【盤上のオリオン 108話ネタバレ】「いつも通り勝つ」――受け師が烈火になる日、17戦目が始まる

盤上のオリオン

週刊少年マガジン掲載の漫画 盤上のオリオン最新話の感想、考察をお届け。

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盤上のオリオン 第108話 最新話 あらすじ(ネタバレ注意)

前回までのあらすじ

佳澄碧が女性初の棋士になりました。

残る昇段枠はひとつ。

残り2戦で可能性があるのは、二宮夕飛(2敗)・市川周鳳(2敗)・七尾正文(3敗)の3人です。

最終日前夜も、夕飛はいつも通りに過ごしていました。

前回の記事はこちら【盤上のオリオン 第107話】

今回のあらすじ

東京将棋会館、三段リーグ最終日。

3敗の七尾正文は、残りひとつの枠に手をのばすため、自分を奮い立たせます。

上には2敗が2人。ここで二宮をたたければ、まだ蜘蛛の糸はつながっている――。

ところが会館のロビーは、緊張感とは無縁の光景でした。

四つんばいになった佳澄碧の背中に、ポッキーがジェンガのように積み上げられているのです。

積んだのは生方橙和。しかも積んだら去っていくので捕まえられません。

エレベーターからは、ゾンビのような二宮夕飛が出てきます。

続く苅野勉三と木佐貫も死にそうな顔。

原因は、前日の佳澄碧の昇段祝いでした。

七尾が対策は万全なのかと探ると、二宮は、いつも通りご飯を食べ、いつも通り生活して、いつも通り勝つと答えます。

そして17戦目がはじまります。

七尾の予想を裏切り、二宮の仕掛けは異常に早いものでした。

受け師のはずの二宮が、まるで烈火のように攻めてくる。

つまずいてはいられない、力ずくで押して通る――二宮の覚悟がにじむところで、次号へ続きます。

▶ 次の話(109話)はこちら → 【盤上のオリオン 109話ネタバレ】「朔、ここまで来たよ」――市川周鳳が背負う約束と、運命の18戦目

盤上のオリオン 第108話 X(旧Twitter)での反応

盤上のオリオン 第108話 感想・考察・まとめ

七尾正文という「3敗の男」

108話は、七尾正文の独白からはじまります。

3敗、枠は残りひとつ、上には2敗が2人。

それでも二宮に勝てば、わずかながら蜘蛛の糸はつながっている。

太い縄でも手すりでもない、細く切れそうな糸というたとえが切実です。

しかも七尾は、また昇段争いに加われる保証はない、天運も大事だと自分でわかっています。

実力があっても、時期が悪ければ上がれない。上がれなければ、また半年。

三段リーグの残酷さが、この独白に詰まっていました。

「罵られて喜ぶドM」という愉快な異名で登場した七尾が、今回は人生をかけた一局に臨む男として描かれます。

この作品は毎回、主人公の対戦相手にちゃんと物語を持たせてくれるのです。

ポッキー・ジェンガと「二宮君・オブ・ザ・デッド」

ところが緊張の独白の直後に映るのが、四つんばいの佳澄碧です(笑)。

女性初の棋士になった人が、翌週には背中にポッキーを積まれている。

この落差のつけ方が本当にうまい。

七尾が「佳澄姉」とたたえると、佳澄は「エセ関西人」と一刀両断。

そして生方への愚痴の中に、地域限定のお菓子はうれしい、とはさんでしまうところが佳澄らしくてたまりません。

エレベーターから出てきたゾンビ状態の二宮には、七尾の「二宮君・オブ・ザ・デッド!!」という命名が冴えていました。

木佐貫にいたっては、対局相手から盤の位置を注意される始末。

最終日の朝に盤の位置がわからないほどの二日酔い――今回いちばん笑ったシーンです。

昇段祝いの「地獄絵図」が意味するもの

この惨状の原因は、前日の佳澄碧の昇段祝いでした。

二宮によれば、おじさんたちが自分のことのようにはしゃいで、最終的には地獄絵図になったそうです。

「自分のことのように」――ここが大事なところです。

佳澄の昇段は、佳澄1人のものではありませんでした。

106話の壱岐の言葉、あやめの「女だって棋士になれる」という叫び、手が届く距離にいながら上がれなかった木佐貫の思い。

みんなが自分の悲願として喜んだから、地獄絵図になるまで飲んだのです。

最終日の朝に主要人物が寝不足という、緊張感ゼロの絵。

でもこの光景は、前回の歴史的快挙が、ちゃんと人間の喜びとして着地した証拠だと思います。

Xでは「現実が漫画に追いつく日はいつになるだろう」という声もありました。

