「古文がわからない子は、文法や単語の前に、まず当時の常識から」。これが研究から見てどうなのか、調べてみました。

知っている話は、読める

読解の研究で有名なのが、野球にくわしい生徒と、くわしくない生徒に、野球の試合の文章を読ませた実験です。

結果は、ふだんの読解力よりも「野球を知っているかどうか」のほうが、内容の理解や記憶に大きく効いていました。読解力が低くても野球にくわしい生徒は、読解力が高くても野球を知らない生徒より、よく内容を覚えていたのです。(Recht & Leslie\, 1988)

古文に置きかえると、「平安時代の暮らし」を知っている人ほど、古文が読めるということ。福山の「まず古文常識から」は、この考え方にぴったりです。

「何の話か」がわかるだけで、理解が変わる

もうひとつ有名な実験があります。同じ文章でも、先に「何の話か」を示された人は、あとから示された人よりずっとよく理解し、覚えていたというものです。(Bransford & Johnson\, 1972)

古文が「わからない」と感じるのは、単語がわからないだけではなく、そもそも何の場面なのか思い浮かばないから。通い婚、物忌み、方違え……当時の常識は、文章を読むための「地図」になります。

絵や漫画は、遠回りではない

『源氏でわかる古典常識』のような漫画の参考書は、楽をしているように見えるかもしれません。

でも、文字だけより、文字と絵を組み合わせたほうが学びやすいことは、教育心理学で何度も確かめられています。(Mayer\, 2009)

マドンナ古文常識の「コラムとイラスト」も同じ。絵で場面を思い浮かべられると、文章の中身が頭に入りやすいんですね。

積読は悪くない。でも「読む順番」を決めよう

7冊目のオチは「積読」でした。本を買うのは悪いことではありませんが、買っただけで「やった感」が出てしまうのは、うるしの言うとおり。※「やった感」の話は作中のうるしの考えです。

古文なら、常識(読み物)→単語→文法→読解のように、どの本をどの順番で開くかを決めておくと、積読が「次に読む本の棚」に変わります。※順番は一例です。学校の授業や志望校に合わせて変えてください。

今回のガクサン

作中の「今回のガクサン」は、この3冊です(いずれも学研プラス)。

  • 『マドンナ古文常識217 パワーアップ版』(荻野文子)
  • 『マドンナ古文単語230 パワーアップ版』(荻野文子)
  • 『源氏でわかる古典常識 パワーアップ版』(監修 富井健二/マンガ かなゆきこ/シナリオ 吉田順)

『マドンナ古文常識217 パワーアップ版』(荻野文子/学研プラス)

7冊目の「今回のガクサン」。平安時代の習俗をコラムとイラストで紹介する古文常識の定番。

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『源氏でわかる古典常識 パワーアップ版』(監修 富井健二/学研プラス)

7冊目の「今回のガクサン」。源氏物語のマンガで古典常識が身につく一冊。

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ぱっと見まとめ:古文が「わからない」ときの始め方

番号名前やること
1わからない所を言葉にする単語・文法・場面のどこでつまずくか書き出す
2古文常識を読む平安時代の暮らしや習わしを読み物で知る
3絵や漫画を使う場面を思い浮かべられる本から入る
4単語を覚える常識とセットで、よく出る単語を覚える
5文法を固める助動詞など、読むための文法を押さえる
6読解で使う実際の文章を読み、知識を当てはめる
7積読を見直す持っている本を並べ、読む順番を決める

チェックリスト

  • [ ] 「古文のどこがわからないか」を一言で言えるか
  • [ ] 平安時代の暮らし(結婚・住まい・行事など)をイメージできるか
  • [ ] 古文常識の本を、少なくとも1冊ひと通り読んだか
  • [ ] 単語帳を、常識の本とあわせて使っているか
  • [ ] 持っている参考書を、全部書き出してみたか
  • [ ] その本を「どの順番で読むか」決めているか
  • [ ] 「買っただけ」で満足している本はないか

参考文献

  • Recht, D. R., & Leslie, L. (1988). Effect of prior knowledge on good and poor readers’ memory of text. Journal of Educational Psychology, 80(1), 16–20.
  • Bransford, J. D., & Johnson, M. K. (1972). Contextual prerequisites for understanding: Some investigations of comprehension and recall. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 11(6), 717–726.
  • Mayer, R. E. (2009). Multimedia learning (2nd ed.). Cambridge University Press.

