【ガクサン 19話ネタバレ】19冊目|うるしと小学生の勉強。福山「勉強は受験のためにするものではありません」――スタートラインは「読んでわかる」、漢字力・語彙力・読解力の育て方

ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

19冊目は「うるしと小学生の勉強」。ドリルに手を付けない姪のゆかり。福山はビデオ通話で、姉のあかねに「勉強のスタートラインは『読んでわかる』ことです」と語ります。そして、ガクサン屈指の名場面――「勉強は受験のためにするものではありません」。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

原作の漫画を手元で読みたい方は、こちらからどうぞ。19冊目は3巻に入っています。

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ガクサン 19冊目「うるしと小学生の勉強」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

連休に地元の富士宮へ帰ったうるしは、姉のあかねに頼まれて、小学5年生の姪ゆかりのドリル選びを手伝います。何が一番かは自分で見て選ばないとわからない、とうるしが選んだのは『なぞ解きストーリードリル』でした。

ところが、ゆかりは1回も手をつけず。話を聞いた福山は、問題はそこではないのだろうと、あかねにビデオ通話をかけます。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 18話ネタバレ】18冊目|うるしの参考書選び。姉あかねの「お願い」は姪のドリル選び

「ヤバ先輩」とビデオ通話

うるしの姉の望月あかねです、よろしくお願いします、ヤバ先輩――テンションの高いあかねに、福山はあいさつもそこそこに、ドリルの話を始めます。本題に入るのが早い(笑)。福山はあかねより年下らしく、めずらしく敬語です。

福山は状況を確認します。ゆかりはこの春から5年生。授業は聞けていて、テストの点数も悪くない。ただ、漢字や読み間違いなどのケアレスミスは多い。家では勉強せず、集中がもつのは20分くらい。

選んだドリルはいい、でもそれ以前の問題かもしれない、と福山は言います。

興味うんぬん以前に「読む」ための基礎

福山の見立ては、興味うんぬん以前に、「読む」ための基礎ができていないのではというものでした。

漢字がすっと読めなかったり、苦手意識があったりしないか。あかねは思い出します。低学年のころ、漢字の書き取りをすごく嫌がった時期があった。赤ペンでびっしり直された書き取りを、ゆかりは見られるのを嫌がっていました。

そんなに細かく見る必要があるのかと憤るうるしに、福山は、文化庁の指針では、字の細部に違いがあっても骨組みが同じなら誤りとはみなされないと説明します。そのうえで、学校では教科書体の指導が原則で、それに沿った書き取りは、子どもがルールを守れるようになるという意味では有効だ、と。

勉強は細かなルールの連続で、その先に発展的な内容が続いていく。

学校が低学年から宿題をさせるのは、ルールを守ることや時間配分、集中する方法を実践で身につけるため。それができていないから、今困っているのだ、と。

自分が気づかなかったせいだと涙目になるあかね。福山さんが全部なんとかしてくれる、と言ううるしに、福山は「丸投げだな」(笑)。

勉強のスタートラインは「読んでわかる」

「勉強のスタートラインは『読んでわかる』ことです」

福山が示したのは3つの力です。

  • ①漢字力:漢字を読んで意味が理解できる
  • ②語彙力:言葉を読んで意味が理解できる
  • その先に読解力:文章全体の内容を正確に読み取れる

これは国語にかぎらず、教科書や参考書で勉強するために必要な力。ゆかりは今、勉強の「基礎の基礎」でつまずいているのかもしれない、と。

福山の参考書選び

まずは漢字への苦手意識を改善して、①の漢字力を。福山がすすめたのは、読みの訓練から始められる『徹底反復 五年生の漢字』(音読→読み書き→熟語)と、漢字を部首ごとに章にした、くもん出版の『小学5年生 漢字にぐーんと強くなる』。部首から意味を推測できるようになるのも、読む力につながるそうです。

いぶき社の本ではないのか、と驚くあかねに、うるしは「いつもこうなの」。

②の語彙力には、うるしが選んだ『なぞ解きストーリードリル』が、言葉が長文の中でどう使われるかを実践的に学べる、と認められます。それでもやる気が出ないなら、抵抗をなくすために漫画から入るのがいいと、『マンガでわかる! 10才までに覚えたい言葉1000』を挙げました。

「勉強は受験のためにするものではありません」

あかねは、中学受験はしないし、大学に行くかもわからない、勉強がだめでも大人にはなれる、くらいの気持ちで……と言いかけます。うるしもうなずきます。

福山の答えは、正直、そんなのんきなことを言っている段階ではないというものでした。

親でも教育者でもない自分が言えることではないかもしれないが、今が踏ん張りどきだ、と。難関中学受験の国語は、公立高校の入試問題より難しい場合がある。同じクラスにも、それくらい「読める」子がいる。すでにそれだけの差が、距離ができている。