漫画の中でさえ、これだけの人が泣いて笑って飲みつぶれるほどの出来事なのです。

【考察】大会関係者の祈り「すべての試験者に実りを」

喧騒の中に、静かで格調高いモノローグが差しこまれます。

大会関係者は、絶対的な強さで駆け抜けた者もいれば、最終日までもつれこむ大混戦もある、面白い期だったと振り返ります。

そして、時期さえ違えば昇段してもおかしくない戦績ばかりだからこそ惜しい、と。

最後は願わくばすべての試験者にとって、実りある三段リーグであってほしいという祈りでした。

おじさんは、ここで背筋がのびました。

七尾の「天運も大事」という嘆きと、まったく同じことを運営側の視点から語らせているのです。

100話で天戸が語った「屍の上に立つ棋士たち」は、去っていった者の分まで背負って上がる、という話でした。

大会関係者の祈りは、その裏返しの言葉になっています。

敗れる者にも実りがあってほしい――このひと言があるから、この作品の勝負は残酷なだけで終わらないのだと思います。

「いつも通り勝つ」――107話の答え合わせ

二宮の「いつも通り勝つ」は、107話の「いつも通りがいいんです」の答え合わせでした。

前回、最終日前夜に将棋教室とバーでバイトをして、ずっと張りつめていては疲れる、と言っていた夕飛。

その言葉が、翌日そのまま結論として置かれます。

「いつも通り」を何度もくり返した最後に「勝つ」が来る。

日常のくり返しの果てに、勝利を当たり前のものとして置く言い方です。

107話で「一人になるのが怖い」「負けるかもしれない」と揺れていた夕飛が、この言葉を口にする。

揺れを隠したのではなく、揺れたまま「いつも通り」を選んだのだと、おじさんは受け取りました。

【今回の一番】受け師が烈火になる

そして17戦目、今回の白眉です。

七尾の想定は完全に崩されます。

仕掛けが早い、聞いていたのと違う。

さらに二宮は、銀を損してでも押し切る強行突破を選びます。

七尾の「受け師じゃないがか?……まるで烈火のようや」という絶叫が、すべてを代弁していました。

これは棋風の変化というより、覚悟の表れだと思います。

受けは、相手の攻めを待つ棋風です。待つには時間の余裕がいります。

でも今日は待てない。今日負ければ、来期まで待たされるのは自分のほうです。

「いつも通り勝つ」と言った男が、いつも通りではない将棋を指す。

この矛盾こそが、夕飛の本気の証拠になっていました。

「三人は常に僕の先を行く」――4人の神童の構図が動く

ラストで、夕飛の心の中が明かされます。

彼方、清太郎、碧。3人は常に自分の先を行く。

でも、僕も行く。立ちふさがるなら覚悟しろ。

106話で壱岐が語った4人の神童――久慈彼方、鞍馬清太郎、佳澄碧、そして二宮夕飛。

清太郎に「お前はいつも遅い」と言われた夕飛が、その「遅さ」を自分の言葉で引き受けたのです。

追いつくのではなく、行く。

祖父の死後23連敗した少年が、盤の前で「力ずくで押して通る」と言う日が来ました。

【将棋用語】受け師・急戦・銀損

今回の対局に出てきた言葉を、少しだけ整理しておきます。

  • 受け師: 相手の攻めをしっかり受け止め、しのいでから反撃する棋風の棋士。二宮の異名「新世代の受け師」はここから来ています。
  • 仕掛けが早い・急戦: 囲いを固めきる前に、序盤から攻めにいく指し方。相手に準備の時間を与えない代わりに、自分の守りも薄くなります。
  • 銀損: 銀を取られて、駒の損得で損をすること。それでも攻めを続けるのは、駒の損よりも相手の玉に迫るスピードを優先した、ということです。

受け師が駒を損してでも攻める。七尾が「聞いていたのと違う」と叫んだのも当然でした。

まとめ——ゆるい朝から、烈火の一局へ

108話は、構成が見事な回でした。

七尾の切実な独白、ポッキー・ジェンガと二日酔いの地獄絵図、大会関係者の祈り、「いつも通り勝つ」、そして烈火の急仕掛け。

笑いと祈りと闘志が、この順番で並んでいます。

前半のゆるさがあるからこそ、盤の前に座った瞬間の温度差が際立ちました。

蜘蛛の糸をつかもうとする3敗の男と、先を行く3人を追う2敗の男。

どちらにも勝たせてやりたいと思わせるのが、この作品の性格の悪さです(笑)。

来週が待ちきれません!!

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