【弱虫ペダル】六溝山レース中編|巻島のダンシング解禁!東堂「この時を待っていたよ」と仮名森の反骨心(SPARE BIKE大学編)

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まとめ

大学シリーズ最終戦・六溝山(ろくみぞさん)レースの中編です(前編・中編・後編の3部作)。

明早大のセカンドエース・仮名森に挑発された巻島は、田所との約束で得意のダンシングを封印したまま丘の前哨戦に突入。そしてレースは15kmの登りへ――。

赤いジャージの巻島と東堂が、ついに「味方として」同じ山を登ります。

一方で、仮名森にも盾崎に救われた過去がありました。「王と騎士」の明早大と、「3年越しの夢」を叶えた筑士波大。二つのコンビがぶつかる山岳戦を、前半であらすじ、後半でこのおじさんなりの感想・考察としてまとめます。

該当話数はspare.161〜166(六溝山レース5〜10)を参照しています。前編(spare.157〜160)は「六溝山レース前編」の記事をどうぞ。決着は後編(spare.167〜)でまとめます。


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田所の「まだだ」――封印されたダンシング

周回コースの800mの丘。仮名森の挑発に乗って飛び出した巻島ですが、なぜかサドルに座ったまま。

実はスタート前、田所から「山に入るまではダンシングを使うな」と言われていたのです。

巻島のダンシングは速いけれど、大学シリーズではまだ知られていない。見せれば警戒される――。「ちょっとななめくらいだろ?」ととぼける巻島に、田所は「あるわ!!」と即答。

