週刊少年マガジン掲載の漫画 盤上のオリオン最新話の感想、考察をお届け。
以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。
盤上のオリオン 第112話 最新話 あらすじ(ネタバレ注意)
前回までのあらすじ
佳澄碧が初の女性棋士となる。
もう一人棋士になるのは!?
2敗同士の対決、二宮夕飛(2敗)・市川周鳳(2敗)。
第18戦最終戦の対局が始まった。
市川の回想で、朔のフルネームが千歳朔だと判明。
幼き日の久慈彼方との二面指しで、朔は棋士の夢を折られていた。
そして朔は市川に告げる。「お前は俺の夢や」と。
前回の記事はこちら【盤上のオリオン第111話】
今回のあらすじ
中学時代の回想から始まる。
朔は市川を連れて、高梨隆士六段のもとへ弟子入りのお願いに来ていた。
「お願いします先生!! こいつを弟子にしたってください!!」
「久慈彼方と同等 否!! それ以上の才能」と土下座で熱弁する朔。
高梨六段も朔の期待は認めるが、気になるのは本人のやる気。
「あります!! バリあります!!」と答える朔の隣で、当の市川は——正座のまま爆睡していた。
当然、追い出される二人。
これで師匠候補に断られるのは3人目。
帰り道の河川敷で、市川は「師匠なんていらなくね?」「俺の師匠はお前やろ」と言う。
しかし朔は首を振る。
「奨励会に入るには師匠の推薦がいる その師匠は棋士でなければならん」
「俺では お前を棋士にしてやれん」
一方、現在の第18戦。
二宮はいつの間にか囲いを菊水矢倉から銀冠へと進化させていた。
守りを薄くしてでも攻めの圧力を高める市川。
対する二宮は、5二の金を4三→4二と動かす一手損で、あえて市川に手番を渡す。観戦する生方も「え…」と目を見張る。
三角パスで「こちらに攻めさせるか」と受けて立つ市川。
そして回想の河川敷。
「俺は棋士になる」
振り返った朔は、涙をこぼしながら笑っていた。
「勝って 僕の代わりに 棋士になってや」
師の悲願は弟子の悲願 師の敵は弟子の敵
「朔 お前の仇は 俺が討つ」
市川は角を陣中深くに打ち込む。
しかし二宮は静かに告げる。
「ずっと市川さんは勘違いをしていると思います」
8五桂、そして4四角——市川が攻めて空けたスペースに「スナイパー」が据えられる。「さすが“タケノコ”」とつぶやく生方。
「あなたの相手は彼方じゃない 僕だ」
次号は休載です。
盤上のオリオン 第112話 X(旧Twitter)での反応
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— Lichtenstein (@_chamomi_le) September 23, 2026
私に断りもなく次号休載なんて許さないわよっ#盤上のオリオン #月お姉様を愛でる会 #会員番号8番 🥰
— 大吉😻-大悟🐶-eighter🌈 (@IORI50189560) September 24, 2026
盤上のオリオン 第112話 感想・考察・まとめ
「睡拳爆烈発動中」——笑わせておいて、刺してくる冒頭
まず冒頭、ここ数話の重い回想のあとに来たのがこれである。
土下座して「この市川ゆう男は天才です!!」と叫ぶ朔。
「ボコボコにされて涙鼻水ふん尿流れるもん全部流して逃げ帰って来た俺が言うんです」——前回あれだけ静かに折られた男が、自分の挫折をネタにして頭を下げている。
そして肝心の市川は、正座したまま「睡拳爆烈発動中」。
おじさん、ここは声を出して笑った。
でも、笑ったあとで気づく。
朔は3人の棋士に頭を下げて、3回とも断られているのだ。
しかも「次は本部に」「その前に木佐貫さんに」と、まだ諦めていない。
自分の夢を断ち切られた少年が、今度は他人の夢のために何度も頭を下げている。
111話の「お前は俺の夢や」は、口だけの言葉じゃなかった。
「俺では お前を棋士にしてやれん」——いちばん悔しい一言
市川の「俺の師匠はお前やろ」は、彼なりの最大限の信頼の言葉だと思う。