ガクサン 7冊目 感想・考察

【今回の一番】「参考書の愛し方だな」

このおじさんが7冊目で一番ぐっときたのは、1巻を締めくくるこのひとことです。

1冊目で福山は「ただ参考書が好きなだけだ」と言っていました。6冊目では、参考書が「希望」だったと語りました。

そして7冊目。名著を持っているのに読めていない相談者に、福山が教えたいのは「どの本を買うか」ではなく「本との付き合い方」。参考書を誰よりも愛してきた人の言葉だからこそ、説得力があります。

「愛…!?」と赤くなるうるしもかわいい。2巻の幕開けが楽しみになる引きでした。

相談対応料は「週1の甘いモン」

6冊目の記事で「福山は甘党?」と書きましたが、まさかの確定です(笑)。

しかも「今後の相談対応料として」。フルーツサンドで態度がコロッと変わった5冊目、いちごみるくを飲んでいた6冊目と、ちゃんと積み重ねがあるのがうれしいところ。

7冊目でも、りんごタルトを出された福山は「負けた」の顔。福山攻略の鍵は、やっぱり甘いものでした。

「俺の立場のことはどうでもいい」

ただ、甘いもののくだりの直後に、福山は大事なことを言っています。部署のことも自分の立場もどうでもいい。力を貸すのは、参考書をよりよく使ってもらうためだけ。

3冊目で「不要な業務」と言われたご相談係を、なんとかしたいうるし。福山はそこには乗らない、と線を引いた形です。

でもこれ、裏を返せば「読者のためなら手を貸す」という宣言。2冊目の「参考書は昔よりずっと学ぶ人間に優しくなってる」から変わらない、福山の軸ですね。

店員さんと福山の答えが同じだった

7冊目でおもしろかったのが、書店の店員さんと福山が同じ本にたどりついたこと。

店員さんは、うるし本人を見て「あなた自身も詳しくないんですよね?」と漫画の本をすすめました。福山は、相談者のSNSを見て「この手の子は古文常識から」と判断しました。

どちらも「相手を見てから本を選ぶ」。1冊目の聖暁中の男子への対応から、福山がずっとやってきたことです。「妖怪っぽい」と言われた店員さん、また出てきてほしいですね。

「何がわからないのかすらわからない」は、いちばん多い悩み

福山は「何がわからないのかすらわからない奴」とイライラしていましたが、これは勉強が苦手な人のいちばんよくある状態だと思います。

だからこそ、うるしが相談者のSNSまで見にいったのはお手柄。本人が言葉にできない「わからない」を、まわりから探りにいったわけです。5冊目の記事で紹介した「援助要請」は、助けを求める側の話でした。7冊目は、助ける側がどう聞き出すかの話になっています。

「勉強アカ」と積読

勉強アカの投稿はオシャレで、やる気もありそう。それでも、持っている名著は読めていない。

ここで「SNSばっかり」と切り捨てないのが、この作品のやさしいところ。うるしは「私と同じタイプなのでは…!?」と、自分の積読と重ねて考えます。

冒頭のうるしの本の山が、そのままラストの伏線になっていたのも見事でした。積読の気持ちがわかるうるしだから、気づけた答えです。

山崎の連載と、うるしの「編集の道も…?」

さらっと出てきた雑誌の連載で、山崎は「編集はクリエイターでありたい」と語っていました。5冊目の「いぶき社は保守的すぎる」とつながる、山崎らしい言葉です。

そしてうるしの「もしかして編集の道も…」という妄想。すぐ「ないない!!」と打ち消しましたが、福山が編集部を離れた「いろいろ」や、山崎の「今度お願いしたいこと」とあわせて、2巻以降の伏線になりそうです。

まとめ

  • 福山の相談対応料は「週1の甘いもの」。力を貸すのは「参考書をよりよく使ってもらうため」だけ
  • 新しい相談は「古文がわからない。おすすめの参考書は?」。何がわからないのかが本人にもわからない
  • うるしは書店で、店員さんに漫画の古典常識の本をすすめられる
  • 福山のおすすめは『マドンナ古文常識』と『源氏でわかる古典常識』。まずは「古文常識」から
  • ところが相談者は、その2冊をすでに持っていた。原因は「積読」
  • 1巻のラスト、福山「この子が知るべきなのは 参考書の愛し方だな」

「参考書の愛し方」とは、いったい何なのか。うるしと福山は、積読の相談者にどう答えるのか。2巻の幕開け、8冊目が楽しみです。

続きが待ちきれない方は、漫画でひと足先にどうぞ。

漫画『ガクサン』(佐原実波/講談社)全巻

モーニングで連載された、学習参考書の出版社が舞台のお仕事漫画。

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