そんな事情を知らない仮名森は、「ミドリガメ」「オトモダチのためにィ!!」と挑発し放題。それでも巻島は歯を食いしばって耐えます。

ところが仮名森が、東堂のことを「ダセーカチューシャ」と言った瞬間――

「すまねェ田所っち!!」


丘の前哨戦、3秒だけの「とっておき」

丘の最後の150mは見通しの悪いつづら折り。巻島はカーブの陰に隠れてダンシングを使い、一気に仮名森の真横へ並びます。

「見開いた目!! 1…2…3… 3秒黙らせたショ!!」

並んだ直後にダンシングをやめ、あとはわざとらしく失速。丘の頂上は仮名森に譲りました。

集団に戻って「負けたショ」と言いながらゴキゲンな巻島に、東堂は「なんでゴキゲンなんだ!?」。

一方の仮名森は「どうやった!?」と首をひねりつつも、「懐刀」の存在を疑い始めます。


逃げの吸収と「ありがとよ修作ゥ」

周回を終えると、コースはT字路を左へ。ここからが今日のメインステージ、ゴールの山頂まで続く15kmの登りです。

明早は福富・新開が、筑士波は田所が集団を引いてペースを上げ、荒北・石垣・修作たちの「逃げ」は残り12kmで吸収されます。

そのとき、巻島が修作の肩をポンとたたきました。

「よくやった 助かったよ ありがとよ修作ゥ」

「なんかすげー嬉しいんですけど――!!」と舞い上がる修作。そして巻島は、ここで初めて修作の下の名前を覚えます(名字は相変わらず「星園」ですが)。


新開が明かす「巻島裕介」

道幅が狭まり、斜度が上がる区間の手前で、新開が盾崎と仮名森に告げます。

彼は総北のクライマーで、インターハイ1日目の箱根の山岳では、うしろから単独で先頭に追いつき、東堂と山岳賞を争って互角だった――。

「ガチガチのクライマーじゃねェか」と悔しがる仮名森は、「あのミドリガメはオレの網で捕獲する!!」と宣言します。

残り9km。田所の「出ろ東堂!!」、福富の「お願いします盾崎さん!!」の声とともに、両チームのクライマーが2人ずつ飛び出しました。


ダンシング解禁――「懐刀か!!」

「もうダンシングは使っていいんだよな?」と確認する巻島に、田所は「ああ!!盛大に使え!!」。

丘の件で詰め寄ってくる仮名森を、巻島は相手にしません。

「邪魔すんな オレは今こいつと久々に レースで真剣に登る時間を堪能してんだショ!!」

腰を上げ、左右に大きく車体を振る、あの独特のダンシング。

「何だてめェその異様なまでに傾くダンシングはァ!!」「なのに速えぇ!!」

丘で並ばれた理由を悟った仮名森は叫びます。「それがてめェの――懐刀か!!」


「夢のようだよ!! 巻ちゃん!!」

先行する筑士波の2人。並んで走りながら、巻島がふと言います。

「おまえと勝負じゃねェ登りってのも 楽しいな」「初めてだな!!ショ!! レースの山岳で味方で走るてのは!!」

東堂の頭によみがえるのは、高3の夏祭りの夜。同じ大学で走りたいと願ったこと、「イギリスだ」と告げられたこと。それでもいつ巻島が戻ってきてもいいように、筑士波大に部をつくっておいたこと。

「それは全て この瞬間を迎えるためだよ 巻ちゃん!!」

うれしさのあまり、つい巻島の横に並んでしまう東堂。「並んでどうする尽八!! 今はオレが前引いてるショ!!」とツッコまれ、「すまんね この瞬間が楽しすぎてね!!」と大笑いします。


「登坂の時の東堂くんは 音がしない」

盾崎のペースアップで、明早がついに追いつきます。

うるさい巻島のダンシングの音、盾崎の車輪の音――でも、もう一人の音が聞こえない。「東堂は力尽きたか」とほくそ笑む仮名森に、盾崎が静かに言います。

「登坂の時の東堂くんは 音がしないんだよ」

振り返ると、そこには涼しい顔の東堂。「てめエら正反対かよ!!」と仮名森は絶叫します。

盾崎は「もう一枚アシストがいれば」と前回の筑波山を振り返りつつ、東堂がネガを修正してきたことを認めるのでした。


仮名森の過去――王と騎士

残り5km。仮名森は「この2番手のポジションだけはゆずれねェ」とさらにペースを上げます。

東堂が抱いた疑問――ひとつ上の学年なのに、なぜインターハイで名前を聞かなかったのか。

答えは、仮名森がインターハイに出られなかったからでした。奈良の高校で自分だけが強く、3年間出場権を逃し続け、最後の夏は大会ボランティアとしてコースの外から同年代の選手を見ていた。

明早大に入っても経歴がないためC班に回され、レースには出られず雑用ばかり。「ダサイ」ジャージを着ずにいた仮名森に声をかけたのが、当時2年の盾崎でした。

「ルールはある 守るべきだとオレは思ってる」「けど それよりも大切なのは感情だと思ってる」

経歴の「クライマー」の文字を覚えていた盾崎は、一緒に山を走り、「磨けば光る」とレースに誘います。

「王の側にいて守んのは騎士の役目だろうがよ!!」

残り4km。東堂は「あれは勝負を決める加速だ!!」と叫び、巻島は「チイッ!!」――筑士波大はピンチを迎えたまま、後編へ続きます。


感想・考察

【今回の一番】「それは全て この瞬間を迎えるためだよ」

このおじさんが一番グッときたのは、やっぱりspare.165の東堂です。

「東堂尽八と巻島裕介の“別れ”」の記事で書いたとおり、東堂は明早大を志望していた巻島と同じ大学に行きたくて、そして巻島がイギリスへ行くと知って、一度はひどく落ち込みました。

それでも筑士波大に進み、自分で部を立ち上げた。「いつでもおまえが戻ってきていいように」――つまり、戻ってくる保証なんてどこにもなかった。

普通なら「来るかもしれない」くらいで部なんてつくりません。それでもつくった。その「一縷の望み」が、日本留学編での峠の再会、そしてこの六溝山につながっています。

そう考えると、「夢のようだよ!!」は大げさでも何でもなく、東堂にとってはそのままの本音なんですよね。並んで走っちゃって巻島に怒られるところまで含めて、最高のシーンでした。

「ダセーカチューシャ」で巻島が動いた理由

巻島が田所との約束を破ったきっかけは、自分への悪口ではありませんでした。

「ミドリガメ」「ヒーロー気取り」と散々言われても耐えていたのに、東堂を「ダセーカチューシャ」と言われた瞬間、「べつにオレのこと言われたワケじゃねェのに 無性に腹が立つショ!!」。