将棋を教えてくれたのも、夢を見せてくれたのも朔だ。
けれど朔はそれを「あかん」と退ける。
「俺では お前を棋士にしてやれん」
奨励会に入るには、棋士である師匠の推薦がいる。
棋士になれなかった朔は、そのルールのせいで、自分の「夢」の師匠にすらなれない。
この一言は、朔が夢を折られた日の、二度目の敗北宣言でもある。
久慈彼方に負けたときは「ムリって思ってもうたら人間終いや」と笑って済ませた。
でも今回は、大事な友達の前で、自分の限界を自分の口で言わなければならなかった。
おじさんには、こっちのほうがずっと痛く見えた。
【今回の一番】泣きながら笑う朔——「僕の代わりに棋士になってや」
そして、今回いちばん心を持っていかれたページ。
「俺は棋士になる」と言った市川に、朔が振り返る。
その顔は、目にいっぱい涙をためて、それでも笑っている。
「勝って 僕の代わりに 棋士になってや」
ここ、ぜひ本編で見てほしい。
セリフだけ抜き出すと前回の「勝ってや周鳳 勝って棋士になってや」とほぼ同じだ。
違うのは「僕の代わりに」の一語と、あの表情である。
久慈彼方に折られた日の朔は、泣かなかった。
むしろ泣いていたのは勝った久慈のほうで、朔は「僕が泣かしたんじゃないんです!!」と慌てていた。
夢を断ち切られた日には泣けなかった少年が、夢を託す日に泣いている。
悔しさの涙なのか、うれしさの涙なのか。
おじさんは、どちらでもあるのだと思う。
自分ではもう届かない場所へ、代わりに行ってくれると言う友達がいる。
諦めた夢が、もう一度動き出した瞬間の涙だ。
背景の河川敷と空がやたらと明るく描かれているのも、きっと偶然じゃない。
この1ページのために、110話から3話かけて朔の過去を積み上げてきたんだと思うと、もう一度読み返さずにはいられなかった。
「お前の仇は俺が討つ」——師の敵は弟子の敵
朔の涙を受けて、市川のモノローグが入る。
「師の悲願は弟子の悲願 師の敵は弟子の敵」
ここでハッとさせられる。
朔は「俺では師匠になれん」と言った。
でも市川は、ずっと朔を師匠として指している。
制度の上の師匠は別にいても、市川周鳳の将棋の「師」は千歳朔なのだ。
だから師の敵——朔の夢を断ち切った久慈彼方は、弟子である自分の敵になる。
「朔 お前の仇は 俺が討つーー」
眠そうな顔で、何を考えているのかわからなかった市川の、いちばん熱い一面が見えた場面だった。
111話の「行くで 朔」から続いて、市川は今回も朔と一緒に指している。
【将棋用語】一手損・三角パス、8五桂と4四角「スナイパー」
今回は盤上でも大きな動きがあったので、将棋用語を少し整理しておきたい。
もっと他の将棋用語をじっくり知りたい方は → 将棋用語まとめ
菊水矢倉から銀冠へ
前回、二宮が組んだ菊水矢倉は玉を低く構える「しゃがみ矢倉」だった。
今回、市川が気づいたときにはそれが銀冠(ぎんかんむり)に組み替えられていた。
銀冠は、玉の頭上に銀をかぶせるように配置する、上からの攻めに強い囲い。
(銀冠については98話の記事でも解説している。)
しゃがんで待つ形から、上部に厚い形へ。二宮は攻め合いを見越して、囲いを「進化」させていたわけだ。
一手損・三角パス
二宮は5二の金を4三→4二と動かした。
5二から4二なら本来1手で行ける。それを4三を経由して2手かけた。
つまりわざと1手損をして、相手に手番を渡したことになる。
駒の動きが三角形を描くので「三角パス」とも呼ばれる。
将棋にパスはないが、こうして実質的にパスをすることで「先に動いてください」と相手に攻めさせる。
市川の「三角パスでこちらに攻めさせるか 望む所」は、その意図を読んだうえで受けて立った一言だ。
8五桂と4四角「スナイパー」
市川が角を打ち込んだ直後、二宮は8五桂と跳ねる。
市川が気づく。「飛車先の歩を8四で留めていたのはこのため?」
普通、飛車先の歩は8五、8六と伸ばしていくことが多い。
二宮はそれを8四で止めておいた。8五の地点を、桂馬の跳ね先として空けておくために。
序盤の何気ない一手が、ここで意味を持つ。
そして4四角。
