モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。
34冊目は「うるしと予習復習②」。33冊目のラスト、福山の「復習するべきなのはいつか、10字以内で答えよ」の答え合わせから始まります。前半は復習の習慣づけと世界史の参考書3冊の使い分け、後半は、なんと山崎さんと赤城さんのサシ飲み。山崎さんの気持ちに、ひとつの答えが出ます。
以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。
ガクサン 34冊目「うるしと予習復習②」あらすじ(ネタバレ注意!)
前回までのあらすじ
個展の帰り、うるしは山崎さんに、編集者を目指すのはやめてご相談係でがんばる、と伝えました。山崎さんは笑顔で受けとめたものの、ひとりになると「置いていかれた感」に襲われ、ヤケ買いに走ります。
週明け、ご相談係には部活で忙しい高校1年生から、予習と復習の相談が。福山は、予習は時間がかかるわりにメリットが小さい、授業がわからないならまず学び直しを、と答え、復習は「メリットしかない」と断言。定期テスト前にまとめて復習するのは圧倒的不正解だ、と言い切ったところで続きとなりました。
前回の記事はこちら → 【ガクサン 33話ネタバレ】33冊目|うるしと予習復習①。山崎の「置いていかれた感」とヤケ買い――福山「予習はデメリットのほうが大きい」、復習は「メリットしかない」
10字以内の答え
定期テスト前がダメなら、週に一度とか?と答えたうるしに、福山はにやりと、それも不正解。そしてボードに大きく書いた答えは、たった2文字でした(このセリフは感想で)。
10字以内と言ったのはひっかけ。高校生は1日に6〜7コマも授業があるのに、と驚くうるしに、福山は、だからこそだ、と返します。
授業は毎日どんどん進む。前の授業がぼんやりとしか残っていないまま、新しい内容を積み上げていくのは効率が悪い。作中では、箱を積み上げようとして崩してしまう男子の絵で描かれています。理想は、帰宅後、なんなら授業直後の休み時間に復習をすませ、定期テストの前にもう一度復習する形だ、と福山。
習慣づけのカギは「小テスト」
理屈はわかるけれど、毎日はモチベーションが続かなそう、とうるし。福山は、学生には絶好の機会がある、と言います。それが小テスト。
テストをくり返すことは、復習をくり返すことと同じ。進学校で小テストが多いのもそのためだ、と福山。小テストをその場しのぎにせず、ちゃんと点が取れるように毎日準備する。それが復習を習慣にする第一歩だというのです。
自分の学校では小テストは英語くらいだった、といううるしに、福山は、小テストのない教科は、かわりに問題演習を習慣にしてほしい、と続けます。
世界史Bなら、この3冊
例として福山が棚から出したのは、世界史Bの参考書3冊。どれも山川出版社です。同じ世界史でこんなに?と驚くうるしに、福山は、レベルごとの使い分けが肝心だ、と解説を始めます。うるしいわく、参考書オタクのスイッチが入った状態。
1冊目は『改訂版 流れ図で攻略 詳説世界史B』。左ページに歴史の流れを図にした「流れ図」、右ページに基本事項の穴埋め問題。右ページを小テストのように使え、問題文がそのまま流れ図の説明になっているので、埋めて読むだけで復習になる。同じ時代にほかの国で何が起きていたかがひと目でわかる、とうるしも感心します。
2冊目は、もっと難しい用語まで確認したい人向けの『書きこみ教科書 詳説世界史 改訂版』。本文は同じ出版社の教科書と同じで、用語の部分だけが穴埋めになっている。授業で習ったキーワードをそのまま確かめられる一冊です。
3冊目は、手軽に復習したい人向けの『山川 一問一答世界史』。うるしにもおなじみの一冊です。ただし福山は、手軽とはいえ答えは紙に書くのがおすすめ、と念を押します。書けないと点にならない、中国史なんかは特に、と。
いぶき社の本も悪くないですよね?と聞くうるしに、福山の答えは、及第点ではあるが……。毎度ながら困る回答です。
部活の子への「許容範囲」
