【ガクサン 14話ネタバレ】14冊目|編集者っていらなくないですか?②。福山は編集部の「トラブルメーカー」だった?――編集者は「ハブ」、そして「参考書は、編集者の愛のかたまりなんです。」

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ガクサン

モーニング(講談社)で連載された漫画、佐原実波『ガクサン』のネタバレと感想・考察をお届け。

14冊目は「編集者っていらなくないですか?」の後編。音声収録、著者のスカウト、行き詰まった打ち合わせ。編集部見学ツアーの続きで、うるしは「机の外」の編集者の仕事を見て回ります。そして、福山が編集部でなぜ「もめた」のかも、少しだけ見えてきました。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意ください。

原作の漫画を手元で読みたい方は、こちらからどうぞ。14冊目は2巻に入っています。

漫画『ガクサン』2巻(佐原実波/講談社)

「参考書の愛し方」から始まる2巻。8冊目〜を収録。

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ガクサン 14冊目「編集者っていらなくないですか?②」あらすじ(ネタバレ注意!)

前回までのあらすじ

しをり会に誘われた福山は「断る」。「俺は編集には関わらないほうがいい」と言います。そこへ、ご相談係のTwitterに「編集者っていらないですもんね?」という引用RT。

うるしは「ちゃんと知って読者の人にも伝えたいんです」と、花山さんたちに編集部見学ツアーをお願いします。企画会議から校了まで、参考書ができるまでを教わったところで、奥の席から「声優さんがダブルブッキング?」という悲鳴が――。

前回の記事はこちら → 【ガクサン 13冊目】編集者っていらなくないですか?①。福山は「断る」、そして編集部見学ツアーへ――参考書ができるまでと「赤シート」の恐怖

「収録も編集者の仕事なんだよ」

「編集部ってアニメも作ってるんですか…?」と目を回すうるし。山崎さんは笑って、

「でもね 収録も編集者の仕事なんだよ」

英語の参考書についている音声CD。その収録台本を作り、スタジオやナレーターさんを手配するのも編集者です。共通テストの英語はリーディング100点・リスニング100点の1:1。今は長文の参考書にも音声をつけるのがふつうになり、赤城さんいわく「年々ボリュームが増えてるんですよねぇ…」。

「もめた人が行った部署の…」

スタジオの連絡先を聞きに来た男性の編集者が、うるしを見て言います。「あ Twitterか」「もめた人が行った部署の…」

赤城さんがすかさず「福山さんはああですけど うるしさんは関係ないですから」とフォロー。そして、新人だったころに見た福山の話をしてくれます。

福山は高校学参の担当なのに、ほかの部署のゲラ(校正刷り)まで読んで口を出していました。小中の先輩に向かって、

「著者の先生はこういう章立てに納得されてるんですかね?」

「こういう形だと説明はしやすくても読者にとっては不利益でしかない」。先輩の答えは「もう校了済みなんです…」。

「真剣なのはわかりますけど トラブルメーカーでしたから」

うるしは、谷津さんの「いろいろあったからな」を思い出します。あれはこのことだったのか……。

編集者の「最前線」

「うるしちゃん 編集者の『最前線』見たくない?」と山崎さん。のぞいた会議室には、頭を抱える2人と重い沈黙。「…これが…最前線…?」

川口さんと、川口さんが担当する参考書のライターさんの打ち合わせでした。ライターさんは学校の先生で、副業として名前を出さずに書いているそうです。赤城さんいわく、「○○編集部 編」となっている参考書には、こういうライターさんが多くかかわっているとのこと。

編集者は著者をスカウトしている

「そういう人って どういうきっかけでお仕事をすることになるんですか…?」といううるしの質問に、山崎さんは「いい質問!」。

「実は編集者は日常的に著者を探してるんだよ」

教育関連の学会や、学校の授業研究会に顔を出して、新しい教え方のアイデアがありそうな先生をスカウトする。原稿の持ちこみ、有名な塾の先生、紹介など、きっかけはほかにもいろいろ。

花山さんは、現場に行くと企画のアイデアも見つかると言います。「どんな読者に何が必要なのかわかってるのは やっぱり現場の先生陣だからね」

そのとき会議室では、川口さんが「…そうだ それならこうしません?」。文章の順番を入れかえる提案に、ライターさんの顔がぱっと明るくなります。「…いいじゃないですか!!」

編集者は「ハブ」

山崎さんは、引用RTの話に戻ります。

「著者がいればコンテンツは生まれるけど」「全体を俯瞰して必要な読者に上手く届けるのは また別の仕事」

著者、読者、教育現場、書店の売り場。そのすべてをつなぐ「ハブになる存在」が編集者だ、と。何をしたらいいかわからなくても、参考書の棚に行けば糸口が見つかる。それが成り立つのは編集者の力があってこそ。

そして話は福山へ。初めて会う先生や書店員さんに「ああ福山君のとこの人ね」と言われるそうで、赤城さんも「それ私も言われたことあります!」。花山さんは「やっぱり 愛のある編集者だったからかな…」。

「私だって愛なら負けません!」「俺も!!」「私はその倍!!」と、なぜか愛の張り合いに(川口さん「騒がしいですね…すみません」)。

「参考書は、編集者の愛のかたまりなんです。」

見学ツアーはおしまい。「SNSでも上手く伝えられたら…」といううるしに、山崎さんは「あれは放置がベストかな…」「わかってくれる人がわかってくれたらそれで…」。

ご相談係に戻ったうるしは考えます。全部、愛ゆえ。福山さんのああいう態度も、愛があるからなんだろう。でも、それを「…わかってもらえないのは…」「…すごくやだな~…」

「…言い返すつもりはないけど」――うるしはキーボードをタンッ!!