市川が攻めのために動かした駒のあとにできた空間に、遠くから利く角を据える。
観戦していた生方の「スナイパーを設置した」という表現がぴったりだ。
電脳棋界四天王を追いかけていた生方が、ここで二宮を「さすが”タケノコ”」とハンドルネームで呼ぶのもにくい。
一手損で攻めさせ、攻めで空いたスペースを狙う。
二宮夕飛は、市川が攻めてくることまで込みで盤面を組み立てていた。
「あなたの相手は彼方じゃない 僕だ」——二宮夕飛の言う「勘違い」
そしてラスト。
「ずっと市川さんは勘違いをしていると思います」
「あなたの相手は彼方じゃない 僕だ」
痺れた。
今回の市川は、ずっと「久慈彼方」を見て指している。
朔の仇を討つ。久慈彼方を倒す。そのために棋士になる。
その気持ちは本物だし、今回いちばん胸を打つ部分でもある。
でも、それは盤の向こうに座っている二宮夕飛を見ていない、ということでもある。
市川の心の声にも「将棋の神が愛したもうた運命の子か… 彼の先に久慈彼方がいる」とあった。
二宮を、久慈彼方へ続く道の途中にいる存在として見ていたわけだ。
二宮はそれを、盤上と言葉の両方で突きつけた。
おじさんがうまいと思うのは、この言葉が二宮自身への宣言にもなっているところだ。
108話で「受け師じゃないがか?」と七尾に驚かれた、あの烈火の将棋。
106話で壱岐が語った「同時期に奨励会に入った4人の神童」。
二宮はずっと、久慈彼方と並べられ、比べられてきた側の人間だ。
そんな二宮が「彼方じゃない 僕だ」と言う。
誰かの影としてではなく、二宮夕飛として盤の前に座っている。
【考察】「4人の運命の子」と、託された者同士の対局
今回の終盤には「4人の——運命の子」というモノローグと、4人の足元だけが描かれるコマがある。
久慈彼方、鞍馬清太郎、佳澄碧、そして二宮夕飛。
前回おじさんは、幼い久慈彼方を泣かせた「東京の奨励会の子」が二宮夕飛ではないかと書いた。
もしそうなら、今回の「あなたの相手は彼方じゃない」はさらに重くなる。
市川が倒したい相手に、昔すでに一度勝った男が、目の前にいる。
朔の仇を討つには、まずこの「運命の子」を越えなければならない。
そして忘れてはいけないのが、二宮もまた託された側だということ。
107話で茅森月に言われた「棋士になって私を待ってて」。
市川は朔の涙を背負い、二宮は月との約束を背負っている。
どちらが勝っても、誰かの夢がひとつ終わる。
この対局を「勝者唯一人が棋士となる」と描いてきた意味が、ここへきて本当に重たくなってきた。
あとこれは余談になるかもだが、市川の師匠が誰になったのかも、あわせて気になるところである。
まとめ——泣きながら託された夢と、「僕だ」の一言
112話は、回想と対局が交互に進みながら、最後にふたつの「宣言」がぶつかる回だった。
整理するとこうなる。
- 朔は市川の師匠探しで3人の棋士に断られていた(市川は爆睡)
- 「俺では お前を棋士にしてやれん」——棋士でない朔は師匠になれない
- 朔は泣きながら笑って「僕の代わりに棋士になってや」と託した
- 市川は「師の敵は弟子の敵」と、朔の仇・久慈彼方を倒すと誓う
- 二宮は一手損(三角パス)で市川に攻めさせ、8五桂・4四角「スナイパー」で応じた
- そして「あなたの相手は彼方じゃない 僕だ」
朔の涙で火がついた市川と、「僕だ」と言い切った二宮。
市川が次に見るべきなのは、久慈彼方ではなく目の前の二宮夕飛なのか。
それとも、朔の仇を見据えたまま押し切るのか。
ここから先は、託された者同士の、本当の殴り合いだ。
残念ながら次号は休載。
再来週が、待ちきれません!!
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キャラクターや将棋用語をじっくり知りたい方は → 盤上のオリオン まとめ・一覧
これまでの対局の流れを振り返りたい方は → 過去の最新話一覧

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