最後に福山は、毎日とは言ったが、と少しだけ譲歩します。部活や青春に夢中になりたいなら、当日は最低限ノートを見返して、週末にまとめて演習するのも許容範囲。ただし、週末に大変になるのは自分だ、と。
ちなみに「復習のメリットほぼ100%」の「ほぼ」は何ですか?と聞くうるしに、福山は、同じ内容のくり返しで少し飽きるかもしれない、そこはがまんしろ、と答えました。
夜の編集部、沈む山崎
場面は変わって、夜の編集部。校正作業に集中しすぎて遅くなった赤城さんが、第一編集部にひとり残っている山崎さんを見つけます。
いつものキラキラした山崎さんとは別人のような、どんよりした顔。思わず、ご飯でも行きます?と声をかけると、返ってきたのは、ビールが飲みたい、のひと言でした。
桃三郎のサシ飲み
ふたりは町中華「桃三郎」へ。山崎さんはいきなりジョッキを一気に空けます。ふたりきりで飲むのは初めてかも、と思いながら、赤城さんは軽い冗談のつもりで、うるしさんにでもフラれたんですか、と聞きました。
ところが山崎さんは、違う、と言いかけて、違わないかも、と認めます。始まる前に終わった感じ、と。思ったよりガチだった、と赤城さんは内心びっくり。
山崎さんは、うるしを自分と同じ側の人間だと思っていたのに、そうではなかった、勘違いしていた、とこぼします。そこへ赤城さんが少し意地悪な一言。最初から「うるしちゃん」と呼んでいる時点で、ちょっとなめていましたよね? 山崎さんは、厳しくない!?と言いつつ、そんなつもりは……あったかも、と認めました。
うるしは福山の影響で、あっという間に変わっていく。福山を頼るべきなのもわかっている。でも自分は、思っていた以上にダメなやつなのかも――。
赤城の「ダメで結構!!」
そこで赤城さんがジョッキをあおり、勢いよく言い放ちます(このセリフは感想で)。
自分だって京都大学を出たのに、顔で選んだ働かない彼氏に振り回されてばかり。周りがうらやましくても、自分はこんなものだと思うしかない。ビールがおいしいからそれでいい――。赤城さんの思わぬ本音に、山崎さんは、ダメでいいのか、とつぶやきます。
うるしがまぶしいのは自分も同じ、と赤城さん。山崎さんも、何も知らない世界に飛びこんで、自分の足で立とうとしているのはすごい、まぶしいけれど嫌いにはなれない、とうなずきます。
そして山崎さんは、ぽつりと自分の気持ちを口にし(このセリフも感想で)、そのままテーブルに突っ伏して寝てしまいました。
ありえない、とあきれる赤城さん。でも、不覚にもこのダメな先輩をちょっとかわいいと思ってしまった。むかつく、とつぶやいて、会計は山崎さんのカードで払うのでした。
【ガクサン流・復習の習慣】毎日・小テスト・レベル別の一冊
33冊目に続いて、福山の復習の助言と、それを裏づける研究をまとめます。
1. 復習は「毎日」、テスト前は「もう一度」
作中の福山の答えは、毎日の復習(できれば授業直後や帰宅後)と、定期テスト前のもう一度。
ドイツの心理学者エビングハウスが19世紀に示した「忘却曲線」は、学んだ直後ほど急速に忘れることを表したものです。この実験は近年あらためて再現され、同じような結果が確かめられています(Murre & Dros, 2015)。忘れる前に、こまめに思い出すのが、毎日の復習の意味です。
さらに、復習と復習のあいだを少しずつあけていくと記憶が長持ちすること、覚えておきたい期間が長いほど、間隔も長めにとるとよいことが、大規模な実験で示されています(Cepeda ほか, 2008)。毎日の復習と、テスト前のもう一度。福山の「理想の形」は、この研究とよく合っています。
2. 小テストは「最強の復習」
福山の言う「テストをくり返すこと=復習をくり返すこと」は、心理学ではテスト効果と呼ばれます。たくさんの研究をまとめた分析でも、読み直すより、思い出す練習(テスト)をしたほうが記憶に残ることが確かめられています(Rowland, 2014)。
小テストを「その場しのぎ」にしない、というのがポイント。小テストの前に一度思い出し、本番でもう一度思い出す。それだけで、思い出す回数が2回に増えます。
3. 「書く」は、点を取るための練習
福山は、一問一答でも答えは紙に書け、と言います。