授業や友達の話がわからなければ、どんどん世界が狭まっていく。わからないことが多ければ多いほど自信がなくなり、生きづらくなる――。

「…勉強は受験のためにするものではありません」

「学んだことが将来なんの選択肢にも繋がらなくてもいい」「夢もやりたいこともなくていい」「でも基本的な勉強はきちんと積み重ねたほうがいい」「それは勉強が この社会で人が自信をもって生きていくために重要だからです」

最後に福山は、勉強を嫌がる子を前に疲れてしまう気持ちはわかる、でも子どものために、どうか考えるのをやめないでほしいと伝えました。

あかね「あの子は昔から『何かに夢中な人』が好き」

うるしが電話で席を外したすきに、あかねは福山に、うるしが憧れるのもわかる、母として反省した、と言います。

そして、あの子は昔から「何かに夢中な人」が好きなのだと。

自分では好きなものがないと思っている。そういう人に憧れては、いろいろなものに手を出してへこたれる。福山は4冊目のうるしの「うらやましいから言ってるんです!」を思い出し、わからなくはない、ときどきうっとうしいくらいだ、と返します。

あかねはお礼に、富士山っぽい地元のお菓子を送ると約束。福山は素直にお礼を言います。

「夢もやりたいこともなくていい」が、うるしに刺さる

夕方6時。福山は瞬間移動のような速さで帰っていきます(笑)。

うるしは思います。さっきの福山はやっぱりすごかった。自分も参考書の世界をもっと勉強して、あんなふうに話せたら。でも――。

福山の「夢もやりたいこともなくていい」が、チクッと刺さります。

この気持ちだけは、答えが見つかっている人にはわからないのかもしれない。

帰りぎわ、うるしが見つけた掲示は「社内公募制度のお知らせ」。息をのむうるし。20冊目へ続きます。

【ガクサン流・読む力の育て方】「読んでわかる」がスタートラインは本当か

19冊目の福山の「勉強のスタートラインは『読んでわかる』こと」。これは読書研究の大事なテーマです。研究とあわせて見てみましょう。

1. 読解力の土台は「言葉の知識」

読解の研究では、文章を理解する力の中心には、一つ一つの言葉(単語)の知識があると考えられています。単語の読み方・意味・使われ方をよく知っているほど、文章の意味をすばやく正確に組み立てられる、というものです。(Perfetti & Stafura, 2014)

福山の「①漢字力→②語彙力→読解力」は、この考え方と同じ順番です。日本語では、漢字が読めることが「言葉の知識」の入口になります。

2. 「読める子」と「読めない子」の差は、広がっていく

福山の「すでにそれだけの差が…距離ができている」。読書研究には「マタイ効果」という有名な考え方があります。早いうちに読むのが得意になった子は、たくさん読むので語彙が増え、さらに読むのが得意になる。逆に、読むのが苦手な子は読む量が減り、差がどんどん広がっていく、というものです。(Stanovich, 1986)

「今が踏ん張り時です」は、決しておどしではないんですね。5年生は、まだ間に合う時期でもあります。

3. 漢字の「とめ・はね」はどこまで正解?

作中で福山が紹介した文化庁の指針は、「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」(平成28年、文化審議会国語分科会)です。とめ・はね・はらいなどの細かな違いがあっても、漢字の骨組みが同じなら誤りとはしない、という考え方が示されています。

一方で、学校では教科書体に沿って指導するのが原則。福山の言うとおり、どちらが正解というより、「ルールを守る練習」としての書き取りと、「読めて意味がわかる」ことを分けて考えるのがよさそうです。漢字が嫌いになってしまったら、まずは「読める」を優先しましょう。

家で使うなら

  • 子どもが教科書の1ページを音読して、読めない漢字・意味がわからない言葉にしるしをつける
  • しるしが多ければ、学年を少し下げた漢字ドリルで「読み」から始める
  • 語彙は、漫画や1コマのイラストつきの本から入る
  • 書き取りの細かな直しは、嫌がるなら一度ゆるめて「読める・意味がわかる」を先に

ぱっと見まとめ:読む力の育て方

番号名前やること
1漢字力音読から入るドリルで、まず「読める」漢字を増やす
2語彙力漫画やストーリーつきの本で、言葉の意味と使い方を知る
3読解力短いお話を読んで問題に答え、文章全体をつかむ練習をする
4早めに差は広がっていくので、気づいたときに始める

読む力チェックリスト(19冊目から)

  • [ ] 教科書の1ページを、つっかえずに音読できる
  • [ ] 読めない漢字が、1ページに2〜3個以内
  • [ ] 意味がわからない言葉を、自分で調べたり聞いたりできる
  • [ ] 短いお話を読んで、「だれが・何をした」を言える
  • [ ] 親が「考えるのをやめない」で、ときどき様子を見ている

参考文献

  • Perfetti, C., & Stafura, J. (2014). Word knowledge in a theory of reading comprehension. Scientific Studies of Reading, 18(1), 22–37.
  • Stanovich, K. E. (1986). Matthew effects in reading: Some consequences of individual differences in the acquisition of literacy. Reading Research Quarterly, 21(4), 360–407.
  • 文化審議会国語分科会 (2016). 常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告).