自分のことより友人のことで怒る。巻島はそういう男です。

それでも、約束を完全に破ったわけではないのが巻島らしいところ。つづら折りの死角でだけダンシングを使い、並んだらすぐにやめる。「見られなきゃいい」という理屈はずるいけど(笑)、田所の作戦をちゃんと守りつつ、仮名森を3秒黙らせた。

この「3秒」が、後で仮名森に「懐刀」を警戒させる伏線になっているのも上手いですね。

仮名森は「もう一人の荒北」なのかもしれない

spare.166の仮名森の過去を読んで、このおじさんが思い出したのは荒北靖友でした。

腐りかけていたところを、強いエースに拾われる。そのエースを誰よりも慕い、エースの「次」のポジションは誰にも譲らない。荒北にとっての福富が、仮名森にとっての盾崎なんですよね。

そして盾崎の言葉、「ルールより感情が大切」「このカッコイイ方のジャージを着たいんだろ?」。ジャージを着ない1年生を叱らずに、その悔しさを走る力に変えさせた。明早大のエースは、速いだけでなく人を見る目があるということがよくわかります。

最初は「ミドリガメ」を連発するただの嫌な先輩に見えた仮名森が、この一話でぐっと好きになりました。敵にもちゃんと背負っているものがある――これぞ弱虫ペダルです。

「王と騎士」vs「3年越しの友」

明早大と筑士波大のクライマー2人ずつ。この構図の対比がとても面白いです。

  • 明早大:盾崎(王)と仮名森(騎士)。上下関係と忠誠で結ばれたコンビ
  • 筑士波大:東堂と巻島。対等なライバルから味方になったコンビ

仮名森は「盾崎さんを超えんのはオレが許さねェ」と、盾崎を勝たせるために走ります。巻島もまた「山の上までオレが連れてく」と東堂を勝たせるために走る。

目的は同じ「エースを勝たせる」なのに、関係性がまったく違う。どちらの絆が最後の4kmで上回るのか。決着は後編で見届けましょう。

【自転車用語】ダンシングと「音のしない」クライム

今回のキーワード、ダンシングについて整理しておきます。

ダンシングとは、サドルから腰を上げて立ちこぎする走り方のこと。体重をペダルに乗せられるので、急な登りや加速で大きな力を出せます。反対に、サドルに座ったままこぐのがシッティングです。

巻島のダンシングは、車体を左右に大きく傾ける独特のフォーム。見た目は「キモチ悪い」(荒北談)ですが、とにかく速い。

ちなみに仮名森のフォームも「一見粗野で大振り」。それでも東堂いわく「体の振りが全て推進力に代わっている」。型破りなフォームのクライマー同士がぶつかっている、というのもまた面白いところです。

一方の東堂は、本編でも「音がしない」クライマーとして有名。無駄な動きがなく、フレームのきしみもペダルの音もほとんど立てずに登ります。

ギャンギャンうるさい巻島と、無音の東堂。仮名森の「てめエら正反対かよ!!」は、2人の走りを一言で表した名ツッコミでした。


まとめ

六溝山レース中編は、巻島と東堂が初めて「味方」として山を登るという、ファンが夢見た展開になりました。

  • 田所の作戦でダンシングを封印した巻島は、つづら折りの死角で仮名森を3秒だけ黙らせた
  • 逃げは吸収され、巻島は修作に「ありがとよ」
  • 残り9kmで両チームのクライマーが飛び出し、巻島がダンシング解禁
  • 東堂は「それは全てこの瞬間を迎えるためだよ」と3年越しの夢をかみしめる
  • 仮名森の過去が明らかに。盾崎は仮名森にとっての「王」だった
  • 残り4km、仮名森の勝負の加速で筑士波大はピンチに

「二位と二位」だった東堂と盾崎、そして2人を支える巻島と仮名森。山頂のゴールで笑うのはどちらのコンビなのか。

残り4kmの決着は、六溝山レース後編でまとめます。


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