研究では、頭の中で思い出すだけでも、声や文字に出すのと同じくらい記憶に効く、という結果もあります(Smith ほか, 2013)。つまり、記憶のためには「思い出す」こと自体が大切。それでも福山が書くことをすすめるのは、本番は書かないと点にならないから。中国史の人名や王朝名のように漢字が難しいものは、書けて初めて得点になります。
4. 参考書は「レベル別」に選ぶ
同じ世界史Bでも、流れをつかむ本、教科書の用語を確かめる本、手軽に確認する一問一答と、役割がちがいます。
8冊目で福山は、店頭で「苦手なところが腑に落ちるか」「得意なところが簡単すぎないか」を確かめろ、と言っていました。30冊目の「軸足の一冊」とあわせて、自分のレベルに合った一冊を、小テスト代わりに使うのが、34冊目のまとめです。
ぱっと見まとめ:復習の習慣
| 番号 | 名前 | やること | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 当日の復習 | 授業直後や帰宅後に、ノートを見返して思い出す | 毎日。部活の日は見返すだけでもOK |
| 2 | 小テスト | その場しのぎにせず、前日に一度思い出しておく | 小テストのある教科 |
| 3 | 問題演習 | 穴埋め・一問一答で小テスト代わりにする | 小テストのない教科。週末にまとめても可 |
| 4 | テスト前 | もう一度、全体を復習する | 定期テストの1〜2週間前 |
復習の習慣チェックリスト(34冊目から)
[ ]授業のあった日に、一度はノートを見返した[ ]小テストの前日に、範囲を思い出す練習をした[ ]小テストのない教科は、問題集で自分にテストした[ ]漢字や用語は、紙に書いて答えた[ ]自分のレベルに合った一冊を選んだ
参考文献
- Murre, J. M. J., & Dros, J. (2015). Replication and analysis of Ebbinghaus’ forgetting curve. PLoS ONE, 10(7), e0120644.
- Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H. (2008). Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention. Psychological Science, 19(11), 1095–1102.
- Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432–1463.
- Smith, M. A., Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2013). Covert retrieval practice benefits retention as much as overt retrieval practice. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 39(6), 1712–1725.
ガクサン 34冊目 感想・考察
【今回の一番】「…やっぱりうるしちゃんのこと好きなのかも 俺」
34冊目でいちばん心に残ったのは、桃三郎で山崎さんがつぶやいた、この一言でした。
「…やっぱりうるしちゃんのこと好きなのかも 俺」
31冊目の「このままで俺はいいのか?」、32冊目の「これってデートだよな」、33冊目の「置いていかれた感」とヤケ買い。おじさんは31冊目の考察で、山崎さんの「このままで」には恋と仕事の両方の意味がある、と書きました。34冊目で、少なくとも恋のほうは、山崎さん自身の口から「好きなのかも」という形で答えが出たことになります。
しかも、それを聞いたのはうるしではなく赤城さん。言ったそばから寝落ちする、という締まらなさも含めて、山崎さんらしい告白でした。
「最初からなめてましたよね」
赤城さんの鋭い一言も、見逃せません。最初から「ちゃん」づけで呼んでいる時点で、ちょっとなめていましたよね、と。