「編集なんていらないかも?と言う人もいますが、とんでもない…!! 参考書は、編集者の愛のかたまりなんです。」

ご相談係のTwitterに、うるしの投稿が流れていきます。15冊目へ続きます。

【ガクサン流・英語の音声を使い倒す】参考書の「音声」は編集者がつくっている

14冊目で、英語の参考書の音声は編集者がスタジオやナレーターさんを手配して作っていることがわかりました。せっかく手間をかけて作られた音声。使わないのはもったいない! 作中の説明と研究をもとに、使い方を整理します。

共通テストはリスニングが半分

作中の「1:1」のとおり、大学入学共通テストの英語はリーディング100点・リスニング100点です。リスニングは「おまけ」ではなく、配点の半分。ただし、大学によってはリーディング3:リスニング1のように比率を換算して使うこともあるので、志望校の募集要項は必ず確かめましょう。

参考:大学入試センター「大学入学共通テスト」実施要項。各大学の募集要項にある換算方法も確認のこと。

1. まず、スクリプトを見ずに聞く

最初は英文を見ずに聞きます。聞く前に設問やタイトルから「どんな話か」を予測しておくのがコツ。

予測する→聞く→確かめる→もう一度聞く→ふりかえる、という「聞き方の手順」を授業で教えたグループは、教えなかったグループよりリスニングの成績が伸び、とくに苦手な学習者ほど伸びたという研究があります。(Vandergrift & Tafaghodtari, 2010)

2. 聞き取れなかった所を、スクリプトで確かめる

次に英文(スクリプト)を見て、どこが聞き取れなかったかに印をつけます。

  • 知らない単語だった
  • 知っている単語なのに、音がつながって聞こえなかった
  • 速くて意味を取るのが追いつかなかった

「なぜ聞き取れなかったか」を分けておくと、次にやることがはっきりします。

3. 音読とシャドーイング

スクリプトを見ながら音声に合わせて読み(オーバーラッピング)、慣れたら英文を見ずに、聞こえた音のすぐ後を追いかけて声に出します(シャドーイング)。

シャドーイングは、とくにリスニングが苦手な段階の学習者に効果が出やすく、単語を音として聞き分ける力を伸ばすと報告されています。(Hamada, 2016)

4. もう一度、スクリプトなしで聞く

最後にもう一度、英文を見ずに聞きます。最初より聞き取れる所が増えていれば成功。1つの音声を何回も「使い倒す」ほうが、新しい音声を次々に聞き流すより力がつきます。

ぱっと見まとめ:英語の音声の使い方

番号名前やること
1予測して聞く設問やタイトルから内容を予測し、英文を見ずに聞く
2確かめるスクリプトで聞き取れなかった所に印をつけ、理由を分ける
3声に出す英文を見て音読→慣れたらシャドーイング
4もう一度聞く英文を見ずに聞き直し、聞き取れる所が増えたか確かめる

英語の参考書の音声チェックリスト(14冊目から)

  • [ ] 持っている参考書に音声(CD・QRコード・アプリ)がついているか確かめた
  • [ ] 聞く前に、内容を予測している
  • [ ] 聞き取れなかった理由(単語・音のつながり・速さ)を分けている
  • [ ] 音読やシャドーイングで、自分でも声に出している
  • [ ] 同じ音声を、聞き取れるまでくり返し使っている
  • [ ] 志望校の共通テスト英語の換算比率を確かめた

参考文献

  • Vandergrift, L., & Tafaghodtari, M. H. (2010). Teaching L2 learners how to listen does make a difference: An empirical study. Language Learning, 60(2), 470–497.
  • Hamada, Y. (2016). Shadowing: Who benefits and how? Uncovering a booming EFL teaching technique for listening comprehension. Language Teaching Research, 20(1), 35–52.