【今回のガクサン】小学生の「読む力」の本

作中の「今回のガクサン」欄に載っていたのは、福山とうるしが選んだこれらの本です。

漢字力には、音読から始める『徹底反復 五年生の漢字』(陰山英男/小学館)と、部首ごとに学べる『小学5年生 漢字にぐーんと強くなる』(くもん出版)。


語彙力・読解力には、うるしが選んだ『なぞ解きストーリードリル』と、漫画から入れる『マンガでわかる! 10才までに覚えたい言葉1000』。


あかねが「歴史に疎い大人にもいいかも」と言っていた歴史人物バージョンも、欄に載っていました。

※作中のゆかりは5年生です。学年に合わせて「○年生」の巻を選んでください。

ガクサン 19冊目 感想・考察

【今回の一番】「勉強は受験のためにするものではありません」

19冊目の一番は、もちろんこの場面です。おじさんは、ここを何度も読み返しました。

勉強の大切さは、ふつう「将来の選択肢」で語られます。いい大学、いい会社。18冊目のうるしのお父さんの「選択肢がたくさん得られるように」もそうでした。

でも福山は、選択肢にも、夢にもつながらなくていいと言い切ります。

それでも勉強が大事なのは、わからないことが多いと世界が狭まり、自信がなくなり、生きづらくなるから。勉強は、将来のための道具である前に、今を自信をもって生きるための土台なのです。

そして最後の「考えるのをやめないでほしい」。勉強を嫌がる子を前に、親が疲れてしまうのは当たり前。それをわかったうえでお願いする。きびしいけれど、子どもと親の両方を見ている言葉だと思います。

【考察】福山の言葉は、福山の過去から出ている

6冊目で、福山は独学の受験生に教育格差の話をし、それでも希望はあった、それが参考書だ、と語りました。自分よりも「持っている」人たちがいる、とも。

19冊目の「すでにそれだけの差が、距離ができている」は、その「差」を自分の身で知っている人の言葉に聞こえます。参考書だけで一橋大学に受かった福山にとって、勉強は「自信をもって生きる」ためのものだったのかもしれません。

そして17冊目の、怠慢は参考書の質を下げ、読者の人生に響く、という言葉。参考書は読者の人生に響く。だから勉強も、子どもの人生に響く。福山の言葉は、全部一本の線でつながっています。

「夢もやりたいこともなくていい」が刺さる、うるし

ゆかりやあかねを救った言葉が、うるしにはチクッと刺さる。19冊目の終わり方は見事でした。

うるしは16冊目で「自分は何者でもないまま」、17冊目で「夢中になれるものが見つかるかと思って」と言っていました。夢ややりたいことを探している人にとって、「なくていい」は救いにも、置いていかれた気持ちにもなる。

答えが見つかっている人にはわからないのかもしれない――福山とうるしのあいだにある「距離」が、ここで初めてはっきり描かれます。

あかねが見ている、うるしと福山

19冊目のもうひとつの名場面は、あかねのあの子は昔から「何かに夢中な人」が好きというひと言です。

さすがお姉ちゃん。うるし本人が気づいていないことを、ちゃんとわかっています。

そして福山の、わからなくはない、ときどきうっとうしいくらいだ、という返し。4冊目の「うらやましいから言ってるんです!」を思い出しながらの、この言葉。福山も、うるしのことをちゃんと見ているのですね。

あかねの「母として反省」も、いい場面でした。勉強がだめでも大人にはなれると流しかけた母が、福山の言葉で考え直す。ガクサンの相談は、いつも相談者の周りの人まで変えていきます。

社内公募制度と、20冊目への期待

ラストの「社内公募制度のお知らせ」。17冊目で山崎さんがほのめかしていた、社内で異動を願い出る道が、ここで形になりました。

福山には言えない「編集者になりたい」。でも、憧れてしまうものは仕方ない。うるしは手を挙げるのか。そしてそれを知ったとき、福山はどうするのか。

まとめ

  • 福山があかねとビデオ通話。ゆかりは興味うんぬん以前に「読む」ための基礎ができていないのでは
  • 低学年のときの漢字の書き取りの嫌な思い出。文化庁の指針と教科書体の指導
  • 勉強は細かなルールの連続で、その先に発展的な内容が続いていく
  • 勉強のスタートラインは「読んでわかる」こと。①漢字力 ②語彙力 → 読解力
  • 『徹底反復 五年生の漢字』『漢字にぐーんと強くなる』『なぞ解きストーリードリル』『マンガでわかる!10才までに覚えたい言葉1000』
  • 「勉強は受験のためにするものではありません」。この社会で人が自信をもって生きていくために重要だから。考えるのをやめないでほしい
  • あかね「あの子は昔から『何かに夢中な人』が好き」
  • 答えが見つかっている人にはわからないのかも、とうるし。そして「社内公募制度のお知らせ」

19冊目は、ガクサンを読んできていちばん心に残った回かもしれません。うるしは社内公募に手を挙げるのか。20冊目が待ちきれません!

続きが待ちきれない方は、漫画でひと足先にどうぞ。

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