思い返せば、17冊目で山崎さんはうるしを「ミーハー」と評し、24冊目では「こっち側の人」、つまり自分と同じく、何かに夢中になりきれない側の人だと思っていました。でもうるしは、27冊目で自分の答えを見つけ、33冊目ではご相談係としてブレずにがんばると言い切った。
山崎さんが落ちこんでいるのは、フラれたからというより、うるしを自分の物差しで小さく見ていたと気づいたからなのだと思います。それを「…あったかも」と認められるのは、山崎さんの誠実さですね。
赤城の「ダメで結構!!」
もうひとつの名場面が、赤城さんのこの叫びです。
「ダメで結構!!」
京都大学を出て、28冊目では自信作のドリルを語っていた赤城さん。そのいっぽうで、私生活では思うようにいかないことも多い、と打ち明けます。人と比べればうらやましいことばかり。でも、自分はこんなもの、と受け入れて、ビールがおいしければそれでいい。
自分は思っていた以上にダメなやつかも、と落ちこむ山崎さんに必要だったのは、励ましではなく、ダメでもいいという許しだったのかもしれません。13冊目の福山の「俺にもうまくやれない原因があるんだろう」、26冊目のうるしの「私になんにもないから!」。ガクサンの登場人物はみんな、どこかで「自分はダメだ」と思っています。それを笑い飛ばしてくれる赤城さんの強さが、まぶしい場面でした。
赤城と山崎、新しい組み合わせ
そして、ラストの赤城さんの心の声。不覚にも、このダメな先輩をちょっとかわいいと思ってしまった、むかつく。
20冊目には、しをり会で真剣なうるしを、赤城さんがじっと見ているようなコマもありました。28冊目では、赤城さんがうるしに、山崎さんに何か言われたのかと聞いています。赤城さんは前から、山崎さんとうるしのことを少し離れたところから見ていた人なのかもしれません。
赤城さんには、28冊目から名前の出ている彼氏がいます。だからこれが恋になるのかはわかりません。それでも、うるしと福山、うるしと山崎、に続く新しい組み合わせとして、ふたりの今後が気になります。
そして、以前からのうるしちゃんと福山、そして山崎さん、この人たちの人間模様もこの作品の魅力になっていますね。
「毎日」と「ダメでいい」
前半の復習の話と、後半の飲み会。まったく別の話に見えて、34冊目にはひとつの共通点があると感じました。
福山の答えは、復習は毎日。でも、部活の子は当日に見返すだけでもいい、週末に大変になるのは自分だが、と譲歩しました。理想は理想として、できない日があっても続ければいい。そして赤城さんは、ダメでもいい、と言った。
完璧じゃなくていいから、毎日を積み重ねる。31冊目でうるしが福山に返した「積み重ねてきたもの」という言葉が、34冊目では勉強にも、山崎さんの心にもつながっているように思います。
33冊目の予想の答え合わせ
最後に、前回の考察の答え合わせです。おじさんは、復習のタイミングは「その日のうちに」を軸に、間をあけてくり返す、と予想しました。
正解は「毎日」。そして理想は授業直後や帰宅後、テスト前にもう一度。ほぼ当たり、ということにしておきます。10字以内、というのがひっかけだったのは、さすがに読めませんでした。
まとめ
- 復習するべきなのは「毎日」。授業直後や帰宅後に復習し、定期テスト前にもう一度
- 習慣づけには「小テスト」を利用。小テストのない教科は問題演習で代わりに
- 世界史Bは山川出版社の3冊をレベル別に。一問一答も答えは紙に書く
- 部活で忙しいなら、当日はノートを見返し、週末に演習するのも許容範囲
- 夜の編集部で沈む山崎を、赤城が桃三郎に誘う。「うるしさんにフラれた?」に「違わないかも」
- 赤城の「ダメで結構!!」。山崎は「やっぱりうるしちゃんのこと好きなのかも」と言って寝落ち
- 赤城は、このダメな先輩をちょっとかわいいと思ってしまい「むかつく」
34冊目は、福山の復習講座の答え合わせと、山崎さんの恋心がはっきりした回でした。勉強も恋も、完璧じゃなくていい。山崎さんと赤城さん、そしてうるしと福山はこれからどうなるのか。35冊目が待ちきれません!

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