【おまけ】「○○編集部 編」の参考書と、著者のスカウト

14冊目では、参考書の「著者」の見つけ方も描かれていました。

  • 学会や授業研究会で、新しい教え方をしている先生をスカウト
  • 原稿の持ちこみ
  • 有名な塾の先生
  • 他社での実績がある人、知り合いの先生からの紹介

そして「○○編集部 編」の参考書には、名前を出さないライターさん(作中では現役の学校の先生)がかかわっていることが多いそうです。著者名がない本も、だれかが教室で生徒を見ながら書いている。そう思うと、本棚の見え方が少し変わりますね。

ガクサン 14冊目 感想・考察

【今回の一番】「参考書は、編集者の愛のかたまりなんです。」

14冊目の一番は、ラストのうるしの投稿です。

山崎さんは「放置がベスト」と言いました。13冊目で福山も「好きに言わせておけ」。大人の対応としては、たぶんそれが正解です。

でもうるしは、「わかってもらえないのは…すごくやだな~…」と思ってしまう。そして書いたのは、相手を言い負かす言葉ではなく、自分が今日見てきたものでした。

「参考書は、編集者の愛のかたまりなんです。」

13冊目でうるしは「みなさんのこといらないなんて思えないからこそ ちゃんと知って読者の人にも伝えたいんです」と言いました。知って、そして伝えた。前後編できれいに約束を果たしたうるしに、おじさんは拍手を送りたいです。

福山は「トラブルメーカー」だった

ついに、福山が編集部でもめた理由の一端が見えました。

担当外の本のゲラを読み、「著者の先生はこういう章立てに納得されてるんですかね?」。しかも、もう校了したあと。13冊目で「校了」が本づくりの最後の関門だと学んだばかりなので、この一言がどれだけ相手を困らせたかがよくわかります。

でも、福山の言っていること自体は「読者にとっては不利益でしかない」。中身はたぶん正しいんです。

赤城さんの「自分が真剣だから人にも求めちゃうんでしょうねぇ~」は、福山という人をとてもよく言い当てています。2冊目の「好きになるほどいいことばかりじゃない」は、福山自身のことだったのかもしれません。

ただ、谷津さんの「自業自得だ」、山崎さんの「賛否両論」が、このゲラの一件だけで説明できるとも思えません。異動の「いろいろ」には、まだ続きがあるとおじさんはにらんでいます。

13冊目の「俺にもうまくやれない原因があるんだろう」と重ねると

13冊目で福山は「この社内では谷津さんの反応がスタンダードだ」「俺にもうまくやれない原因があるんだろう」と言っていました。

うるしは「自分が嫌われてる理由ちゃんとわかってない!?」と思っていましたが、14冊目を読むと、福山は理由をわかっていて、それでも曲げられなかったのではないでしょうか。だから「俺は編集には関わらないほうがいい」。編集が嫌いなのではなく、自分が関わると誰かを困らせると思っている。そう読むと、あの「断る」がちょっと切なく聞こえます。

編集者は「ハブ」、そして福山は「ハブ力が高い」

山崎さんの「ハブになる存在がいるし それが編集者に求められる資質だと思う」は、13冊目の引用RTへの、作品からの答えですね。

おもしろいのは、社内ではトラブルメーカーの福山が、社外では「ああ福山君のとこの人ね」と言われるほど顔が広いこと。10冊目で「書店や先生には好かれている」とあったのは、こういうことでした。

花山さんの「面倒な人だけど 情熱のある人には好かれるから」。13冊目で福山がうるしに言った「君はいい人に好かれるからな」と、ちょうど対になっています。福山もまた、「いい人」に好かれる人なんです。

川口さんの「…そうだ それならこうしません?」

地味ですが、おじさんが好きなのは川口さんの場面です。

10冊目で「定番ラインナップに割りこめてる本は全然作れてない」とボソボソ語っていた川口さん。行き詰まった打ち合わせで、文章の順番を入れかえる提案をして、ライターさんに「いいじゃないですか!!」と言わせました。最後にぐっと拳を握るところも、いいですね。

派手さはなくても、著者のとなりで一緒に悩むのが編集者。前回の「校正」や「赤セル」が机の上の仕事なら、こちらは「人と人の間」の仕事です。

「福山 書店→直」の行動予定表

細かいところですが、ご相談係の行動予定表に「福山 書店→直」、その下にうるしの字で「福山さん 書かないでどこか行かないで下さい! 茅野」。

5冊目で福山がいなくなったとき、7冊目の「週1」、11冊目の喫茶トルツメ。福山はふらっと消えるのが得意です(笑)。でも、行き先が「書店」というのが「ハブ力」の正体なのかもしれません。足で稼ぐ人なんですね。

まとめ

  • 英語の参考書の音声収録も編集者の仕事。共通テスト英語はリーディングとリスニングが1:1
  • 「もめた人が行った部署の…」。福山は担当外・校了後のゲラにも口を出す「トラブルメーカー」だった
  • 「○○編集部 編」の本には名前を出さないライターさん(学校の先生など)がかかわっている
  • 編集者は学会や研究会で著者をスカウトし、現場の先生から企画のヒントをもらう
  • 山崎「全体を俯瞰して必要な読者に上手く届けるのは また別の仕事」=編集者は「ハブ」
  • 福山は社外では顔が広い。花山「愛のある編集者だったからかな…」
  • うるしの投稿「参考書は、編集者の愛のかたまりなんです。」

「放置がベスト」と言われたのに投稿してしまったうるし。15冊目のタイトルは「うるしとバズの功名」。この投稿、どうやら大きく広がりそうです。そして、それを読む福山の反応は……?15冊目が楽しみです。

続きが待ちきれない方は、漫画でひと足先にどうぞ。

漫画『ガクサン』(佐原実波/講談社)全巻

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